苦境ライブハウスに支援の輪広がる 新型コロナウイルス

苦境ライブハウスに支援の輪広がる 新型コロナウイルス
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、各地のライブハウスでは、経営難から閉店に追い込まれる店も出ています。こうした中、休業中の店のドリンクチケットを前払いで購入する新たな取り組みが始まるなど、支援の輪が広がっています。
「密閉・密集・密接」の「3密」にあたるとして営業の自粛や休業要請を受けている各地のライブハウスは、中小規模の個人経営の店も多く、札幌市のライブハウスが今月いっぱいでの閉店を決めるなど、経営危機に直面する店も出ています。

こうした中、休業中の店のドリンクチケットをインターネット上で前払いで購入することで店を支援する「SAVE THE LIVEHOUSE」という新たなプロジェクトが今月8日に立ち上がりました。

専用サイト上で応援したい店舗を選び、1枚当たり600円の電子チケットを購入することで、営業再開後に店でドリンクの提供を受けることができます。店側には、8%の手数料を引いた支援額が毎週振り込まれる仕組みで、開始から1週間余りで、すでに総額500万円以上の支援が集まっています。

対象となる店舗は店側からの申請によって登録され、現在は、クラブや音楽バーなどを含む全国の90店舗が登録されているということです。

プロジェクトの発起人代表を務める小田翔武さんは「イベントができない中、1週間や1か月でも耐えることができればと思って立ち上げました。余力のある人の手で支援し、少しでも多くの困っている店にこの取り組みが届いてほしいです」と話しています。

ライブエンタメ市場の損失 1750億円に

政府による自粛の要請が始まったことし2月下旬以降、各地のライブハウスでは公演の延期や中止が続いていて、感染の拡大によって影響が深刻化しています。

「ぴあ総研」の調査によりますと、公演の延期や中止で、音楽コンサートや演劇、ミュージカルなどのライブエンタメ市場が受けた損失額は、先月23日の時点で、入場料の総額で1750億円に上ります。

自粛や休業要請が来月末まで続いた場合、その額は倍近くに膨らんで3300億円に上ると推計されていて、これは年間の市場規模の37%にあたるということです。

ぴあ総研は、こうした業界は個人を含む小規模事業者がほとんどを占め、業界団体などにも属さない事業者が多いため経済活動の継続性が失われやすい特殊な状況にあると指摘しています。

クラウドファンディングの動き相次ぐ

存続の危機を迎えるライブハウスでは、営業継続のためにインターネット上で資金を募るクラウドファンディングを立ち上げる動きが相次いでいます。

その1つ、東京 八王子市にある「papaBeat」は、15年間、個人経営で営業を続けてきました。主にアコースティックのライブが行われ、大学生のグループやプロを目指すアーティストなどが演奏活動を重ねていましたが、感染が広がった2月下旬以降はライブの中止が相次ぎ、今月から臨時休業しています。

中止になったライブの出演者にはキャンセル料を求めない方針で、現在は収入がゼロになった一方で、家賃や維持費などによって、毎月120万円以上の支出が生じているということです。

このため、現時点で休業期間としている来月上旬までの損失分にあたる150万円の支援をクラウドファンディングで呼びかけたところ、常連客の助けなどによって希望額を上回る援助が寄せられたということです。

オーナーの高野正樹さんは、支援に感謝しつつも今後も自粛が長期化すれば、経営が立ちゆかなくなると危機感を強めています。

高野さんは「僕たちの仕事は、今メジャーで活躍する人たちのスタート地点です。こういう場所がなくなれば、音楽文化もなくなってしまうと思います。ネガティブになれば、すぐにも店を閉めようと考えてしまいそうですが、続けてほしいと言ってくれる人のために、石にかじりついてでも続けていきたいです」と話しています。