新型コロナウイルス 病床ひっ迫は9都府県に NHK調査

新型コロナウイルス 病床ひっ迫は9都府県に NHK調査
新型コロナウイルスに対応する医療態勢について、NHKが全国の都道府県に聞いたところ、入院患者の数が、準備している病床数の8割を超えているところが9つの都府県に上り、ひっ迫した状況になっていることがわかりました。この中には、緊急事態宣言が出されている地域以外の5府県も含まれていて、専門家は受け入れができる医療機関を各地で増やすなど、態勢整備を急ぐべきだと指摘しています。
NHKでは全国の放送局を通じて13日、新型コロナウイルスに対応する病床や入院患者数などについて、都道府県などに取材しました。

それによりますと、新型コロナウイルスの患者が入院するために確保している病床の数は、全国合わせて9600床余りで、現在の入院患者は少なくとも、およそ5000人に上りました。

確保できていると公表している病床数に対し、入院患者数が8割を超えているのは9つの都府県で、東京都と大阪府、兵庫県、福岡県の緊急事態宣言が出されている地域のほか、山梨県と滋賀県、京都府、高知県、沖縄県でも8割を超え、各地で病床の確保が課題になっていることがわかりました。

また、重症患者の治療を優先するため、軽症の患者には宿泊施設や自宅などで療養してもらう対応を、すでにとっているのは8つの都府県でした。

そして、宿泊施設や自宅で療養や待機をしている人は、病床が確保できていない人たちも含めて、16の都府県で合わせて少なくとも900人を超えていました。

このうち、緊急事態宣言が出されている埼玉県、千葉県、神奈川県では、自宅などで療養や待機をしている人が、それぞれ100人を超えています。

さらに、医療態勢について懸念されることを聞いたところ、医療用マスクなど感染を防ぐための物資の確保や、宿泊施設に軽症者を移すための医療スタッフなどの不足、それに、大病院に患者が集中することや院内感染などを挙げています。

国立国際医療研究センターで、患者の治療にあたっている忽那賢志医師は「これまで患者を受け入れていない病院も、一丸となって治療に当たらないと回らなくなってしまう。患者が少ない地域でも、今のうちに病床を確保しないと追いつかなくなる」と述べ、各地で対応できる病床を増やすなど、重症化する人を救う態勢の整備を急ぐ必要があると指摘しています。

ベッド数拡大もすぐに満床

新型コロナウイルスの感染者が急増している東京都では、医療機関が病床数を増やしてもすぐに満床となってしまう状況が続いています。

東京・武蔵野市の武蔵野赤十字病院は感染症の指定医療機関で、1月下旬から新型コロナウイルスに感染した患者を受け入れてきました。当初は感染症病棟の20床で対応していましたが、今月に入って東京都から病床数を倍に増やしてほしいという依頼がありました。

このため、別の病気の入院患者およそ30人あまりに転院してもらうなどして、およそ20床を新たに確保しました。それでも新たな感染者が次々に運び込まれすでに満床となっています。

入院しているのは10代から80代までの患者で症状も軽症から重症までさまざまです。

病院では院内感染を防ぐため、先月、看護師が作業するナースステーションと感染者が行き来する廊下や部屋の間に急きょ壁を設けて、遮断しました。

さらに、感染のリスクに応じて病棟内を3段階に区分けしました。

職員の体制も強化し、患者の受け入れについて自治体と調整を行ったり、PCR検査の検体を採取したりする専用の職員を5人配置しました。

病院では一般の診療も行っていますが、ほとんどの診療科から医師や看護師が応援に入り、病院全体で新型コロナウイルスへの対応にあたっています。

感染症の専門外の職員に対しては、専門知識のある看護師が防護服やマスクの適切な着脱の手順などについて指導し、安全管理を徹底して対応にあたっているということです。
武蔵野赤十字病院の泉並木院長は「ベッドがすぐ満床になってしまうので非常に厳しい対応を迫られている。とにかく院内感染を絶対起こさないよう、感染者とそうでない人が接触しないよう神経を使っている。ふだんの診療とは全く違う大きな負担がある」と話していました。

マスクや防護服など医療資材の不足も

武蔵野赤十字病院では感染者の専用病床がすぐに満杯になるため、今後は重症と中等症の患者に限って受け入れることにしています。

しかし、中等症以上の患者はいつ容体が急変するか分からず常に緊張状態を強いられるほか、治療を行う際には感染予防を徹底するため通常の倍以上の人手が必要になります。

また防護服の着脱などで4倍ほどの手間がかかり医療スタッフに大きな負担が掛かっているといいます。さらに重症患者が増えると職員の数が足りなくなるおそれもあり、これ以上の受け入れは厳しいと感じています。

また、この病院ではほとんどの診療科から医師や看護師を動員して感染した患者の対応にあたっているため、それ以外の一般の診療で、急な手術以外は延期するなどの影響が出ているといいます。

さらに深刻なのはマスクや防護服などの感染対策に欠かせない資材の不足です。

病院では感染した患者の対応にあたる時以外は、手作りのマスクや、クリアファイルで作った顔を覆うシールドを使うなどして資材を節約しながらしのいでいます。

しかし今後さらに感染が拡大し患者が増えれば確実に医療崩壊につながると危機感を抱いています。

武蔵野赤十字病院の泉並木院長は「すでに一般の手術は3割ほど減らしてコロナの対応にあたっている。また、医療物資の不足は深刻で特に防護服は1回使用したら捨てなければならないが、本当に手に入らなくなってきているので量産してもらわないと、院内感染を防ぐことも難しくなってしまう」と現状を説明しています。

そのうえで「患者が増え続ければ医療崩壊が起きてしまうので重症者を減らしていく対策が急務だ。長期戦も覚悟していて、医師や看護師を疲弊させないようにしなければならない」と話していました。