日銀 全地域の景気判断引き下げ リーマンショック以来11年ぶり

日銀 全地域の景気判断引き下げ リーマンショック以来11年ぶり
日銀は9日、全国を9つの地域にわけて景気の現状をまとめた「地域経済報告」を公表し、すべての地域で景気判断を引き下げました。全地域の引き下げは、リーマンショック直後の2009年1月以来で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が全国に広がっていることが浮き彫りとなっています。
日銀は9日、3か月に1度の支店長会議を開いて全国各地の景気の現状を点検しました。

そして、全国を9つの地域にわけて景気の現状をまとめた「地域経済報告」を公表し、新型コロナウイルスの感染拡大で、企業の生産活動や個人消費に深刻な影響が及んでいるとして、すべての地域の景気判断を引き下げました。

全地域の景気判断を引き下げるのは、リーマンショック直後の2009年1月以来、およそ11年ぶりです。

前回、3か月前の報告では、いずれの地域も「緩やかに拡大」や「回復している」といった判断でしたが、今回の報告では、北海道と東海を「下押し圧力の強い状態にある」としたほか、緊急事態宣言の対象地域を含む関東甲信越や近畿、九州・沖縄、それに東北、中国を「弱い動き」としました。

また、北陸と四国は「弱めの動き」として、全地域で厳しい判断を示しました。

日銀は先月、新型コロナウイルスの影響を受ける企業の資金繰りを支えるため、金融機関に融資を促す新たな資金供給策を導入しました。

黒田総裁は9日の会議で、今後も必要があれば、ちゅうちょなく追加の金融緩和に踏み切る姿勢を強調しました。

北海道「下押し圧力強い」

今回の地域経済報告で北海道の景気判断は、前回の「緩やかに拡大している」から「新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響により、下押し圧力の強い状態にある」に変わりました。

現地のデパートは「外国人観光客の減少で3月の免税売り上げは前年比9割減だった」と報告しました。

また宿泊施設からは「北海道の『緊急事態宣言』以降、宿泊は前年の4分の1、宴会予約はほぼキャンセルになった」という声が寄せられました。

また水産加工メーカーからは「各地で北海道物産展の中止が相次いで、商品の在庫が積みあがっている。生産水準の引き下げがさけられない」と報告しました。

東北「このところ弱い動き」

今回の地域経済報告で、東北の景気判断は前回の「弱めの動きが広がっているものの、緩やかな回復を続けている」から、「新型コロナウイルス感染症の影響などから、このところ弱い動きとなっている」に変わりました。

宮城県のデパートからは「2月下旬以降、新型コロナウイルスの影響で売り上げが大幅に減少している」といった声があがりました。

福島県の観光施設からは「県内外問わず、客の出控えがみられる」といった声が寄せられました。

秋田県の自動車関連のメーカーからは「中国工場の稼働率が回復しなければ、生産水準がさらに大きく低下する可能性がある」といった声があがりました。

青森県のバス会社からは「貸し切りバスの予約キャンセルが相次いで資金繰り計画に影響が出たため、今年度は一切の設備投資を見送る」といった声もありました。

北陸「弱めの動き」

今回の地域経済報告で北陸の景気判断は前回の「引き続き拡大基調にある」から「弱めの動きとなっている」に変わりました。

現地の小売店からは「地域で感染者が出たことし2月後半以降、客の数が大きく落ち込み、東日本大震災直後の落ち込みを超えている」という声があがりました。

宿泊施設からは「客室の稼働率が前の年の同じ時期の半分以下となる40%程度まで低下している」という厳しい声もあがりました。

一方で電子部品の関連会社からは「取引先の工場の稼働率は感染拡大の影響で低下しているものの、今後の挽回生産を見込んで高水準の生産を維持している」という意見もありました。

関東甲信越「弱い動き」

緊急事態宣言の対象地域が含まれる「関東甲信越」の景気判断は前回の「基調としては緩やかに拡大している」から「弱い動きとなっている」に下方修正されました。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で個人消費は弱い動きとしたほか、生産については「減少している」とほかの地域より厳しい判断をしています。

飲食店からは「職場の懇親会や家族客の外食が落ち込み、年度替わりのかき入れどきに売り上げが5割減っている店もある」という声があがりました。

小売店は「東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まり、8Kなど高価格帯のテレビの販売が期待していたほど伸びていない」という声を寄せました。

また、自動車関連の企業からは「中国から部品を調達するのが難しい状況は解消したが、アメリカを中心に販売が大幅に下振れ、今月以降も工場の稼働を半減させるなど減産を続ける予定だ」という声があがりました。

機械関連の企業からは「企業の設備投資の意欲が一段と冷え込み回復時期が遅れることを懸念している」という不安の声が聞かれました。

東海「下押し圧力の強い状態」

今回の地域経済報告で、東海の景気判断は前回の「緩やかに拡大している」から「新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、下押し圧力の強い状態にある」に変わりました。

現地の自動車関連のメーカーからは「国内外の自動車販売減少に対応するため、生産調整を実施することにした」という声が寄せられました。

また、生産用機械メーカーからは「中国だけでなくヨーロッパでも営業活動がストップしたことで海外受注が落ち込んだ」と報告しました。

一方、別の自動車関連メーカーからは「新型車の投入効果により、生産が増加している。新規受注が減少しているが、当面は高水準の操業を続ける」といった声もありました。

近畿「弱い動き」

今回の地域経済報告で、近畿の景気判断は、前回の「一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている」から「新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、弱い動きとなっている」に変わりました。

現地企業の主な声としては、京都府の宿泊施設が「外国人観光客に加え、足元では国内客も大幅に落ち込んでいて、地域の観光産業への影響はリーマンショックよりも大きい」と報告しました。

大阪府の飲食業からは、「外出や宴会を自粛する動きがみられていることから売り上げが大幅に減少している」という声が寄せられました。

また、京都府の電子部品メーカーからは「新型コロナウイルスの影響が中国から欧米にも広がる中、スマートフォンや家電などの需要が減少しないか懸念している」といった報告もありました。

中国「このところ弱い動き」

今回の地域経済報告で、中国の景気判断は前回の「いくぶんペースを鈍化させつつも、基調としては緩やかに拡大している」から「新型コロナウイルス感染症などの影響から、このところ弱い動きとなっている」に変わりました。

島根県の宿泊施設からは「外国人観光客の減少に加え国内客の自粛の動きが広がっていて、予約のキャンセルが相次いでいる」といった声があがりました。

山口県の観光施設から「臨時休館を余儀なくされ、状況によってはさらに休館期間を延長する可能性もあり、経営への影響は甚大だ」といった声も寄せられ、観光業への影響が大きくなっています。

広島県と岡山県の自動車関連のメーカーからは先行きの不透明感が強まる中、「設備投資を抑えなければいけない」といった声が相次ぎました。

四国「このところ弱めの動き」

今回の地域経済報告で、四国の景気判断は、前回の「一部に弱めの動きがみられるものの、回復している」から「新型コロナウイルス感染症の影響から、このところ弱めの動きとなっている」に変わりました。

現地企業の主な声としては、高知県の旅行会社が「外出自粛で国内旅行が大幅に減少している。春の大型連休期間中を含む今後の予約は例年の20%程度にとどまっていて、上期の売り上げは過去最低となる見込みだ」と報告しました。

愛媛県の家電販売業からは「例年は新生活需要が増加する時期になるが、来店客数が減少している」といった声が上がりました。

また、香川県の生産用機械メーカーは「現時点で受注や生産に影響はみられないものの、供給先の生産が滞り受注が下振れすることを懸念している」と報告しました。

九州・沖縄「このところ弱い動き」

今回の地域経済報告で、九州・沖縄の景気判断は、前回の「緩やかに拡大している」から「新型コロナウイルス感染症などの影響から、個人消費や輸出・生産を中心にこのところ弱い動きとなっている」に変わりました。

現地企業の主な声としては、福岡県のデパートが「3月の外国人観光客数は前年比で90%減っているほか、外出自粛の影響で国内客も20%減少している」と報告しました。

大分県の宿泊施設からは「国内外を問わず新規の宿泊予約がほぼ入らない状態が続いている。4年前の熊本地震以上の影響が出ていて、資金繰りが厳しくなっている」という声が寄せられました。

また、長崎県の電子部品メーカーは「中国経済の減速から、生産が減少していて、期間従業員を削減した」と報告しました。

菅官房長官「感染拡大抑止が最優先」

菅官房長官は、午後の記者会見で「日銀の景気判断は承知しているが、まずは国内の感染拡大を抑えるのが最優先だ。その中で、状況を何とかしのいでもらい、その後の経済のV字回復につなげていくために、108兆円規模の経済対策を決定したということだ」と述べました。