米大統領選 民主党候補者選び 新型コロナ感染拡大の中で混乱

米大統領選 民主党候補者選び 新型コロナ感染拡大の中で混乱
アメリカ大統領選挙に向けた野党・民主党の候補者選びで、7日に予備選挙を予定している中西部ウィスコンシン州では知事が新型コロナウイルスの感染拡大を理由に延期を命じましたが、裁判所はこれを認めず、投票が翌日に迫る中混乱が続いています。
11月のアメリカ大統領選挙でトランプ大統領に対抗する民主党の候補者選びは全米50州のうち、すでに27州で行われ、ABCテレビによりますと獲得した代議員の数はバイデン前副大統領が1208人、サンダース上院議員が897人で、バイデン氏が党の指名獲得に近づいています。

しかし新型コロナウイルスの感染拡大で残りの州は投票を延期したり、郵送による投票だけにしたりして、候補者選びは先月中旬から中断し、民主党は大統領候補を指名する党大会も8月に延期しました。

こうした中、7日に予備選挙を予定している中西部ウィスコンシン州のエバーズ知事は6日、「新型コロナウイルスの感染を抑えるためだ」として、投票の延期を命じました。

ウィスコンシン州では外出を禁じる命令が出され、投票の実施に批判が強まっていたほか、各地で投票所のスタッフが不足し、投票を実施できないという報告が相次いでいたということです。

これに対して州議会で多数派を占める共和党は州の最高裁判所に投票を延期させないよう申し立て、AP通信などによりますと、裁判所は投票の延期を認めなかったということです。

このため州知事が追加の措置を取らなければ、予定どおり予備選挙が行われる見通しで、投票を翌日に控え混乱が続いています。

バイデン前副大統領とサンダース上院議員の戦いぶり

アメリカ大統領選挙に向けて野党・民主党では、バイデン前副大統領と左派のサンダース上院議員が指名争いを続けていますが、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、大きな影響を受けています。

先月、候補者選びで勝利を重ね、指名獲得に近づいたバイデン氏は、支持者の集会が開けないため、自宅に専用のスタジオを設け、インターネットで演説を配信したり、医療関係者と対談したりして存在感を示そうとしています。

また、バイデン氏はトランプ大統領の感染対策への対応は遅く、指導力に欠けるなどと批判したうえで、雇用対策など10の項目に及ぶ政策案を示し、危機に対応するには経験豊かな指導者が必要だと訴えています。

先月には3000万ドル、日本円で32億5000万円を超える選挙資金を集め、早くも副大統領候補の人選を進めるとともに、公立大学の授業料免除など左派の政策も一部受け入れる姿勢を示し、本選挙を見据え党内の結束を図っています。

バイデン氏は2日、インターネットの会見で新型コロナウイルスの感染拡大について「これは緊急事態だ。政府は国民の健康を守るため何でもすべきだ」と訴え、6日にはトランプ大統領と電話で意見を交わすなど、支持拡大に向けた活動を行っています。

しかし、感染対策をめぐって、連日、会見を行うトランプ大統領に比べて、バイデン氏の発信力は限定的だとの指摘も出ています。

一方、左派のサンダース上院議員もインターネットでの活動を余儀なくされ、活動の原動力となってきた熱狂的な若者による戸別訪問や、支持者の集会を行えずにいます。

さらに、獲得代議員の数でバイデン氏に引き離される中、メディアなどからは、本選挙に向けた党内の結束のため指名争いから撤退すべきだとの論調が強くなっています。

しかし、サンダース氏は先月31日、メディアのインタビューで「勝利が厳しいのは認めるが、逆転の道はまだある」と述べて指名争いを続ける考えを明らかにしました。

その理由としてサンダース氏が強調するのが、みずからを支持する強力な「草の根の運動」で2月に集めた選挙資金はおよそ4700万ドル、日本円で50億円余りと、バイデン氏を大きく上回りました。

また、新型コロナウイルスの感染拡大で医療体制への不安が強まっていることから、一部の世論調査では、サンダース氏の看板政策である国民皆保険への支持が上昇しています。

このため、サンダース氏としては選挙戦を続けて、格差の是正を訴えるみずからの政策への理解を党内で広めるねらいもあるとみられます。