家庭内暴力や児童虐待の増加 懸念の声 外出自粛や在宅勤務で

家庭内暴力や児童虐待の増加 懸念の声 外出自粛や在宅勤務で
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため外出の自粛や在宅勤務が呼びかけられる中、家庭でのストレスによるDV=ドメスティックバイオレンスや児童虐待の増加を懸念する声が上がっています。被害者の支援団体は、DVの加害者である夫が自宅にいるようになり、支援が途絶えてしまうケースも出ていると訴えています。
DV被害者の支援を行うNPO法人「全国女性シェルターネット」は先月30日、国に対し、DV被害の相談窓口を閉めないことや、被害者の一時保護を柔軟に行える体制を整えることなどを要望しました。

団体によりますと、国からは、各都道府県に対し取るべき対応をまとめた通知を今月3日付けで送ったという回答がありました。

通知には、生活不安やストレスによってDVなどの被害が深刻化する可能性を踏まえ、
▽相談の受け付けから保護に至るまでの支援を継続的に行うことや、
▽被害者がシェルターなどに直接保護を求めた場合は速やかに一時保護を行えるようにすること、などが盛り込まれているということです。

団体によりますと、全国の被害者支援の相談窓口には、
▽在宅勤務と子どもの休校のため夫のストレスがたまり、家族に身体的な暴力を振るうようになったとか、
▽DVから逃れるため家を出ようと準備していた母親と子どもが自宅にいるようになった夫から監視されるようになり、避難するのが難しくなった、といった相談が寄せられるようになっているということです。

また支援者からは、
▽相談センターでの面談が休止になり電話相談のみになっている影響で、夫のいる自宅から電話をかけにくくなったとみられるDV被害者からの連絡が途絶えたとか、
▽予定されていた面談などに相談者が訪れずキャンセルになる、といった支援が途切れてしまうケースが出始めているということです。

全国女性シェルターネットの北仲千里共同代表は「感染拡大を防ぐために電話相談が中心になるなど、支援の方法が制約されるうえ、外出自粛の呼びかけや在宅勤務の広がりなども影響し、被害者に支援が届きにくい状況になっている。SNSも活用して被害者が相談しやすい窓口を設置するなど、新たな対応を模索している。支援を続けるので我慢せずにホットラインなどに相談してほしい」と話しています。

国連事務総長「世界中で家庭内暴力急増 早急に対策を」

国連のグテーレス事務総長は5日夜、緊急の声明を出し、「ここ数週間、経済的社会的な圧力が強まるにつれて、女性に対する家庭内暴力が世界中で恐ろしいほど急増している」と述べて、感染拡大の防止対策で各国で外出制限や自宅待機の措置が取られる中、女性への家庭内暴力、DV=ドメスティック・バイオレンスが急増していると警告しました。

さらに、相談件数が倍増した国があるほか、支援団体が資金不足に陥ったり、女性がDVから逃れるための緊急の受け入れ先が閉鎖されたりするケースも出ているとして、強い懸念を示しています。

国連によりますと、相談件数はアメリカやオーストラリアで大幅に増え、インドやフランス、南アフリカでは外出制限の措置以降、DVの事例が急増したとしています。

グテーレス事務総長は「すべての国の政府に対し、新型コロナウイルスの感染対策を実行する際に女性に対する暴力の防止に重点的に取り組むよう求める」として、各国に早急に対策を取るよう求めています。