新型コロナウイルス 遺児奨学金にも深刻な影響

新型コロナウイルス 遺児奨学金にも深刻な影響
新型コロナウイルスの影響で、親を亡くした子どもらに奨学金を交付している「あしなが学生募金」では、街頭での募金活動が一切できなくなっています。

経済情勢の悪化で、支援を必要とする子どもは増えることが懸念され、募金活動に携わる大学生たちは遺児としてのみずからの経験や思いをSNSに投稿し、寄付を呼びかけています。
「あしなが学生募金」は50年余りにわたって親が病気や災害などで亡くなったり、重い障害で働けなくなったりした高校生や大学生などに集めた募金や寄付で奨学金を交付しています。

毎年、春と秋の大規模な街頭募金などによっておよそ40億円を集め、昨年度は6000人を超える子どもたちに奨学金を交付しましたが、新型コロナウイルスの影響で、3月から街頭での呼びかけを自粛し、4月に予定していた全国300か所での募金活動もすべて中止となりました。

この影響で募金や寄付が十分に集まらないおそれが出てきているということです。

また親を亡くした家庭からは「店の客が減ってしまい、家賃はなんとか払ったものの、生活が苦しい」とか、「仕事のキャンセルが相次いで収入が半分以下になった。子どもが大学に行けるかどうか、大変な状況だ」といった声も寄せられるようになったといいます。

あしなが育英会の玉井義臣会長は「わたしたちの支援先は母子家庭がほとんどです。母子家庭でよい仕事に恵まれるというのはめったにありません。収入が少ない家庭で、さらに収入が少なくなるというのは、極めて厳しく、『夢をなくしてしまうような状態だ』という訴えも寄せられています。私自身は55年間、遺児の支援活動を続けていますが、こんなにひどい状態は初めてです」と話しました。

こうした中、街頭募金に参加する予定だった卒業生や大学生たちが、先月から遺児としてのみずからの経験や思いをSNSに投稿し、寄付を呼びかける活動を始めました。

このうち、この春に大学を卒業した埼玉県の女性は、学費のことを考え進学を諦めかけた経験を振り返り、「働くことが悪いとは思わない。だが、学ぶからこそ見えてくるものもあると信じている。どうか、自分の可能性をみずら潰さないでほしい。そんな子どもたちが少しでも減りますように私は願っている」とつづり、奨学金の必要性を訴えました。
活動の中心メンバーの大学3年生の高原彩さんは、「自分たちの生活よりも、自分たちの次の世代の子どもたちが進学の機会を失ってしまうのではないかと、みんな危惧しています。街頭活動の再開がいつになるかわかりませんが、今できる形で精いっぱい、支援を呼びかけたい」と話していました。

寄付は銀行口座への振り込みなどで受け付けていて、詳しい方法は「あしなが育英会」などのホームページに掲載されています。