新型コロナの検査対象拡大 空港では順番待ちで機内待機も

新型コロナの検査対象拡大 空港では順番待ちで機内待機も
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府が水際対策をさらに強化し、世界の73の国と地域から帰国した人などについてウイルス検査の対象としたため、成田空港の検疫所は急きょ帰国者に航空機内で待機してもらい、順番に検体の採取などを行う対応を開始しました。
政府は、3日午前0時以降、世界のすべての国と地域から入国する人に対して2週間、自宅などに待機するよう要請し、73の国と地域から帰国した人などについては、症状の有無にかかわらず全員をウイルス検査の対象としました。

成田空港検疫所は、これを受けて検査数が大幅に増えることが見込まれるとして急きょ、航空会社と協議し、帰国してきた人たちに機内で待機してもらう対応を3日から始めました。検疫官の誘導で順番に検疫所を訪れた人たちは説明を聞いたあとで検体の採取を受け、結果が出るまでの間は、近くの宿泊施設などで過ごすということです。

この対応について航空会社の関係者は「現在は運休や減便が相次ぎ、日本の航空会社の場合、機材に余裕がある状況なので、機内で待機してもらっても運航への影響は少ないと判断した」と話しています。

成田空港検疫所は「検査対象者が多いため待ってもらうことになり、ご迷惑をおかけしています。引き続き、列を作らないよう感染予防を徹底して対応していきたい」と話していました。

空港での検疫 不安を訴える声も

これまでに行われた空港の検疫では、検査や聞き取りなどに伴う待機が長時間に及ぶケースが出て、不安を訴える声が相次いでいました。このうち成田空港では、海外から到着した人たちが検査などを受けるため、長い列を作って待機を余儀なくされるケースがあり、ツイッターには、「ここが一番感染するんじゃないかと怖かった」などという書き込みがありました。

これを基にNHKが取材したところ、帰国した人から電話で直接話を聞くことができました。先月末にヨーロッパから帰国したという東京都の20代の女性は「滞在先の国の空港や航空機では人が少なく、間隔をあけて行動するようはっきりした指示もあったのであまり心配しませんでした。しかし、成田空港に到着すると、係員からの詳しい指示や説明がなかったため、なぜ待たされているか分からなかったうえ、後ろの人が距離をつめて結果的に密集することになっていました」と当時の様子を振り返りました。

女性は、ウイルス検査の結果が陰性で、現在は要請に応じて自宅での待機を続けているということで「陰性でほっとしましたが、空港の検疫で長時間待っている間に感染するおそれもあったのではないかと思います。自宅待機中、必要な買い物などのためには外出してもいいと聞いていますが、明文化して示されなかったので不安もあります」と話していました。

また、アメリカから帰国し、14日間の自宅待機の期間中だという大阪府の30代の男性は「現地での状況が悪化し、子どもが感染しては困ると急きょ、帰国しました。ただ、検疫では詳しいアナウンスがないまま3時間ほど待たされ、子連れでも配慮はありませんでした。必要な項目を書き上げたあとでも、まだ書いている途中の人の順番を待つような状態で、周囲の人たちもストレスがたまっているようでした」と話していました。

厚労省「検査対象の試算はしていない」

ウイルス検査の対象となる国と地域が大幅に拡大されたことに伴って、どれぐらいの人が検査対象になるのかについて厚生労働省は、「試算はしていない」としています。ただ、検査対象が増えることも想定されることから、すべての国際線が運休になっている国内各地の空港の検疫官を羽田空港や成田空港に集めるなど検疫態勢の強化を図っています。

また検査結果が出るまでには1日から2日ほどかかり、それを待つための空港内のスペースや宿泊施設の確保も課題になっています。厚生労働省は「実際にどれぐらいの人が入国・帰国してくるのかを見ながら対応を検討したい」としています。