新型コロナ拡大 日本に暮らす外国人への情報提供が課題に

新型コロナ拡大 日本に暮らす外国人への情報提供が課題に
日本で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、日本で暮らす外国人の中には「言葉の壁」から情報に取り残されている人たちがいます。
日本に在留する293万人余りの外国人に新型コロナウイルスに関する予防対策や治療などの情報をどう提供すればよいのか課題となっています。

新型コロナウイルスの感染が拡大するにつれ、日本では予防方法や症状、行政の対策など様々な情報が伝えられていますが、その多くは日本語です。こうした中、日本で暮らす外国人のうち日本語が十分に理解できない人たちの間では情報格差による不安が広がっています。

タイ語やタガログ語など6つの言語で診察を受けることができる神奈川県大和市の「小林国際クリニック」には、先月に入ってから感染を心配する外国人の問い合わせや診察が相次いでいます。

クリニックを受診した61歳のタイ人女性は「のどが痛くて、新型コロナウイルスに感染しているのではないかと不安で、3回も来ています」と話していました。

娘と一緒に訪れた53歳のフィリピン人の女性は「体がだるかったので来ました。子どももいるし、新型コロナウイルスは危険なので、心配です」と話していました。

また58歳のフィリピン人男性は「このクリニックは医師やスタッフが英語を話せるので来ています。日本語がわからないので、医師に診てもらうときには、コミュニケーションが難しいです」と話していました。

このクリニックでタガログ語の通訳をしている石間リサさんのもとには、診察の時間外でも電話などで新型コロナウイルス関連の相談が寄せられているということです。

石間さんは「新型コロナウイルスへの感染を疑って保健所に電話しようとしても、『日本語が難しい』とか『どんな話をすればいいのか』と相談してくる人もいます。みなさん日本語で普通に会話はできますが、病気のことや病院で使う専門用語はすごく難しいです」と話していました。

クリニックの小林米幸院長は「日本人でもウイルスの検査を受けるまでのしくみを理解するのが難しいのに、外国人にこうした情報はほとんど行き渡っていない」と情報格差への対策を求めています。

厚労省の電話相談窓口は外国語に対応せず

厚生労働省はことし1月から電話相談窓口を設けていますが、外国語では対応しておらず、災害時などに外国人観光客の相談に対応する観光庁の電話窓口にはことし1月22日から3月31日までに新型コロナウイルスに関連するおよそ6400件の相談が寄せられています。

一方、情報格差から不安を抱え込む外国人も増えていて、英語による心理カウンセリングを電話で行う都内のNPO、tellではこれまで1日20件程度だった相談件数が2月に入ると1日100件以上に急増し、そのほとんどが新型コロナウイルスに関する相談でした。

内容は、行政が発表する方針や対応など英語による情報量は日本語と比べて圧倒的に少ないとか、マスクの効果など日本と海外で情報が異なることがあり、どちらを信じてよいかわからなくなるといったもので、多くの外国人が落ち込んだ様子で相談を寄せているということです。

NPOの担当者、ビッキー・スコージさんは「現在バラバラに発信されている行政情報などが集約されて外国人に行き渡れば情報格差を不安に感じている人たちを助けることにつながる」と話しています。