新年度予算が成立 一般会計総額で過去最大の102兆円余

新年度予算が成立 一般会計総額で過去最大の102兆円余
一般会計の総額が過去最大の102兆円余りとなる新年度予算は、参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で可決・成立しました。
新年度予算案は、27日、参議院予算委員会で締めくくりの質疑のあと採決が行われ、自民・公明両党の賛成多数で可決され、参議院本会議に緊急上程されました。

本会議では討論が行われ、自民党の福岡資麿氏は「新型コロナウイルスの感染に伴うさまざまな影響に対処するための前提となる予算で、1日も早く成立させたうえで、さらなる措置を検討していかなければならない」と述べました。

一方、立憲民主党の長浜博行氏は「予算には、新型コロナウイルス対策の経費が1円も計上されていない。苦境を訴える国民の声に耳を貸さず、無為無策に終始する予算には賛成できない」と述べました。

そして採決が行われた結果、新年度予算は自民・公明両党などの賛成多数で可決・成立しました。

新年度予算は、高等教育の無償化や去年策定した経済対策の費用などが盛り込まれていて、一般会計の総額が、102兆6580億円と過去最大になりました。

政府は、新型コロナウイルスの感染拡大で経済に深刻な影響が出ていることから、追加の経済対策をまとめ、新年度の補正予算案を編成することにしています。

主な歳出は

主な歳出を項目別に見ますと、医療や年金などの「社会保障費」は、今年度より1兆7300億円余り増えて過去最大の35兆8608億円となりました。

高齢化による伸びに加え、新年度から始まる、低所得世帯を対象にした高等教育の無償化の費用が上積みされました。

「防衛費」は、宇宙空間を監視する「宇宙作戦隊」や「サイバー防護隊」を設ける費用などを盛り込み過去最大の5兆3133億円、「文化、教育、科学技術関連予算」は、今年度より800億円余り少ない5兆5055億円となりました。

新年度の打ち上げを目指す、日本の新しい主力ロケット「H3ロケット」の開発費用などが計上されました。

防災・減災と国土強じん化に向けたインフラ強化などを盛り込んだ経済対策には、1兆7788億円が盛り込まれています。

このほか、地方自治体に配分する「地方交付税」は15兆8093億円、過去に発行した国債の償還や利払いに充てる「国債費」は23兆3515億円となりました。

一方、「歳入」は、税収が消費税率引き上げによる増収を反映して過去最高の63兆5130億円を見込んでいます。国の新たな借金にあたる国債の新規発行額は32兆5562億円と当初予算としては10年連続で減りました。

ただ、減少額は1000億円程度にとどまり、歳入の31.7%を国債に頼る厳しい財政状況が続きます。

経済対策などに1.7兆円超

新年度予算には、去年12月に決定した一連の災害からの復旧・復興、それに消費の活性化策などを柱とした経済対策を実行するための費用として1兆7788億円が計上されています。

このうち、消費税率の引き上げに合わせたキャッシュレス決済のポイント還元制度では、ことし6月までの期間中の追加の経費として2703億円が充てられました。また、マイナンバーカードを活用した消費活性化策には2478億円が計上されました。

これはマイナンバーカードを持っている人を対象に、1人当たり最大2万円までのキャッシュレスでの決済や入金に対して5000円分のポイントを付けるもので、ことし9月から来年3月まで実施される予定です。

このほか、一定の所得に満たない人が住宅を購入する場合に現金を給付する「すまい給付金」は、1145億円が計上されました。消費税率の引き上げによる住宅販売の落ち込みを防ぐため、去年10月から給付額の上限が30万円から50万円に引き上げられていて、新年度も引き続き、補助が受けられます。

さらに、防災・減災に向けた「国土強じん化」の予算として1兆1432億円が充てられました。洪水のおそれがある河川の堤防のかさ上げやため池の決壊を防ぐ工事のほか洪水や土砂災害のハザードマップの作成が遅れている自治体を支援するための費用などが盛り込まれました。

教育分野

来月から始まる所得の低い世帯を対象にした高等教育の無償化を実施するための費用として4882億円が新たに盛り込まれました。

大学や専門学校などの授業料・入学金の減免のほか、返済の必要がない給付型の奨学金を支給するために活用されます。

また、年収が約590万円未満の世帯を対象に、来月から私立高校の授業料を実質、無償化するための費用などとして4248億円が計上されました。

さらに、通学路で子どもが被害にあう事故が相次いでいることから、歩道の拡幅や防護柵の設置、それに車のスピードを抑えるために道路に段差を設けるなどの安全対策を行う費用として30億円が盛り込まれました。

子育て支援など

去年10月に始まった、幼児教育と保育の無償化を年間を通じて実施するための費用として、3410億円が盛り込まれました。

待機児童の解消に向けて、保育の受け皿を拡大するため、保育所の整備や保育士の処遇の改善などに358億円が計上されました。

また、仕事に就かずに自宅に引きこもっている人を支援するため、自立相談支援機関の窓口に専門の職員を配置し、個別に自宅を訪問して相談に乗ったり、就労を手助けしたりするための費用として32億円が充てられました。

医療分野

来年3月からマイナンバーカードを健康保険証の代わりに使用できるようにするため、医療機関にカードの読み取り機やシステムを整備する費用として、768億円が計上されました。

麻生副総理・財務相「着実に実行していかなければならない」

麻生副総理兼財務大臣は新年度予算が成立したことを受けて記者会見し「消費税の増収分を活用して社会保障を充実させるとともに総合経済対策を盛り込んだ予算であり、着実に実行していかなければならない」と述べました。

そのうえで麻生副総理は一般会計の総額が2年連続で100兆円を超え歳出の膨張が続いていることについて「社会保障制度の再構築と同時に少子化対策をやらねばならず、社会保障制度の充実にあてた分が財政再建としてはマイナスにはなったが、長期的には正しかったと思う」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「補正予算 迅速対応を」

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「新年度予算の成立で5000億円の予備費を4月から新型コロナウイルスの対策に使えるようになった。政府には有効かつ迅速に活用してもらいたい」と述べました。そのうえで追加の経済対策について「当然、予備費だけでは十分でないので、政府には直ちに経済対策などに取り組んでもらいたい。補正予算案が提出されれば迅速な対応を野党にも呼びかけていきたい」と述べました。

公明 山口代表「迅速な取組を」

公明党の山口代表は、記者団に対し「新型コロナウイルスへの対応が問われており、新年度の滑り出しから、緊急の対応ができる予備費を含め、備えができたことは、予算成立の意義の1つだ。しかし、もっと大胆で迅速な取り組みが期待されており、補正予算案の編成も視野にしっかりと対応したい」と述べました。

そのうえで、追加の経済対策について「仕事がなくなったり、収入が激減したりして生活に困っている人が大勢おり、公明党としては、1人当たり10万円を目安に給付すべきだと主張する。感染拡大を収束させたうえで、経済の勢いを回復させなければならず、景気浮揚策も含めた2段構えの検討が必要だ」と述べました。

立民 福山幹事長「現金給付と損失補填を」

立憲民主党の福山幹事長は、記者団に対し「新型コロナウイルスの問題で、事業の継続が危ぶまれる企業や雇用への不安を抱える個人が多い中で、過去最高の税収見積もりを前提にした予算になっており脳天気だ」と述べました。

そのうえで、追加の経済対策について「社会保険料の減免や光熱費の肩代わりなど、個人にも事業者にも借金をさせないための政策を優先すべきで、現金給付と損失補填(ほてん)を組み合わせてもらいたい。『お肉券』や『お魚券』の発行といった考えられない議論があるが、野党として、現場の声に即した要請をしていきたい」と述べました。

国民 玉木代表「一人10万円現金給付を」

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「新型コロナウイルスに関係する予算が1円も入っておらず、国民が抱える窮状や不安に応える予算になっていないので反対した」と述べました。

そのうえで、追加の経済対策について「速やかに補正予算案の編成に入ることを求めたい。『真水』・財政支出で30兆円規模の対策が必要だ。いま困っている人や企業を助けるため、一人当たり10万円を所得制限をかけることなく現金で給付すべきだ」と述べました。

維新 片山共同代表「浮沈かけ大胆な中身に」

日本維新の会の片山共同代表は記者会見で「国会議員や国家公務員の身を切る改革や行財政改革が足りず、補正予算も含めると借金への依存は事実上、減っていない。中身は良いところもあるがトータルでは賛成できない」と述べました。

そのうえで、追加の経済対策について「日本の浮沈がかかっており、規模も中身も思い切ったものにして状況を変えてもらいたい。税金や社会保険料を納められなくなった人に一定の基準で現金を給付し、安心させるべきだ」と述べました。

共産 小池書記局長「まず緊急の対応を」

共産党の小池書記局長は、記者団に対し「新年度予算には新型コロナウイルスの対策費用が1円も含まれておらず、国民に自粛を求めておきながら休業補償がないのは無責任だ」と述べました。

そのうえで、追加の経済対策について、「緊急的な対応と、感染拡大が収束したあとの対策を分けて考えるべきだ。まずは自粛によって収入を絶たれた人たちへの損失補填(ほてん)が必要だ。その後、所得を増やす手段として現金給付などもあるが、いちばん効果的なのは消費税の減税だ」と述べました。