新型コロナ特措法基づく対策本部設置へ「緊急事態宣言」可能に

新型コロナ特措法基づく対策本部設置へ「緊急事態宣言」可能に
新型コロナウイルスの感染者が東京都内で急増していることなどを踏まえ、政府は26日午後、先に成立した特別措置法に基づく「政府対策本部」を設置し、きょう夕方初会合を開くことにしています。
安倍総理大臣は、26日正午すぎ、総理大臣官邸で、加藤厚生労働大臣、西村経済再生担当大臣と会談し、新型コロナウイルスの感染者が東京都内で急増していることなどを踏まえ、国内の感染状況は、「まん延のおそれが高い」と報告を受けました。

これを受けて安倍総理大臣は、感染者の爆発的な増加など不測の事態に備えるため、先に成立した特別措置法に基づく「政府対策本部」を設置する方針を決めました。

そして、政府は26日午後、持ち回りの閣議で、「政府対策本部」を設置しました。政府は26日夕方、総理大臣官邸で初めての会合を開く予定で、安倍総理大臣が、特別措置法を担当する西村大臣に対し、「基本的対処方針」の策定を指示する見通しです。

対策本部の設置で、全国的かつ急速なまん延によって国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれなどが生じた場合は、総理大臣が「緊急事態宣言」を行うことが可能になります。

ただ政府は、専門家の意見を聴くとともに、都道府県の知事などとも事前に調整しながら慎重に判断する方針です。

「対策本部」設置でどうなる?

「政府対策本部」は、今月成立した新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づくものです。

総理大臣が「緊急事態宣言」を出すための準備にあたる手続きの1つで、厚生労働大臣が「まん延のおそれが高い」と認めた場合に総理大臣に報告し、閣議で設置が決定されます。

「政府対策本部」が設置されると、各都道府県にも同じく「対策本部」が設置されることになります。

政府は当初、今週末に設置する方向で調整を進めていましたが、東京都内で感染者が急速に増えていることを受けて、急きょ、26日設置することになりました。

対策本部では、新型コロナウイルスに対する政府の全般的な方針などを盛り込んだ「基本的対処方針」の策定を決定することになっていて、決定にあたっては、緊急の場合を除き、あらかじめ専門家からなる諮問委員会に諮ることが定められています。

「緊急事態宣言」を行うには、国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある場合と、全国的かつ急速なまん延により、国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合の2つの要件を満たすことが必要で、政府は、専門家の意見を聴くとともに、都道府県の知事などとも事前に調整しながら慎重に判断する方針です。

「基本的対処方針」とは

「基本的対処方針」は、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づいて「政府対策本部」が策定し、ウイルスの発生状況や、政府の全般的な方針、それに対策の実施に関する重要事項を盛り込むことになっています。

政府は、先月、感染拡大に備えた「対策の基本方針」を決定していますが、「基本的対処方針」は、これを基にしたうえで、現在の国内の感染状況や、今月19日に示された専門家会議の提言の内容も踏まえて、拡大防止策や医療の提供体制の強化などが盛り込まれる見通しです。

「基本的対処方針」の策定にあたっては、緊急の場合を除き、あらかじめ専門家からなる諮問委員会に諮ることが定められているほか、策定後には直ちにに公示して広く周知することが求められています。

「緊急事態宣言」とは

「緊急事態宣言」を行う際は、国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある場合と、全国的かつ急速なまん延によって国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合の、2つの要件をいずれも満たす必要があると定められています。さらに、感染症の専門家で作る「諮問委員会」に意見を聞くなどの手続きも必要です。

そして、「緊急事態宣言」を行う場合、総理大臣は、緊急的な措置を取る期間や区域を指定し、宣言を出します。

これを受けて、対象地域の都道府県知事は、住民に対し、生活の維持に必要な場合を除いて、外出の自粛をはじめ、感染の防止に必要な協力を要請できるようになります。

また、学校の休校や、百貨店や映画館など多くの人が集まる施設の使用制限などの要請や指示を行えるほか、特に必要がある場合は、臨時の医療施設を整備するために、土地や建物を所有者の同意を得ずに使用できるようになります。

さらに緊急の場合、運送事業者に対し、医薬品や医療機器の配送の要請や指示ができるほか、必要な場合は、医薬品などの収用を行えます。

「緊急事態宣言」が出された際には、行政機関に強い権限が与えられることを踏まえ、政府は専門家の意見に加え、都道府県知事とも事前に調整をしながら慎重に判断する方針です。

加藤厚労相「感染まん延のおそれが高いと報告」

会談のあと、加藤厚生労働大臣は記者団に対し「安倍総理大臣には現在の新型コロナウイルスの感染状況について、国内では都市部を中心に増加していること、どこから感染したかが追えない件数も増えていること世界全体で相当の増加をしていること、海外から帰国した人で感染が確認された人が増えていることなどを報告した」と説明しました。

そのうえで「こうした状況を踏まえ、専門家会議の意見もたまわり、特別措置法に基づき、『感染まん延のおそれが高い』と報告した」と述べました。

西村経済再生相「連携して感染拡大の防止に全力」

特別措置法を担当する西村経済再生担当大臣は、「安倍総理大臣からは、政府対策本部の設置を速やかに進めるよう指示があった。しっかりと受け止めて、速やかに設置を進めたい」と述べました。

また、西村大臣は対策本部の設置後、安倍総理大臣が緊急事態宣言を行うかどうかについて「今の時点で考えていない。政府対策本部が立ち上がれば、各都道府県にも対策本部が立ち上がることになるので、しっかり連携して感染拡大の防止に全力をあげていきたい」と述べました。