東京五輪・パラ延期 どうなる代表選考?

東京五輪・パラ延期 どうなる代表選考?
1年程度の延期が決まった東京オリンピック・パラリンピックの代表選考について、NHKが国内の競技団体に取材したところ、競泳や卓球など、少なくとも8つの競技がすでに代表に内定している選手を変更しない方針を明らかにしました。今後の代表選考は多くの競技が決まっていないとしていますが、野球や車いすラグビーなど11の団体競技は選考時期を変更する方針です。
東京オリンピック・パラリンピックの日本代表の選手選考をめぐっては、24日までに、オリンピックではおよそ600人と見込まれる選手のうち104人が内定し、パラリンピックは46人が内定しています。

NHKはオリンピックの33競技、パラリンピックの22競技の国内の競技団体に内定選手の取り扱いと今後の代表選考について取材しました。
その結果、すでに代表に内定している選手を変更しない方針を明らかにしたのは、オリンピックは内定選手がいる14競技のうち、競泳、マラソン、卓球、空手、ボクシング、カヌーの少なくとも7競技、パラリンピックは9競技のうちカヌーの1競技でした。

このうち競泳は瀬戸大也選手1人が、マラソンは大迫傑選手など6人が代表に内定しています。卓球は、伊藤美誠選手や張本智和選手など男女6人が、空手は喜友名諒選手や清水希容選手など男女8人がそれぞれ代表に内定しています。また、パラカヌーは瀬立モニカ選手が内定しています。

代表内定の取り消しを表明した競技はありませんでしたが、代表選手の選考時期を変更する方針を示した競技が出ています。

具体的にはオリンピックが野球・ソフトボール、サッカー、7人制ラグビー、バスケットボールなど7競技、パラリンピックが車いすラグビー、車いすバスケットボールなど4競技の合わせて11の団体競技です。

また、現時点では決まっていない、または国際競技団体の判断を待って決めるという競技が、マラソンを除く陸上、柔道、テニス、スポーツクライミング、パラ陸上、パラ競泳、ボッチャなど多数を占めました。

陸上は?

東京オリンピックの陸上で、日本ではこれまでにマラソンと競歩の男女合わせて12人が代表に内定しています。
マラソンは去年9月のMGCで男女2人ずつが、その後の国内の選考レースで残りの男女1人ずつが内定し、今月、6人が出そろいました。
競歩では男女の20キロで2人ずつ、男子50キロで2人の合わせて6人が内定しています。
内定した選手の扱いについては、国際競技団体が今後示す新たな選考システムでどのような参加資格になるかが関わってくるため、日本陸上競技連盟は「未定だ」としています。
ただ、尾縣貢専務理事は取材に対し「内定選手は維持したいと考えている。多くの人がそう思っているし、内定できなかった選手も納得してくれると思う。段階を踏んで決めていきたい」と話しています。
また日本陸上競技連盟の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、東京オリンピックのマラソン代表に内定した選手6人の扱いについて、代表選考を改めて行わない考えを示しました。
瀬古リーダーは、代表に内定した選手たちが3年前から行われてきたレースで出場権を得てMGCに参加したことなどを踏まえ「3年かけて選手たちが勝ち取った権利なので、それを急に取り上げることはできない。自信を持って選んだ6人だ」と強い口調で話しました。
そのうえで内定の扱いについて「日本陸連の理事会で決まるものだが、われわれ、強化委員会としては選手たちの権利を守るということを提案していきたい」と述べ、ことし6月の理事会での議論が前提だとしながらも、代表選考を改めて行わない考えを示しました。
瀬古リーダーは日本がボイコットし、みずからが出場できなかった1980年のモスクワオリンピックの経験を踏まえ、「ボイコットするのかしないのか、わからない中で練習に身が入らず集中できなかった思いがある。選手たちもおそらくきのうまではそういう思いで練習をしていたと思うが、延期と決まった以上はそこに向かってしっかりやってくれると思っている」と期待感を示しました。

一方、まだ内定選手がいないトラックとフィールドの種目では、ことし6月の日本選手権の結果で多くの選手が代表に内定する予定でしたが、来年のオリンピックの開催時期によっては、選考会を1年延ばして来年の日本選手権に変更する可能性も出てきます。

卓球は?

日本卓球協会は東京オリンピックの日本代表について伊藤美誠選手や張本智和選手などすでに代表に内定している6人を変更しない方針です。
卓球の東京オリンピックの日本代表は、去年1年間の国際大会で獲得したポイントに基づくことし1月の世界ランキングなどで、女子は伊藤選手と石川佳純選手、それに平野美宇選手、男子は張本選手と丹羽孝希選手、それに水谷隼選手の男女それぞれ3人の選手が代表に内定しました。
東京オリンピックは1年程度延期されることが決まりましたが、日本卓球協会によりますと、日本代表の選考を改めて行うことはせず、6人をそのまま内定選手とする方針を固め、今月28日に開かれる理事会で報告する予定だということです。

柔道は?

東京オリンピックの柔道で、日本は男女合わせて14階級すべてで1人ずつ出場できることになっていて、このうち13階級はすでに代表内定選手が決まっています。
丸山城志郎選手と阿部一二三選手が激しく争い、唯一内定選手が決まっていない男子66キロ級については、来月4日からの全日本選抜体重別選手権で最終的な選考が行われることになっています。
全日本柔道連盟の中里壮也専務理事は「条件付きではあるが、大会は実施し、優劣はつける」と話し、現段階では、男子66キロ級についてこの大会を東京オリンピックの代表選考会として実施する考えを示しました。
そのうえで、すでに決まっている13階級の扱いも含めて代表選考基準を見直すのかどうか、来月中旬に行う予定の常務理事会で議論し、その後の理事会で決定する方針を示しました。
中里専務理事は「延期されたオリンピックの期日が確定せず、国際大会の再開のめどもわからない中でいつまでに方針を決めるとは言えないが、不安定な状態で選手を待たせるのはつらいのでなるべく早く決めたい」と話しています。

フェンシングは?

日本フェンシング協会の太田雄貴会長は、佐賀市で取材に応じ、今後の代表選考について、「まずIOCから基本方針を出していただきたい。それを受けて国際連盟が選手選考の枠組みを作り、日本フェンシング協会として既存のものと照らし合わせながら採用するところは採用し、変更する必要があるところは丁寧に対応していく」と話しました。

レスリングは?

1年程度の延期が決まった東京オリンピックのレスリングの代表選考について、日本レスリング協会が代表に内定している8人の選手について現時点では変更しない方針を確認したことがわかりました。

レスリングでは東京オリンピックで行われる18の階級のうち、男子3階級、女子5階級の合わせて8階級で1人ずつ代表選手が内定しています。

東京オリンピックの1年程度の延期が決まったことを受け、日本レスリング協会は25日、役員による緊急の会合を非公開で開き、今後の代表選考の方針について協議しました。

日本レスリング協会の富山英明 広報委員長は、NHKの取材に対し「国際競技団体の方針が発表されていないのでまだ正式には決められないが、すでに内定した選手については変更しない方針を確認した」と明らかにし、現時点では、代表選考のやり直しをしない考えを示しました。

レスリング協会では今後、国際競技団体の方針を確認するとともに強化委員会で代表選考の在り方について正式に決めることにしています。

また25日の会合では、来月まですべての大会を中止する方針も決めました。

専門家「1年間同じレベル維持は難しい」

東京オリンピック・パラリンピックの延期について、スポーツ心理学が専門の大阪体育大学の菅生貴之教授は「高いパフォーマンスの練習を続けることは負荷がかかるので開催できるかどうか、わからない状況が続くより、このタイミングで延期が決まったのはよかったと思う」と一定の評価をしました。
そのうえで、1年程度の延期が選手に与える影響については「競技の水準が上がっていて1年間同じレベルを維持するのは難しく、モチベーションを保つことは厳しい。引退を考えていたけど、ことしの夏まで頑張ろうと思っていたような選手にとっては重荷であり、大きな選択を迫られる。1年延ばすのは考えているほど楽ではない」と話しました。

今後の選手への支援策について「選手が1番戸惑うのはスケジューリングだ。代表選考をやり直すのかなど早く環境を整えてあげないと選手は何をしていいかわからないと思う。次に向かうために周りの人のサポートが重要になる」と指摘していました。