五輪・パラ延期 観戦ツアーの販売 急きょ取りやめ

五輪・パラ延期 観戦ツアーの販売 急きょ取りやめ
東京オリンピック・パラリンピックの公式観戦ツアーを扱う国内の旅行会社は、大会の延期を受けて募集中だったツアーの販売を急きょ取りやめました。すでに代金を支払った人への対応については組織委員会に観戦チケットの扱いなどを確認したうえで検討するとしています。
東京オリンピック・パラリンピックの公式観戦ツアーは、大会のオフィシャルパートナーの、▽JTB、▽近畿日本ツーリストを傘下に持つ「KNTーCTホールディングス」、▽それに東武トップツアーズの3社が大会のスポンサー企業として、去年の7月から販売していました。

しかし、大会の延期が決まったことを受けて、各社は25日、募集していた観戦ツアーの販売を急きょ取りやめました。

また、すでに代金を支払った人への対応については組織委員会に観戦チケットの扱いなどを確認したうえで社内で対応を検討し、決まり次第、個別に案内したいとしています。

東京メトロ「引き続き万全の体制を」

東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まったことについて、東京メトロの山村明義社長は記者会見で「引き続き、ハードとソフトの両面で国内外からのお客様をお迎えする万全の体制を整えていきたい」と述べました。

そのうえで、大会の延期によって収入や支出にどういう影響があるのか精査する考えを示しました。

東京メトロではことし夏に予定されていた大会の期間中、列車の増便や終電時刻の繰り下げ、それに警備員を増やすなどの対応を取る予定でした。

今夏の終電繰り下げは取りやめ

東京オリンピック・パラリンピックの延期を受け、JR東日本や東京メトロなどは、ことし夏に予定していた終電の時刻を繰り下げる特別ダイヤについて、運行の取りやめを決めました。

首都圏の鉄道各社は東京オリンピックの大会期間中、競技時間に合わせて終電を遅らせる特別ダイヤでの運行を計画し、JR山手線が午前2時半ごろまでの運行となるなど終電が最大で2時間ほど遅くなる予定でした。

しかし、東京大会が延期されることになりJR東日本のほか、東京メトロなどの一部の私鉄各社ではすでにことしの夏の終電時刻の繰り下げについて、取りやめることを決めました。

バス会社の経営に影響

東京オリンピック・パラリンピックの延期で、大会関係者の移動に2000台を超える貸切バスを出す予定だったツアーバス会社の売り上げに大きな影響が出る見込みです。

東京バス協会によりますと、去年12月の時点で、全国のバス会社が貸切バスおよそ2190台と運転手およそ2620人を確保し大会期間中の選手など関係者の移動に使用する仮契約をしていました。

関係者によりますと、1台の1日あたりの契約の最低価格は大型バスで10万円ほどで、延期によって運行がキャンセルされると、バス会社の売り上げが大きく落ち込むと予想されます。

バス会社には、すでに新型コロナウイルスによる深刻な影響が出ていて、国土交通省がおよそ80社に行った調査では、今月の売り上げが去年の同じ月と比べて79%減少しています。

さらに、今回の大会の延期で、各社の経営に大きな影響が出る見込みです。
都内のバス会社の営業担当者は、「大会のバスを確保するために旅行の依頼を断ってきたことに加え、今はウイルスの影響で新たな予約が入るとは考えにくい。今から代わりの仕事を見つけるのは困難で、さらに厳しい状況だ」と話しています。

バス協会の関係者は、「バス会社はただでさえウイルスの影響でキャンセルが相次ぎ崖っぷちに追い込まれている。そうした中での大会の延期は車両の多くを提供しようとしていた会社にとっては、背中を押され崖から転げ落ちるような大きな影響になるだろう」と話していました。

一方、組織委員会は「バス会社に確保してもらったおよそ2160台は、延期した大会で必要な台数に変わりないので、すぐにキャンセルするのではなく、まずは新たな日程にずらすことができないかの確認を行いたい」と話しています。

バス会社「ダブルパンチを受けてしまった」

東京 東村山市にあるバス会社は旅行会社からの依頼で、大会期間中、所有する貸切バス9台のうち8台を、学校の生徒や企業の関係者を競技施設に送迎するために提供する予定でした。
しかし、大会の延期を受けて、25日朝から運行のキャンセルの連絡が相次いでいます。すべてキャンセルされれば、売り上げ少なくとも3500万円がなくなる見通しだということです。

この会社では、すでに新型コロナウイルスの感染拡大で2月から来月までの予約のほぼすべてにあたるおよそ550件がキャンセルとなり、売り上げはおよそ6000万円落ち込む見通しとなっていて、大会の延期が、厳しい経営に追い打ちをかけるかたちになっています。

バス会社の山本宏昭社長は、「新型コロナウイルスが世界的に感染拡大しているので大会の延期は仕方がない。ただ、バス会社としては、ウイルスの影響で仕事のほとんどがキャンセルになっていて大会の仕事に希望を抱いていただけに『ダブルパンチ』を受けてしまった。とにかく1日も早く収束してほしい」と話していました。

テレビの買い替えにも影響か

家電量販店からは、大型テレビの買い替えに影響するのではないかという声が出ています。川崎市にある家電量販店、ノジマの店舗では、東京オリンピック・パラリンピックに向けて高精細な4Kテレビなどの販売を伸ばそうと開会までの日数を数えるカウントダウンボードを売り場に設けていました。

カウントダウンの表示は25日の時点で「121日」まで進みましたが、延期が決まったことを受けて、店ではきょうボードをいったん倉庫にしまいました。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で来店客が減っているため今月の店のテレビの売り上げは前の年の同じ時期と比べて1割ほど減っているということです。

このあとの3か月はオリンピックにあわせた買い替え需要によって、売り上げが例年より2割ほど増えると期待していましたが延期によって影響がでるおそれがあるとみています。

ノジマ宮前店の田中菜々さんは「オリンピックに向けて店内も装飾していたので延期になって残念です。ただ、中止になるわけではないので、開催まで1年ほど期間が延びた間に、テレビを買い替える人が増えるよう期待しています」と話していました。

選手村で使用 寝具メーカーも困惑

東京オリンピック・パラリンピックの選手村で選手たちが使うベッドなどを手がけるメーカーは、大会の突然の延期に困惑していますが、選手村に搬入するベッドなどは当初の計画どおり生産を続けるとしています。

東京オリンピック・パラリンピックの大会スポンサーの寝具メーカー「エアウィーヴ」は選手村で選手たちが使うベッドなどの寝具を特注品として愛知県などの工場で生産しています。

ベッドのフレーム部分は再生可能な段ボールで作られているほか、マットレスは、体形に合わせて硬さが調節できる構造になっています。

このメーカーは、ことし6月までに2万セット近くの寝具を選手村に納める計画で、すでに全体の8割については生産を終えていました。メーカーは、大会の突然の延期に困惑していますが、組織委員会からは今後の対応などについてまだ連絡はないということで、選手村に搬入するベッドなどは当面、計画どおり生産を続けるとしています。

「エアウィーヴ」の高岡本州社長は「最悪の中止ではなく1年程度、延期ということでやるべきことが明確になった。マーケティング費用や人員の体制など、事業計画が当然変わってくるしこれから考えなければならないことはたくさんある。ただ、アスリートも気持ちを切り替えていると思うので私たちもアスリートに力を発揮してもらえるように切り替えていくしかない」と話しています。

警備機材メーカーも戸惑い

東京オリンピック・パラリンピックでの警備への協力を打診されてきたテロ対策機材を手がけるメーカーからも戸惑いの声があがっています。

札幌市の警備機材メーカー「トライ・ユー」は、車両を突入させるテロへの対策として、車の衝撃を吸収し、食い止める移動式のバリケードを去年、開発しました。

時速60キロで突入しても数メートルで止める性能があり、オリンピックのマラソン競技が札幌市で実施されることが決まった去年11月以降、警察から警備で使用が可能か打診を受けてきました。

メーカーでは、どのような警備規模でも対応できるようにと、大会までに機材を100台増産する計画を立て、準備を進めてきました。しかし、大会が延期になったため、増産した機材はひとまずイベント会場などで利用する考えですが、新型コロナウイルスの影響でイベントの中止も相次ぐ中、不安を抱えています。

上杉章社長は、「まさか本当に延期になるとは思っていなかったので、すごく驚いた。感染拡大の影響でイベントも中止になると在庫を抱えることになるので厳しい状況になってしまう。ただ、延期なので、1年間辛抱して、来年、使用してもらえるように改良も重ねていきたい」と話していました。

東京消防庁「来年へ着実に準備」

東京オリンピック・パラリンピックが1年程度延期されることになり、観客の熱中症対策や救急体制の強化につとめてきた東京消防庁は、今後、態勢の検討を進めるものとみられ、「来年の開催に向けて着実に準備を進めていく」とコメントしています。

東京消防庁は、これまでに特殊救助や化学災害などの部隊を一元的に運用する専門部隊「統合機動部隊」を発足させ、周囲の映像を360度映し出す大型モニターを備えた「コマンドカー」を導入するなど、テロなどに備えた態勢を強化してきました。

また、大会期間中は熱中症対策として、各地の消防団員を会場周辺に配置し、立ちくらみをするなど熱中症のおそれがある人がいないか、警戒にあたる予定でした。

さらに救急体制を強化するため、救急車については通常およそ6年が経過すると新しい車に入れ替えていましたが、今回は古い救急車およそ80台を残し使用する方針でした。

こうした計画について今後、態勢の検討を進めるものとみられ、東京消防庁は「来年の開催に向けて着実に準備を進めていく」とコメントしています。