東京オリンピック・パラリンピック延期 課題は山積

東京オリンピック・パラリンピック延期 課題は山積
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、東京オリンピック・パラリンピックが大会史上初めて1年程度延期されることになり、具体的なスケジュールの確定や施設・人材の確保といった運営面に加え、大会の主役となる選手の代表選考など競技の面でも課題は山積しています。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、IOC=国際オリンピック委員会は、24日、臨時の理事会でバッハ会長と安倍総理大臣とで合意した東京オリンピック・パラリンピックの1年程度の延期を承認しました。

これまで2020年の大会に向けて選手や関係者は開催が決まった7年前からさまざまな困難を乗り越え準備を続けてきましたが開幕までちょうど4か月となる日に行われた大きな判断を受けて改めて急ピッチの準備が進められることになります。

ただ、待ち受ける課題は山積みです。

まず運営面では、開催の大前提となる新型コロナウイルスの感染拡大の収束はもちろん、具体的なスケジュールをいち早く固めることが求められます。

また、スケジュールに密接に関わる施設や人材の確保、チケットや選手村の取り扱い、さらに延期による大会経費の増加をどこまで抑えられるのかも難しい課題です。

一方、大会の主役となる選手に関わる課題も多くあります。

すでに代表に内定している選手の扱いを含めた代表選考システムをどう取り扱うか、また、選手にとっては4年に1回のオリンピックにピークを合わせてきた強化戦略の見直しが迫られることになります。

史上初めて延期されることになった東京大会を成功に導けるか、IOCや国際パラリンピック委員会、大会組織委員会をはじめ、それぞれの競技団体、さらには選手など関わるすべての人たちにとって経験のない1年が始まります。

大会運営は

東京オリンピック・パラリンピックの開催を来年夏までに開催する場合、大会運営面ではいくつもの難しい課題があります。

主な課題は新型コロナウイルスの感染拡大の収束、スケジュール、施設や人材の確保、チケットや選手村の取り扱い、そして大会経費です。

▽新型コロナウイルスの収束
大前提となるのが新型コロナウイルスの感染拡大の収束です。

大会関係者は「年内の延期ではコロナの収束が見通せない」として、延期は妥当だとみていますが、治療法の確立などどこまで進むかは不透明です。

▽スケジュール
ウイルスの収束の見通しが立たないなか具体的なスケジュールを決めることも難しい課題です。

開催のスケジュールが決まらなければ会場や人材の確保は進まず選手も準備ができません。

来年の夏には、サッカーのヨーロッパ選手権、水泳の世界選手権、そして陸上の世界選手権など、オリンピックの人気競技の国際大会がめじろ押しで、このうち8月に行われる陸上の世界選手権は世界陸連が日程変更を検討しています。

一方、オリンピックの開催をめぐり、選手が厳しい暑さにさらされる真夏に行われることを疑問視する声が年々高まっていて、来年夏までのどの時期に開催するのかも注目されます。

▽施設や人材の確保
再スタートとなる準備では43の競技会場をはじめ、メディアの取材拠点となる「東京ビッグサイト」などの施設を再び利用できるよう確保しなおす必要があります。

さらに8万人が採用された大会ボランティアも、大学4年生が新社会人となって参加が難しくなる可能性もあり、募集をし直すのかなど再検討が必要です。

▽チケットや選手村
市民への影響もあります。

その1つがチケットの取り扱いで、オリンピックだけですでにおよそ448万枚、全国の学校や子どもたちを対象にした「学校連携観戦チケット」も含めるとおよそ508万枚が購入されています。

組織委員会はこれらの権利がある人たちに「十分配慮するやり方を考えたい」と述べている一方、スケジュールの変更で見られなくなった人に払い戻しを含めてどう対応するか検討するということです。

また、大会後はリフォームしてマンションとなる東京 晴海の選手村も一部ですでに販売が始まっていて、早ければ2023年の春に始まる入居時期に遅れが生じることも懸念されています。

▽大会経費
そして大きな問題となりそうなのが大会経費です。

先にあげた施設の再確保など、大会準備がリセットされる影響はさまざまなところで財政を圧迫します。

人件費も課題で、大会本番時に8000人にのぼる組織委員会の職員は、大会終了後のことし10月までにおよそ1100人まで削減する予定でした。

組織委員会は東京大会の経費について、組織委員会と東京都、それに政府を含めた総額を1兆3500億円としていて、これとは別枠で組織委員会が不測の事態に備えて270億円の「予備費」を計上していますが、こうした予定している支出を上回る可能性があります。

東京大会を招致する際の立候補ファイルには、「組織委員会が資金不足に陥った場合は都が補填(ほてん)し、都が補填しきれなかった場合には最終的に国が補填する」ことが明記されていますが、IOCも含めて新たな費用負担にどう対応するかが課題となります。

代表内定の選手は

大会の主役となる選手たちにとっては、すでに代表に内定している選手の扱いを含めた代表選考システムをどう取り扱うか、また選手にとっては4年に1回のオリンピックにピークを合わせてきた強化戦略の見直しが迫られるなど課題は山積しています。

NHKのまとめでは24日までに日本選手はオリンピックで104人、パラリンピックで46人が代表に内定しています。

このうちオリンピックの代表選手の総数は史上最多のおよそ600人に上る見通しでした。

今回、東京大会の1年程度の延期が確認され、すでに代表に内定した選手たちの扱いをどうするか、また早い競技では大会の数年前から示してきた選考システムをこれを機に作り直すのかなど、代表選手の選考という大会の根幹に関わる仕組みを見直すかどうかの判断が求められています。

また、選手の立場からは強化戦略の見直しも迫られます。

オリンピック・パラリンピックを目指す選手たちは、4年に1回の大会にコンディションの「ピーク」を合わせるために戦略を立てています。

大会までの日数を逆算しながら、予定されている海外や国内のどの大会に出場し実戦を経験するのか、その間、いつ、どこで合宿を行うのか、どんなトレーニングをどのように積んでいくのか、綿密な計画を立てそれを時に修正しながら大舞台に向かっています。

東京大会の延期によってこうした戦略や計画の「仕切り直し」が必要になってきます。

各国や地域の「最高の選手」たちによる「世界最高峰のスポーツイベント」であるオリンピック・パラリンピック。

史上初の大会の延期が選手の選考やパフォーマンスにどう影響を及ぼすのか、課題は山積しています。