新型コロナウイルスの感染拡大めぐり米中が非難の応酬

新型コロナウイルスの感染拡大めぐり米中が非難の応酬
アメリカと中国は新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、互いに非難を強めています。
中国外務省の趙立堅報道官は今月12日、新型コロナウイルスについて「アメリカ軍が中国に持ち込んだものかもしれない」とツイッターに投稿しました。

これに対し、アメリカのポンペイオ国務長官は16日、中国の外交を統括する楊潔※チ政治局委員と電話で会談し、中国が感染拡大の責任をアメリカに転嫁しているとして強く反発しました。

また、トランプ大統領は、この日から新型コロナウイルスを「中国のウイルス」と呼び始めました。

19日の会見では「感染拡大がもっと早くわかれば、中国の発生地の1か所で感染を封じ込められたかもしれない。中国が事態を公表しなかったため、世界はいま大きな代償を払っている」と中国を批判しました。

トランプ大統領が手元に置いていた原稿では「コロナウイルス」ということばが手書きで「中国のウイルス」と書き直されていて、発生源が中国だと強調するため「中国のウイルス」という表現を意図的に使っていることがうかがえます。

メディアは差別を助長しかねないと指摘していますが、トランプ大統領は「発生した場所の名前で呼ぶ必要がある」と正当化し、「メディアは中国の味方をしている」として意に介していません。

また、ポンペイオ国務長官もツイッターに動画を投稿し、中国共産党などが偽の情報を流しているとして警戒を呼びかけました。

トランプ政権は新型コロナウイルスについて、当初楽観的な姿勢を示していましたが、国内で感染が急速に広がり、経済や市民生活への影響が大きくなる中、いらだちを強めているものと見られます。

これに対し、中国は「ウイルスの発生源は特定されていない」という立場をとっていて、各国に医療物資を提供したり医療チームを派遣したりして“支援国”としての姿勢をアピールしています。

中国外務省の耿爽報道官は、20日の会見で「遺憾なことに、中国が稼いだ貴重な時間をアメリカは浪費した。アメリカの何人かは中国の感染防止の取り組みに汚名を着せて責任を押しつけようとしている」と強く反発し、新型コロナウイルスが中国から世界に拡散されたという批判が広がることに神経をとがらせています。

※「チ」は、竹かんむりに褫のつくり。

米中 メディアめぐる対立激化

アメリカと中国は、このところ両国のメディアをめぐっても対立を激化させています。

アメリカのトランプ政権は、先月18日、中国国営の新華社通信など中国メディア5社について、「中国政府の支配下にある」などとして、アメリカで活動する記者の個人情報などの報告を義務づけました。

すると、中国政府は、その翌日の19日、アメリカの有力紙、「ウォール・ストリート・ジャーナル」の北京駐在の記者3人の記者証を無効にすると発表。

この新聞に掲載された、アメリカの学者による新型コロナウイルスへの対応をめぐる論評が、中国を中傷するものだったことが理由とされましたが、アメリカ側の措置への報復ではないかという見方も出ていました。

こうした中、アメリカは今月に入り、中国メディア5社に対し、アメリカ国内にいる中国人記者らの数を、それまでの160人から、100人に制限すると発表しました。

これに対し、中国政府は、アメリカの有力紙「ニューヨーク・タイムズ」や「ワシントン・ポスト」など3社のアメリカ人記者について、記者証をすぐに返還させ、今後、中国での活動を認めないと通告。

中国外務省の報道官は、アメリカの理不尽な圧力への対抗措置だと正当化しました。

新型コロナウイルスへの対応をめぐって、中国政府の初動の遅れが世界的な感染の拡大を招いたなどとしてアメリカが批判を強める中、中国がこれに激しく反論するなど両国の応酬が続いていますが、それぞれの国を代表するメディアの取り扱いをめぐっても対立が激しさを増しています。