新型コロナウイルス対策 専門家会議提言 その内容は

新型コロナウイルス対策 専門家会議提言 その内容は
新型コロナウイルス対策の専門家会議がまとめた「状況分析・提言」では、現在の国内の状況を分析したうえで国民に向けた提言が盛り込まれました。

北海道 憂慮すべき状態続く

現在の状況として、北海道については先月28日に緊急事態宣言を出して週末の外出自粛などを呼びかけて以降、一定程度、新規感染者の増加を抑えられていることを示しているとしましたが、依然として流行は明確には終息に向かっておらず、憂慮すべき状態が続いているとしました。

ただ緊急事態宣言は急速な感染拡大の防止という観点からみて一定の効果があったとしました。

また北海道以外の国内の感染の状況については引き続き、持ちこたえているものの、一部の地域で感染拡大が見られるとしました。

特に感染源の分からない患者が増加している地域が散発的に発生しているとして、今後、こうした状況が増え続け、全国的に拡大すれば、爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねないとしました。

これまでの国内の対策については若干の効果があったとする見解を示しながらも海外からの流入があることなどから、引き続き動向を注視し、感染拡大のリスクが高い環境での行動を十分抑制することが重要としました。

そのうえで、今後の見通しとして、もし大多数の国民や事業者が人と人との接触をできるかぎり絶つ努力や、密閉空間、人の密集、近距離での会話や発声という3つの条件が同時に起こる場所を避ける努力を続けていかないと感染に気がつかない患者の集団、クラスターが発生し、ある日、「オーバーシュート」と呼ばれる爆発的な患者の急増が起こりかねないと指摘しました。

クラスター対策を迅速に抜本的に拡充する必要

また専門家会議の提言では、はじめにクラスターと呼ばれる患者の集団への対応の重要性を挙げ、今のクラスター対策を迅速に抜本的に拡充する必要があると指摘しました。

具体的には
▽人材の確保
▽自治体どうしの強力な連携や情報共有
▽対策に当たる保健所の人員や予算の投入などを挙げています。

また重症者を優先する医療体制に迅速に移行するための検討を進めるべきとしました。この中では強いだるさや息苦しさがある人や高齢者、それに基礎疾患がある人たちは早めに受診してもらう一方で、入院治療が必要ない軽症者については自宅療養として電話で健康状態を把握することとしました。

春休み明けの学校については、地域ごとの流行の状況を踏まえることが重要だとし、日々の学校生活で、集団感染のリスクが高くなる3つの条件が同時に重なる場を避けるなどの対策の必要性を強調しました。

そして全国規模の大規模イベントなどについては、集団感染のリスクや感染を拡大させるリスクを指摘し、屋内か屋外かや人数の規模によらず、集団感染が起きると全国的な感染拡大につながることが懸念されるとしました。こうしたリスクに対応できない場合は中止や延期が必要だとしました。

このほかにも感染者や濃厚接触者、それに治療にあたる医療従事者などに対する偏見や差別につながる行為は断じて許されないこと、高齢者や持病のある人など重症化のリスクが高い人は不特定多数の人がいる場所への訪問を避けることなどが盛り込まれました。

十分な措置がとられなければ79.9%が感染

専門家会議がまとめた「状況分析・提言」では大規模な流行が起こって十分な措置がとられなかった場合にどのような事態になるのか、北海道大学の西浦博教授の推計が盛り込まれました。

推計では人口10万人の地域を想定し、感染拡大のスピードは現在のヨーロッパと同程度と仮定しました。

その結果、流行50日目には1日の新たな感染者数は、軽症の人も含めると5414人にのぼり、最終的に人口の79.9%が感染すると考えられるということです。

また人工呼吸器などが必要な重篤な患者は、流行62日目には1096人にのぼると推計されたということで、地域の医療の限界を超えてしまうことが想定されたということです。

専門家会議では、実際にはクラスター対策などの強力な措置をとることで、地域の医療提供体制を上回らないようにするべきだと指摘しました。

北海道大学 西浦教授「『北海道モデル』が成功か」

専門家会議のあと会見を行った北海道大学の西浦博教授は北海道で先月下旬から行われた一連の対策の効果について、「北海道では緊急事態宣言が出されたあと、感染者の減少傾向が顕著になっている。まだ予断を許さない状況が続いているが、多くの方の協力によって『北海道モデル』と呼べる取り組みが成功したのではないかと考えている」と話しました。

また国内全体の状況や今後の対策の在り方については「自粛などの取り組みや多くの人たちの協力によって、希望の光が見えてきたと思っている。強力な行動の制限は感染拡大を抑えることはできるが長く続けることはできない。『日本モデル』として、長期間、持続可能な対策の在り方をなんとか見いだせないかいま必死に模索している」と話しました。

その一方で全国的な大規模イベントの開催については「仮に大規模なイベントを開催してそこで非常に大きな感染者の集団、メガクラスターが発生してしまうとこれまでの努力が水泡に帰すおそれがある」と指摘しました。

防衛医科大学校 川名教授「医療機関の役割分担が必要」

専門家会議のあと記者会見に出席した防衛医科大学校の川名明彦教授は今後、感染の拡大に備えて必要な医療体制について、「患者の数が大きく増えると軽症の患者に入院してもらう状況ではなくなってくる。重症の人は高い機能がある医療機関で治療し、軽症の人は一般の医療機関や診療所にいってもらうなど、医療機関の役割分担が必要で、その準備を進めなければならない。現時点で、対応できなくなってしまった医療機関はないという理解だが、多くの感染者が報告されている地域は、特にその懸念が高まっていると考えている」と述べました。

尾身氏「イベント開催は慎重に判断を」

記者会見に出席した専門家会議の副座長で地域医療機能推進機構の尾身茂理事長は、全国的な大規模イベントの開催は主催者がリスクを判断するよう求めたことについて、「閉鎖されていない屋外で開かれるものでも、全国から不特定多数の人が参加するイベントで集団感染が起きたら全国に波及するおそれもあるため、皆さんには慎重に判断してもらいたい。開催を決めてもイベントの準備を進める中で異変を感じれば、中止の判断もしてほしい」と話しました。

そのうえで、「イベントの開催をめぐってはさまざまな意見が出たが、専門家ごとに方法論が異なるだけで、国内でいつ大規模な感染拡大が起きてもおかしくないという危機感は、すべての委員が持っている」と話しました。