新型ウイルス 飲食業の9割近くが売り上げや来店者減と回答

新型ウイルス 飲食業の9割近くが売り上げや来店者減と回答
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、会食や宴会などの自粛が相次ぐ中、飲食業界は大きな打撃を受けています。民間の調査会社が全国の飲食関連企業130社余りに行ったアンケートでは、9割近くが先月の売り上げや来店者が減少したと回答しました。
民間の信用調査会社「東京商工リサーチ」は今月上旬、インターネットを通じて全国の飲食関連企業に緊急のアンケート調査を行い、133社から回答を得ました。

この中で、新型コロナウイルスによって企業活動にどのような影響が出ているか複数回答で尋ねたところ、88%に当たる117社が「売り上げや来店者が減少した」と回答しました。

また、「マスクや消毒薬など衛生用品が確保できない」が49%、「イベント、展示会の延期・中止」が36%、「営業日数が減少」が26%に上りました。

さらに、先月の売り上げに関する詳しい調査に応じた88社に、去年の同じ月と比べてどの程度売り上げがあったか尋ねたところ、「1割以下の減少」が34%、「1割から2割減少」が24%、「2割から3割減少」が11%、「3割を超える減少」が15%となりました。

東京商工リサーチの原田三寛情報部長は「飲食業界は海外からの観光客の減少や外出自粛の影響をもろに受けている。2月の時点でこれだけ影響が出ているので、3月以降の売り上げの減少はさらに深刻化するとみられ、倒産に追い込まれる企業が増えるだろう」と話しています。

宴会自粛で居酒屋は大打撃

東京 港区のオフィス街にある肉料理が中心の居酒屋は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、企業の歓送迎会の自粛が相次ぎ深刻な打撃を受けています。

JR田町駅に近いこの店では、企業の歓送迎会が数多く開かれる3月は年間で最も売り上げが多いかき入れ時で、ことしも20件の宴会の予約が入っていました。

ところが、全国の小中学校や高校に臨時休校を要請する方針が明らかにされたあと、すべてキャンセルされたということです。

この時期の宴会は大人数のものが多いため、キャンセルは合わせて400人分を超えます。

店の賃料だけで1か月73万円かかるのに対し、今月前半の売り上げは去年の同じ時期の1割にも満たない20万円ほどでした。

周辺の企業が感染予防のため、相次いで在宅勤務に移行したこともあって、街は人通りが少なく閑散としていて、ランチタイムの弁当の注文も半減したということです。

このため、11人いるアルバイト従業員の勤務希望も、ほとんど断らざるをえない状況です。

ふだんは平日でも午後7時ごろになると3分の2ほどの席が埋まるということですが、取材に訪れた16日は午後5時の開店から2時間で1人しか来店しませんでした。

この店を経営している西林悦理さんは「このままでは経営が成り立たず、いつまで持ちこたえられるかとても不安です。この状況があと1、2か月続いたら倒産してしまうかもしれません。アルバイトたちも稼がなければいけないですが、いつふだん通りに戻せるかわからず、申し訳ない気持ちでいっぱいです」と話していました。

工夫で客足取り戻した居酒屋

一方、感染拡大の影響で一度は減った客足を、工夫を凝らした新たな取り組みで挽回し、売り上げを伸ばしている店もあります。

東京 池袋にあるうなぎや焼き鳥がメインの居酒屋では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で3月分の予約、およそ60人分がすべてキャンセルされ経営危機に陥ったことから、今月初めから急きょ新たな飲み放題プランを始めました。
コロナにちなんだゴロ合わせで「567円」で、生ビールや酎ハイなどが1時間飲み放題になるサービスで、この取り組みを始めてから来客がふだんの1.5倍ほどに増え、収益も30%ほど増えているということです。

また、当面の運転資金の確保のため、1000円から5000円のチケットを買うと来月以降2倍以上の額の食事券として利用できるキャンペーンを始めたところ、すでに10万円分以上売れたということです。

出張で来ていた京都市の23歳の女性は「自粛が求められていることはわかっていますが、新型コロナウイルスの影響で暗いニュースばかり飛び交う中、よい取り組みだと思います」と話していました。

また、サークルの仲間10数人と来店した大学4年生の男性は「大学の卒業式も卒業間近のイベントもすべてなくなってしまったので、卒業式で集まる代わりに仲間で飲みに来ました。久しぶりに会えた人もいてこのような場所があってよかったと思います」と話していました。

店長の尾村猛さんは「安い飲み放題はお客さんから大変喜ばれていますし、落ち込んでいた売り上げもだいぶ改善してきました。宴会などの自粛が続いていますが、ずっと家に居るのではなく外食で少しでも元気になってもらいたいです」と話していました。