米民主党予備選 フロリダ州など投票始まる 新型コロナで延期も

米民主党予備選 フロリダ州など投票始まる 新型コロナで延期も
アメリカ大統領選挙で政権奪還を目指す野党・民主党の候補者選びは日本時間の17日夜、南部フロリダ州などで投票が始まりました。新型コロナウイルスの感染拡大で選挙運動の自粛や投票の延期も相次ぐ中、先行するバイデン氏がサンダース氏をさらに引き離して指名獲得に近づくのか、両者の争いは大詰めを迎えています。
秋のアメリカ大統領選挙でトランプ大統領に対抗する民主党の候補者選びは、新型コロナウイルスの感染拡大で候補者が選挙運動を自粛しているほか、投票を延期する州も相次いでいます。

17日は、予備選挙を予定している4州のうち中西部オハイオ州で州知事が投票所閉鎖を指示し延期の見通しとなっていますが、フロリダ州などでは日本時間の17日夜、投票が始まりました。

民主党ではバイデン前副大統領が今月3日のスーパーチューズデーを機に中道派の支持をまとめて左派のサンダース上院議員に連勝し、全米の支持率の平均値でも56.4%とサンダース氏の33.2%を23ポイント以上、上回っています。

また選挙戦では新型コロナウイルスへの対応も大きな争点となり、副大統領としての実績を強調するバイデン氏に対し、サンダース氏はすべての人が無料で診察を受けられるよう持論の国民皆保険の実現を訴えていますが、危機管理での信頼感ではバイデン氏に届いていないという分析もあります。

さらにサンダース氏は選挙運動の自粛で強みとしてきた草の根の運動も影響を受けた結果、挽回の機会をつかみ切れておらず、厳しい立場に追い込まれています。

投票が行われる3州では、事前の世論調査でいずれもバイデン氏が大きくリードしていて、バイデン氏がサンダース氏をさらに引き離して指名獲得に近づくのか両者の争いは大詰めを迎えています。

新型ウイルス 集会中止や投票所の閉鎖も

バイデン前副大統領とサンダース上院議員はいずれも予定していた支持者向けの集会を中止し、両者の討論会も計画を変更して無観客で実施しました。

またそれぞれの陣営ではスタッフの戸別訪問を控え、自宅から電話をかけたりSNSを活用したりする手法に重点を置いています。

こうした選挙運動の自粛は若者を中心とする草の根の活動を強みとするサンダース氏により大きな影響を与えていると分析されています。

新型コロナウイルスへの対応は争点にも浮上し、有権者の選択に影響を及ぼしています。

バイデン氏はかつてエボラ出血熱の感染防止に努めた経験と実績を強調して有権者の一定の支持を集め、危機管理でより信頼できる候補としてサンダース氏を大きく上回ったというデータもあります。

これに対しサンダース氏はすべての人が無料で診察を受けることができるようにすべきだとして改めて持論の国民皆保険の実現を訴え、一部の世論調査では国民皆保険への支持が上がったとする結果もありますが、バイデン氏を巻き返すほどの流れは作り出せていません。

この結果、サンダース氏は挽回の機会をつかみきれておらず、厳しい立場に追い込まれていてアメリカのメディアでは撤退を促す論調も目立っています。

一方、新型コロナウイルスによる影響の広がりは候補者選びの日程にも及んでいて、南部ルイジアナ州やジョージア州、ケンタッキー州が予備選挙を延期したほか、ほかの州も期日前投票や郵送での投票を呼びかけています。

17日の投票を予定していた中西部オハイオ州ではデワイン知事が公衆衛生上の危機にあるとして突然、投票所の閉鎖を指示し、混乱が広がっています。

トランプ大統領の再選戦略にも影

新型コロナウイルスの感染拡大はトランプ大統領の再選戦略にも影を落とし始めています。

トランプ大統領は再選戦略の柱に好調な経済と労働環境の維持を据えています。

これをみずからの実績として最大限、強調することで、地盤とする保守的な白人労働者層の支持を固め、さらなる支持層の拡大をはかるねらいです。

トランプ大統領はこの1年の施政方針を示す先月の一般教書演説で経済の好調ぶりを示す株価に言及し「2016年の大統領選挙の時と比べて株価は70%も上昇した」と強調しました。

しかしトランプ大統領が言及した70%の上昇率は新型コロナウイルスの影響による急落で16日の終値では10%程度に落ち込んでいます。

さらに新型コロナウイルスの感染拡大はトランプ大統領の危機管理への批判も巻き起こしています。

トランプ大統領は当初、アメリカ国内での影響は限定的だという認識を示していましたが、その後、事態は急速に悪化し、相次いで対策を発表して対応に追われました。

しかし株価の下落には歯止めがかからず、各地では学校の休校が相次ぎ、一部で買い占めも起きて日用品や食品が品薄となって、国民の間で急速に不安が強まっています。

トランプ大統領は先週、国家非常事態を宣言して危機管理への適切な対応を強調しましたが、野党・民主党の候補者は対応が後手に回り十分ではないと批判を強めています。

トランプ大統領の支持率は政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめた各種世論調査の平均値で44.5%と今のところ大きな変化は見られませんが、株価の下落が続き影響が広がれば支持離れにつながる可能性もあり、これを食い止められるかどうかがトランプ大統領の再選の行方にも影響を与えそうです。