5人以上の「クラスター」 9都道府県の計21か所で発生

5人以上の「クラスター」 9都道府県の計21か所で発生
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新型コロナウイルスの感染が拡大する中、国内各地でクラスターと呼ばれる感染者の集団が発生しています。このうち5人以上いる感染者の集団は、12日の時点で少なくとも9都道府県の合わせて21か所で発生していることがNHKのまとめでわかりました。政府の専門家会議は、密閉空間や人が密集する場所などで発生しているとして、換気や人の密度を下げるなどの対策が必要だとしています。
NHKは全国の放送局を通じて、12日の時点で、5人以上いる感染者の集団をまとめました。

その結果、少なくとも9都道府県のあわせて21か所で発生していることがわかりました。

このうち、
▽ライブハウスやライブバーが関係するのは5か所、
▽介護施設や福祉事業所が関係するのは4か所、
▽医療機関が関係するのは3か所、
▽スポーツクラブが関係するのは2か所
などとなっています。

都道府県別

北海道では、
▽札幌市にあるライブバーの従業員や客の8人と、その接触者8人の合わせて16人感染が確認されたほか、
▽2月14日と15日に、北見市で開かれた展示会の参加者11人と、その接触者3人の合わせて14人の感染が確認されています。
千葉県では、
▽市川市にあるスポーツクラブで利用者5人の感染が、
▽また同じ市川市にあるデイサービスでも、職員や利用者、その家族の合わせて6人の感染が確認されています。

東京都では、
▽1月18日に屋形船で開かれた個人タクシー組合支部の新年会に参加した人やその接触者など15人と、
▽東京 足立区に住む家族5人の感染が確認されています。
神奈川県では、
▽相模原市にある相模原中央病院で看護師や患者、その家族の7人の感染が確認され2人が死亡したほか、
▽JR相模原駅の駅員やその家族など6人、
▽相模原市にある福祉事業所の職員や利用者など8人、
▽鎌倉保健所管内の家族5人の感染も確認されています。

新潟県では、
▽新潟市中央区にある卓球教室の利用者5人と、その接触者7人の合わせて12人の感染が確認されています。
愛知県では、
▽名古屋市にあるスポーツクラブの利用者やその接触者など、39人の感染が確認されたほか、
▽同じ名古屋市にあるデイサービスの利用者やその接触者など、53人の感染が確認され、このうち6人が死亡しています。
大阪府では、
▽大阪 都島区の「大阪京橋ライブハウスArc」で開かれたコンサートの参加者やその接触者などが、他県から来た人も含めて少なくとも44人、
▽大阪 北区の「Soap opera classics-Umeda-」では、参加者やその接触者の少なくとも※63人、
▽大阪 北区の「LIVE HOUSE Rumio」では、参加者※6人、
▽大阪市 中央区の「americamura FANJ twice」では、参加者やその接触者の合わせて※7人の感染が確認されています。
(※他県から来た人の数も含めています)
大阪の4か所の感染者数には、複数のライブハウスに参加した人の数が重複して含まれています。

兵庫県では、
▽姫路市の仁恵病院で患者や看護師、その家族など合わせて10人の感染が確認されたほか、
▽伊丹市の介護施設「グリーンアルス伊丹」で、利用者や職員、その家族など合わせて12人の感染が確認され、このうち1人が死亡しています。
▽神戸市東灘区の認定こども園「聖ニコラス天使園」で、保育士や職員、その家族など7人の感染がそれぞれ確認されています。
和歌山県では、
▽湯浅町にある済生会有田病院の医師や患者、その家族など合わせて11人の感染が確認され、このうち1人が死亡しています。

政府の専門家会議は、患者の集団=クラスターが発生した場所に共通するのは、換気の悪い密閉空間、人が密集していた近距離での会話や発声が行われたという3つの条件が同時に重なった場だとしています。

そのうえで今後、さらなるクラスターが発生するリスクを低下させるために、換気や人の密度を下げること、それに近距離での会話などを避けることを挙げています。

専門家「早期発見で対応を」

国の専門家会議のメンバーで、日本感染症学会の舘田一博理事長は「クラスター対策で最も重要なのは、クラスターをできるだけ早く見つけることだ。そして、その情報を関係する機関と共有し、患者に適切な治療を行うことなどによって、感染の拡大防止につなげることができる」と指摘しています。

そのうえで、「クラスターの早期発見や、それに伴う対応には専門の知識を持つ人材が多く必要で、時間や労力もかかる。感染症の関連学会に所属する医師など、専門家のネットワークを通して、クラスターに関わる情報をいち早く共有できる仕組みを作るなど、学会としても対策を進めていきたい」と話しています。

学会がクラスター発見で所属医師らに要請

日本感染症学会はクラスターの早期発見につなげようと、学会に所属する医師らに、新型コロナウイルスに感染した人の行動歴などの情報を学会に報告するよう要請しました。

日本感染症学会は12日、感染症の専門医など1万人余りいる会員に対して、新型コロナウイルスのクラスターの早期発見に向けた要請文を出しました。

この中では、医師らに対して、特に新型コロナウイルスに感染した経路がわからない人がいる場合には、訪れた場所など行動歴を報告することや、感染した複数の人が同じ場所を訪れているなど、クラスターの発見につながる情報があったときは、自治体や保健所などに加え、学会にも報告するよう求めています。

さらに感染の確定に至っていなくても、ウイルス性の肺炎が両肺に広がっているなど、感染の可能性が高い人についても、行動歴などの情報の報告を求めています。

学会の舘田一博理事長は、「クラスターを見つけるうえで、医療現場からの情報は自治体や保健所が集めた情報を補うための重要なデータになる。感染拡大を防止するため、全国に広がる専門家のネットワークを生かしたいと考えている」と話しています。