患者は 医師は 新型ウイルス 感染と向き合った人の「証言」

患者は 医師は 新型ウイルス 感染と向き合った人の「証言」
「初期症状だけでは感染を疑えなかった」ーー感染した女性は言います。医師も「インフルエンザと見分けがつきにくく、診察する側も怖さを感じた」と。新型コロナウイルスに感染した人や治療にあたった医師らが感染と向き合って何を感じたのか、証言しました。

どんな症状に? 感染した人が語る

今月5日に新型コロナウイルスへの感染が確認された20代の女性が電話インタビューに答えました。今、入院して治療を受けています。

この女性の60代の母親は、今月3日に感染が確認された札幌市のライブバーの従業員です。ここでは合わせて6人の感染が確認されています。

女性は母親の症状についてこう話しました。

「先月26日に仕事から帰宅すると、のどに少し違和感があると言っていた。27日に少し熱が出てかかりつけの病院に行き、抗生物質の処方と点滴を受けて帰宅した」

しかし、症状は改善しませんでした。

「28日も病院に行って点滴などを受けたが、症状はよくならなかった。今月1日に保健所に相談し、2日に別の病院で新型コロナウイルスの検査を受けることになったが、何も食べられないほど症状が重くなっていた」

そして1日の朝、女性自身にも症状が出始めました。

「頭痛と軽いせきがコンコンと続くようになった。高い熱が出ているわけでもないので普通のかぜだと思った」

自身の感染を疑い始めたのは、今月3日に母親の感染が確認されてから。

「身近に感染者がいなければ病院にかかることもなかった。母は介添えなしにトイレに行けないくらい衰弱していたので、必死に看病しているうちに感染したのかもしれない」

女性はこう話し、初期の症状だけでは感染を疑えなかった状況を明らかにしました。

38度を超える熱が出たこともありましたが、現在、症状は落ち着いているということです。

女性の80代の父親も感染が確認されています。
母親は回復に向かっていますが、父は体調が悪くなっているといいます。

「誰のせいでもないと言ってくれる人がいる一方で、ほかの家族も含めて冷たい目で見る人もいると思う」

残された家族も含め周囲からどのように見られるのか不安だと話していました。

女性は、取材に応じたのは感染した経緯や症状について広く知ってもらい、その理解と対策に生かしてほしいという思いからだとしています。

治療にあたった医師「診療する側も怖さ感じた」

一方、治療にあたった医師は何を感じたのでしょうか。

和歌山県有田市にある「有田市立病院」の曲里浩人病院長は「発熱が長く続き、けん怠感やせきなどの症状が徐々に進むところが特徴的だった。かぜ薬や抗生剤を使ってもなかなか回復しない。インフルエンザなどとの見分けもつきにくく、診察する側も怖さを感じた」と話しました。

曲里病院長の病院では、医師や入院患者の感染が相次いだ隣町の済生会有田病院とは接点のない患者が先月16日に訪れ、検査で陽性と確認されました。

「感染がさらに広がっているのではないかと危機感を強めたが、県や各病院が協力して積極的に検査を進めたことで、その後の感染拡大を食い止められたと思う」と振り返りました。

曲里病院長は全国の状況から長期的に対策をとる必要があるとしています。

保健師「つらい気持ちに寄り添う」

高知県では今月11日までに12人の感染が確認されています。

高知市保健所では、このうちの7人とその濃厚接触者に対応し、体調の聞き取りや相談にあたっています。

保健師のひとり松澤由加さんは感染した人たちが苦しんでいる状況を知ってほしいとインタビューに応じました。

松澤さんは寄せられる相談について触れ、「狭い地域だと感染したことを近所の人も知っていて『すごく視線を感じる』とか『犯罪者のような扱いを受けた』といった声を聞く。でも自分たちはその気持ちを受け止めることしかできない」と話しました。

そのうえで「患者の不安や怒りの声を聞くことしかできないが、“何かあったらいつでも話を聞くよ”と伝えることで安心感を与えられる。患者のつらい気持ちに寄り添うことが大切だ」と語りました。

松澤さんは適切な医療につなぐという対応だけでなく、心のケアが重要になっている現状を指摘。そして周囲の人たちに対して感染した人やその周り人がどんなつらい思いをしているのか思いやる気持ちを持ってほしいと話していました。