OPECとロシアなど非加盟産油国 減産の規模拡大の協議決裂

OPECとロシアなど非加盟産油国 減産の規模拡大の協議決裂
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新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、急激に値下がりした原油価格の下支えを目指してサウジアラビアが主導するOPEC=石油輸出国機構とロシアなど非加盟の産油国が原油の減産の規模拡大について協議しましたが、決裂しました。3年前から続けてきた協調減産の継続についても合意できず、原油市場や産油国の経済の先行きは、不透明感が増しています。
新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に経済活動が停滞し、原油の需要の落ち込みが見込まれることから、国際的な原油価格はことしに入って急激に値下がりしました。

サウジアラビアが主導するOPECの加盟国は、6日、ロシアなど非加盟の産油国と原油価格の維持を目指し、3年前から協調して続けてきた減産の規模の拡大について協議しました。

OPECはロシアなどに対し、ことし末まで現在の世界全体の需要の1.5%にあたる1日当たり150万バレルの追加の減産を呼びかけましたが、妥協点を見いだせず、協議は決裂しました。

またロシアのノバクエネルギー相は協議の後「4月1日以降、誰も原油生産を削減する義務を負わない」と述べ、今月末で期限の切れる1日当たり170万バレルの協調減産の延長についても合意できなかったことを明らかにしました。

OPECとロシアは、今後も原油市場の動向を注意深く見ていくとしていますが3年前から続けてきた協調減産の継続すら合意できなかったことで、原油市場や産油国の経済の先行きは不透明感が増しています。

原油価格は急落

原油価格の下支えをねらいとした減産の規模拡大をめぐるOPECと非加盟の産油国の協議が決裂したことで、国際的な原油価格は急激に値下がりしました。

日本時間の午前4時半の時点でロンドンの市場で取り引きされている北海産の原油の先物価格は1バレル=45ドル台前半まで値下がりし、ことし初めの水準と比べて30%以上、下落しました。

また、ニューヨーク市場のWTIの先物価格は一時、1バレル=41ドル台前半まで値下がりしてこちらもことし初めの水準と比べて30%以上、低くなりました。

協調減産のこれまで

サウジアラビアなど、OPECの加盟国とロシアなど非加盟国は3年前(2017年1月)に協調減産に乗り出しました。

アメリカでシェールオイルの生産が本格化し、原油の供給が一気に増えるとの見方から値下がりしていた原油価格を、生産量を絞り込むことで下支えするねらいでした。

背景には、産油国の多くが国の歳入や経済を原油に依存していることがあります。

OPECと非加盟国はその後も協調減産の期間を延長し、ことし1月からは世界経済の減速を見込んで減産の規模を世界全体の需要の1.7%にあたる1日あたり170万バレルに拡大しました。

しかし、その直後、新型コロナウイルスの感染拡大で、産油国は一段と深刻な状況に直面します。

世界最大の原油の輸入国、中国の経済活動が停滞して需要がさらに落ち込む見通しになり、原油価格が先月末には年初に比べて20%以上、値下がりしたのです。

このため、OPEC側は減産の規模をことし末までさらに150万バレル拡大する案をまとめ、非加盟国の中心であるロシアに協力を求めていました。

サウジアラビアとロシア 立場の違い

原油価格の大幅な下落は、産油国にとって程度の差こそあれ、歳入の減少や国内経済の停滞に直結しかねない問題となります。

ただ、サウジアラビアなどOPECに加盟する産油国と非加盟のロシアとの間では、財政上、許容できる原油価格に開きがあるのが現状です。

サウジアラビアは歳入の6割以上を原油による収入に依存し、7年連続で財政赤字となる見通しです。

IMF=国際通貨基金はサウジアラビアについて、原油価格が主要な価格の平均値で1バレル=80ドルを超える水準になければ、財政赤字を克服できないとしています。

このほか、中東や北アフリカの主な産油国は、主要な価格の平均値が60ドルを超える水準になければ、財政の均衡を保つのが難しくなるとされています。

一方で、ロシアは、1バレル=40ドル台でも許容範囲だとしており、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で原油価格が下落していても、これに対応する減産に慎重な姿勢です。
ロシアが原油の減産規模の拡大に否定的なのは、原油の生産量を増やすことで価格が低迷する中でも、一定の利益を確保したいという思惑があります。

また原油の取り引きでは、価格を決める際、生産量が多い企業のほうが有利とされることから、増産を進めることで原油市場で主導権を握りたいというねらいもあります。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、さらに原油価格が下がれば、生産量を増やしても十分な利益を確保できなくなるおそれがあり、ロシアは原油市場の動向を注意深く見ながら、OPECとの協力の必要性を判断していくものとみられます。