東日本大震災追悼式 取りやめを閣議決定

東日本大震災追悼式 取りやめを閣議決定
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、政府は来週11日に予定していた東日本大震災の追悼式を取りやめることを6日の閣議で決定しました。当日は安倍総理大臣が関係閣僚らとともに犠牲者に黙とうを行うとともに、追悼のことばを述べることにしています。
政府は来週11日に予定していた「東日本大震災九周年追悼式」について、今は新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた極めて重要な時期だとして6日の閣議で取りやめることを正式に決定しました。

東日本大震災ではいわゆる「震災関連死」を含めて死者や行方不明者が2万人を超えるなど甚大な被害が出たことから、政府は追悼式を重要な行事と位置づけてきました。

このため被災者の心情にも配慮し、来週11日当日は総理大臣官邸で安倍総理大臣が関係閣僚らとともに震災が発生した時間に合わせて犠牲者に黙とうを行うとともに、追悼のことばを述べることにしています。

首相 関係者におわびするとした談話を発表

来週11日に予定していた東日本大震災の追悼式を取りやめたことを受けて、安倍総理大臣は、犠牲者の遺族をはじめとした関係者におわびするとした談話を発表しました。

この中で、安倍総理大臣は「新型コロナウイルスの感染拡大を防止する措置を講じたうえで実施する方向でぎりぎりまで模索を続けてきましたが、現下の状況を踏まえ、いまが国内における感染拡大を防止するために、あらゆる手を尽くすべき時期であることから、誠に遺憾ながら開催を断念するのやむなきに至りました」としたうえで「ご遺族をはじめとした関係者の皆様におわび申し上げます」としています。

そして「最愛のご家族やご親族、ご友人を失われた方々のお気持ちを思うと、今なお哀惜の念に堪えません。政府は、原発事故の被災者を含め、いまだ多くの方々が避難され、不自由な生活を続けられている現実を心に刻み、復興に全力で取り組んでまいります。教訓を風化させることなく、防災・減災、国土強じん化を進め、災害に強い故郷を創り上げてまいります」としています。

そのうえで震災の犠牲者に哀悼の意を表すため、来週11日、震災が発生した時刻と同じ午後2時46分に1分間の黙とうをささげたいとして、国民に対し協力を呼びかけるとともに、総理大臣官邸でも黙とうをささげ、みずからが追悼のことばを申し述べるとしています。

官房長官「いまだ多くの方が避難 復興に全力を尽くす」

菅官房長官は閣議のあとの記者会見で「国内の新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、あらゆる手段を尽くすべき時期であることから誠に遺憾だが、追悼式の開催を断念するのやむなきに至った」と述べました。

また、政府主催の追悼式は来年までとする考えを重ねて示したうえで「国として犠牲者を追悼し、被災者に寄り添う気持ちは将来にわたって持ち続けるべきだと思っている。いまだ多くの方が避難し、不自由な生活を続けている現実を心に刻み、引き続き復興に全力を尽くしていきたい」と述べました。

防災相「政府を挙げて思い寄せる」

追悼式の準備を進めてきた武田防災担当大臣は閣議のあとの記者会見で「追悼式を取りやめざるを得なかったことは、本当に被災地の皆様方には申し訳なく思う。被災地で今なお不自由な生活をされている地域の方々に対する思いに、政府を挙げて思いを寄せていかなければならない」と述べました。

復興相「縮小含め検討も残念」

田中復興大臣は閣議のあとの記者会見で「地元の皆さんや自治体の意見も聞き、縮小も含めてギリギリまで開催の可能性を検討してきたが、このような状況になり、本当に残念だ」と述べました。

そのうえで田中大臣は追悼式に代わる対応について「3月11日は震災で亡くなられた方々に祈りをささげ、復興への思いを新たにすることが大切だ。弔意とともに、復興に向けた強い決意をきちんとアピールできるようにしたい」と述べました。

宮城県 村井知事 政府の判断に理解

宮城県の村井知事は「国が感染の流行を早期に終息させるために、学校の休校を要請するなど徹底した対策を講じているなか、感染拡大を防止するための苦渋の決断だったと考えている」として、政府の判断に理解を示しました。

そのうえで、「3月11日は震災で亡くなられた方々に追悼の意を表し、震災の記憶や教訓を風化させることなく、後世に語り継いでいくためにも大変重要な日だ。適切な感染防止対策を講じたうえで、県内3か所に設置した献花台で県民からの献花を受け付けたい」としています。

被災地 宮城 名取 閖上地区では

新型コロナウイルスの影響で来週11日に予定していた東日本大震災の追悼式が取りやめになったことについて、津波で大きな被害を受けた宮城県名取市の閖上地区ではさまざまな声が聞かれました。

親しくしていた友人夫婦を亡くしたという60代の女性は「大勢で集まらなくても一人一人が心の中でご冥福をお祈りすることはできると思います。特に高齢者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいという話も聞くので、中止もしかたがないかなと思います」と話していました。

また、地元の商業施設で餅菓子店を営む60代の男性は「こういう時期なのでやむをえないとは思いますが、中止になり残念です。被災された方々のことを考えると、縮小してでも実施してほしかったです」と話していました。

被災県でも縮小や中止

震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の3県でも多くの自治体が予定していた追悼式について規模を縮小したり、中止したりしています。

NHKは岩手、宮城、福島の3つ県で震災から9年に合わせて今月11日に追悼式を予定していた34の自治体に対し新型コロナウイルスの影響を取材しました。

その結果、岩手県の久慈市と金ヶ崎町、宮城県の塩釜市の3つの自治体が式典を中止することになりました。

また、時間の短縮や献花だけを行う方式にするなど式典の見直しを行ったのは仙台市や盛岡市、福島県のいわき市など29の自治体となりました。

このうち岩手県釜石市は県と合同で開催する予定で、出席者を減らし、体温を確認するほか、式典の時間も短くすることにしました。

岩手県の大槌町は式典を延期します。

一方、福島県の楢葉町は屋外の会場で少人数で開催するため、感染のリスクは低いとして追悼式を予定通り実施するとしています。