中韓入国者に2週間待機要請 国内対策と合わせ終息へ全力 政府

中韓入国者に2週間待機要請 国内対策と合わせ終息へ全力 政府
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、政府は6日の閣議で感染者の多い中国と韓国からの日本人を含めた入国者に対し、2週間の指定場所での待機と国内で公共交通機関を使用しないよう要請することを決めました。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け政府は6日の閣議で、水際対策の抜本的な強化に向けて新たな措置をとることを決めました。

それによりますと、日本人を含め感染者の多い中国と韓国から航空機や船舶で訪れた入国者で、「隔離」や「停留」の対象とならない人は2週間、検疫所の所長が指定する場所での待機と国内において公共交通機関を使用しないよう要請するとしています。

香港やマカオを含むとしていてこれらの措置は来週9日から今月末まで実施するということです。

加藤厚生労働大臣は、閣議のあと記者団に対し「機動的な水際対策を引き続き、ちゅうちょすることなく、断行することが不可欠で、中国と韓国は患者が増加していることを踏まえての措置だ」と述べました。

そのうえで待機場所について「基本的に、国内の方はそれぞれご自宅があれば、ご自宅で、海外からの方は当面、滞在するホテルが対象になる」と述べました。

また、今回の措置は強制力は伴わないとし「あくまで要請だ。そういうことを徹底したうえで、理解をいただきたい」と述べました。

観光業などへの影響懸念

今回の措置によって、中国と韓国からの旅行者がさらに減少することが予想され、観光業などへの影響が懸念されます。

日本政府観光局によりますと、去年1年間に日本を訪れた外国人旅行者の数は推計で過去最高の3188万人余りで、このうち、中国からの旅行者は959万人余りと全体の3割にのぼります。

韓国からの旅行者は日韓関係の悪化の影響で去年の夏以降、大幅な落ち込みが続いてきたものの、年間の旅行者数はおよそ558万人で、中国に次ぐ2番目の多さです。

両国だけで、旅行者は1500万人余りと全体の47%を占めたほか、日本国内で消費した金額は合わせて2兆1900億円にのぼると推計されていて、日本への旅行者の増加やインバウンド消費の増加をけん引してきた形です。

また、新型コロナウイルスの感染が世界各国で拡大する前の、ことし1月に日本を訪れた中国人旅行者は92万4800人、韓国人旅行者は31万6800人とそれぞれ推計され、全体の46%を占めていました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ことし1月末に中国の旅行会社が団体旅行を中止したことなどから、日本を訪れる中国人旅行者はすでに大幅に減少しています。

今回の措置で、中国と韓国からの旅行者はさらに落ち込むことが予想され、すでに旅行者の減少に苦しんでいる観光業界へのさらなる影響が懸念されます。

官房長官 「総合的に判断 適切なタイミング」

菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、中国と韓国からの入国者に指定場所での2週間の待機を要請するなど、新たな水際対策を決めたことについて「感染拡大の状況が時々刻々と変化し、確定的な予見が困難である中、諸外国の状況や措置の影響など、さまざまな情報や知見に基づいて検討したうえで、総合的に判断した結果だ」と述べました。

そのうえで対策を決定した時期について「適切なタイミングだと思っている。諸外国での感染が拡大する中で、今が正念場であり、国内対策はもとより、機動的な水際対策も引き続き躊躇(ちゅうちょ)なく断行していくことが大事だ」と述べました。

一方で、記者団が「きのうの対策本部で安倍総理大臣が発表したあと、政府側から詳しい説明がないのはなぜか」と質問したのに対し「それぞれの関係省庁から説明するようにさせていただく。引き続き国民に対し、丁寧に説明し理解を得るべく最大限努めていきたい」と述べました。

官房長官「今がまさに正念場」

菅官房長官は午後の記者会見で、中国と韓国からの入国者に2週間の待機を要請することについて「両国からの入国者の総数を抑制し、水際対策の強化が図られる。諸外国でも感染が拡大するなかで、今がまさに正念場であり、国内対策はもとより、機動的な水際対策も引き続き、ちゅうちょなく実行に移していきたい」と述べたうえで、専門家会議から得られた知見も含めて検討した結果だと説明しました。

菅官房長官は、今月3日に日本に入国した人の数について、中国が800人、韓国が1700人だったとしたうえで、今回の措置への韓国側の抗議について「各種状況を総合的に勘案し、国内での感染拡大を防止するための措置だ。韓国は今月5日時点で、感染者が5000名以上だと発表している。韓国には、わが国の考えを丁重に説明しつつ、引き続き感染症拡大の防止に向けて、韓国政府とも緊密に連携していきたい」と述べました。

厚生労働省 待機場所や移動手段などについて検討

政府が中国と韓国からの入国者について、日本人も含め2週間の待機などを要請することを決め、厚生労働省は待機場所や移動手段などについて検討しています。

2週間の待機要請は今月9日から今月末までとされていますが、厚生労働省によりますと、今回の要請は法律に基づく強制的な措置ではないとしています。

入国後の待機場所は日本人の場合、自宅となる見通しですが、自宅がない外国人などの場合は、自身で確保した宿泊施設で待機してもらうことを想定しているということです。

その際の滞在費は自己負担とする方針です。

また、空港から待機場所への移動手段については、公共交通機関以外の自家用車やレンタカーなどを使ってもらう方向で検討を進めています。

一方、待機期間中は毎日、自身で健康状態をチェックしてもらい、発熱などの症状が出たら相談センターに電話して指定された医療機関を受診するよう求めることにしています。

厚生労働省は、今回の要請が始まる今月9日までに具体的な内容を決めたいとしています。

横浜中華街「水際作戦としては遅いが影響が心配」

政府が中国と韓国からの入国者に指定場所での2週間の待機を要請することを決めたことについて、横浜中華街では影響を心配する声が聞かれました。

近所に住む60代の女性は「水際作戦としてはタイミングが遅いと思いますが、中国で仕事をしている知り合いからはすでに行き来しにくい状態になっていると聞いたので、今回の要請も影響が心配です」と話していました。

そのうえで「先日も中華街のお店に行きましたが、最近はお客さんが入らなくて大変だと言っていたので、日本人のお客さんが来てくれたらと思います」と話していました。

旅行会社は早期の帰国を呼びかけ

韓国へのツアーを行っている旅行会社は、旅行客に早期の帰国を呼びかけています。

このうち、日本旅行はすでに韓国に渡航している旅行客に対し、指定場所での待機が始まる今月9日までに日本に帰国するよう電話やメールで呼びかけています。

日本旅行は「水際対策が強化されれば帰国が難しくなり、負担をかけることから呼びかけを行っている」と話しています。

また外務省が、韓国に対する「感染症危険情報」をすでに「レベル3」を出している南部のテグとその周辺を除く韓国全土で不要不急の渡航をやめるよう呼びかける「レベル2」に引き上げたことから、韓国へのツアーについて、今月末の出発分まで、すべて中止することも決定したということです。

このほか、JTBとエイチ・アイ・エス、近畿日本ツーリストでも今月末の出発分まで、すべて中止することを決定したほか、クラブツーリズムは来月20日出発分までの中止を決めました。各社とも旅行代金は全額返金するということです。

専門家「どこまで効果が上がるか科学的にはわからない」

政府が中国と韓国からの入国者に、2週間の待機を要請することについて、感染症対策に詳しい東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「感染者の密度が高い地域から人を入れない方がよいというのは感染拡大対策の基本で、やらないよりはやった方がよいが、どこまで効果が上がるかは科学的にはわからない。こうした対策をとるにしても、新型コロナウイルスが日本国内に侵入するリスクがあることが本格的に懸念され始めたころに行っておくべきことだったと思う」と話しています。

また、感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎教授は「中国では湖北省以外は、新たな感染者が少なくなってきており、いま、入国者に待機を要請したところで効果が出るかどうかは疑問だ。韓国はこれからも感染者が多く出る可能性はあり、一定の効果はあるかもしれないが、日本国内でも感染が広がっている状況で、どこまで効果が上がるかは不明だ」と話しています。