中国 習近平国家主席の訪日延期 新型ウイルス対応で 官房長官

中国 習近平国家主席の訪日延期 新型ウイルス対応で 官房長官
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来月予定されていた中国の習近平国家主席の日本訪問について、菅官房長官は午後の記者会見で、日中両国が新型コロナウイルスへの対応を最優先に進めていることなどを理由に日程を再調整すると発表し、訪日は延期されることになりました。
政府は中国との関係改善に向けた首脳間の相互往来の一環として去年6月の日中首脳会談で、習近平国家主席の国賓としての日本訪問を要請し、来月上旬の予定で準備を進めてきました。

しかし新型コロナウイルスの感染が広がり、中国は最も重要な政治日程の1つ、全人代=全国人民代表大会を延期したほか、日本では、政府が大規模イベントの自粛や小中学校や高校の臨時休校を要請するなど対応に追われています。

安倍総理大臣は先週の記者会見で習主席の日本訪問について、「中国の国家主席の訪日は10年に1度のことであり、十分な成果をあげることができるものにする必要がある」と述べていて、日本を訪れた中国の外交トップ、楊潔※チ政治局委員と会談した際にも、こうした認識を伝えていました。

菅官房長官は習近平国家主席の日本訪問について、「日中双方が最大の課題である、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を最優先する必要がある。また習主席の国賓訪日を十分な成果があがるものとするためには両者でしっかり準備を行う必要があるとの認識で一致した」と述べました。

そのうえで習主席の日本訪問は双方の都合のよい時期に行うことになったとして、具体的な時期は今後、両国の外交ルートを通じて改めて緊密に調整する考えを示しました。

また菅官房長官は訪日延期の日中関係への影響について、「特段の影響があるとは考えていない」と述べました。

※チ=竹かんむりに褫のつくり

茂木外相「改めて調整」

茂木外務大臣は5日夕方、記者団に対し、「習主席の国賓としての日本訪問について、ことしの春で調整を進めてきたが、お互いの都合がいい時に行うことで、改めて調整することになった」と述べました。

そのうえで具体的な時期について、「今、日中双方にとって、新型コロナウイルス感染症の拡大防止が最大の課題であることは間違いない。同時に訪日を大きな成果が上がるものにしていくことも日中共通の目標であり、さまざまな外交スケジュールや政治日程などを、お互いにらみながら決定していきたい」と述べました。

立民 安住国対委員長「やむを得ないが検証が必要」

立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し、「日本と中国で新型コロナウイルスの感染が拡大しているため、来日の延期はやむを得ない。両国が冷静に議論できる状況になった時に来日するのが適切ではないか。ただ習主席の来日が念頭にあったから、遠慮をして水際対策が後手に回ったおそれがあり、検証が必要だ」と述べました。

中国外務省「最適なタイミングと環境のもとで実現を」

中国外務省の報道官は5日の記者会見で習近平国家主席の日本訪問について、「両国は新型コロナウイルスへの対策を全力で進めているさなかにあり、双方は習主席の日本訪問について、最適なタイミングと環境のもとで実現させるべきだという認識で一致している。訪問の時期については双方で引き続き緊密に意思疎通を図っていく」と述べました。

日中経済協力の遅れ懸念

おととし10月に安倍総理大臣が中国を訪問した際、日中両国の企業や政府機関は東南アジアなど第三国での経済協力に向けた大規模なフォーラムを開催し、50余りのプロジェクトについて協力文書を交わしました。

両国は、習主席の訪日に合わせて再びこのフォーラムを開き、プロジェクトをさらに具体化させるだけでなく、新たな案件についても文書を交わし、両国の協力関係にはずみをつけたい考えでした。

さらに両国は、前回の安倍総理大臣の訪中の成果として、イノベーションに関する新たな協力の枠組みも設けていて、次の首脳会談で一定の成果を盛り込めるよう協議を進めてきました。

当初は習主席の訪日に向けて、事務レベルの会合を先月から今月にかけて開催する予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でめどが立たない状況となっています。

政府関係者は、習主席訪日の日程が再調整されても、協力関係が揺らぐことはない、としていますが、節目となるスケジュールにズレが生じたことで、両国の経済面での協力の進展に遅れが出ることも懸念されます。

習主席訪日延期 中国側の立場

中国としては、習近平国家主席の日本訪問は、日中関係改善の流れをさらに加速させる、またとない機会になるとして、来月の予定で準備を進めてきました。

背景には、貿易や安全保障、さらには人権問題などをめぐって中国に圧力をかけるアメリカの存在があります。中国としては、日本とは関係改善を進め、アメリカへのけん制につなげたい思惑があります。

こうした中、中国は、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、日本がマスクや防護服など幅広い支援を行ったことに繰り返し感謝を表明し、日中の友好ムードを高めてきました。しかし、日中外交筋によりますと、中国に加え、日本でも感染が広がる中、先月行われる予定だった訪日の際の成果文書をめぐる実務的な協議が延期されるなど、日中間の調整が停滞していました。

日中双方が引き続き新型コロナウイルスへの対策に全力を挙げる必要がある中、このまま習主席の日本訪問を拙速に進めれば、期待される成果も得られないとして、日程を再調整することにしたものとみられます。

中国では、5日開幕する予定だった最も重要な政治日程の1つ、全人代=全国人民代表大会の延期も決めていて、こうした中で外交日程を優先させれば、国内対策を後回しにしたと批判を受けるおそれもあり、こうした点も考慮した可能性があります。