「音楽教室の楽曲も著作権の使用料必要」教室側敗訴 東京地裁

「音楽教室の楽曲も著作権の使用料必要」教室側敗訴 東京地裁
k10012306141_202002282345_202002282348.mp4
ピアノ教室などのレッスンで使われる楽曲の著作権をめぐり、使用料の請求の対象となった音楽教室などがJASRAC=日本音楽著作権協会を訴えた裁判で、東京地方裁判所は使用料を請求できるという判断を示し、教室側の訴えを退けました。音楽教室での著作権をめぐる初めての司法判断で、全国の音楽教室に影響を及ぼすとみられます。
楽曲の著作権を管理しているJASRACは、おととし4月以降、レッスンで楽曲を使うピアノなどの音楽教室についても使用料の徴収の対象にしています。

これについてヤマハ音楽振興会など、およそ250の音楽教室の運営会社などは「音楽文化の発展を妨げるもので許されない」などとして、JASRACを訴えました。コンサートなど公衆の前で楽曲を演奏する場合、著作権法に基づいて作曲者などへの使用料が発生しますが、裁判ではレッスンでの演奏が公衆に聞かせる演奏に当たるかどうかが争われました。

28日の判決で東京地方裁判所の佐藤達文裁判長は「楽曲を利用しているのは、生徒や教師ではなく事業者である音楽教室だ」と指摘しました。

そのうえで「生徒は、申し込んで契約を結べば、誰でもレッスンを受けられるので不特定多数の公衆に当たる」として、JASRACは音楽教室に使用料を請求できるという判断を示し教室側の訴えを退けました。

音楽教室での著作権をめぐる初めての司法判断で、全国の音楽教室に影響を及ぼすとみられます。

教室側「大変残念 おそらく控訴」

訴えを退けられた原告団の代表で「音楽教育を守る会」会長の大池真人さんは「たくさんの支援をいただき、『守る会』も作って2年かけてやってきましたが、大変残念です」と判決の受け止めを話したうえで、「来週に原告としての意思を決めますが、おそらく控訴になるかと思います。57万人の署名もいただきましたので、もう一度しっかり主張をアピールしていこうと思います。もう一度力を合わせて、音楽教育での著作物の利用をもっと円滑にすることや、どうやったらもっと演奏人口を増やしていけるかということについて声を広めて、引き続き適切に闘っていきたい」と今後への思いを話していました。

JASRAC「全面的に認められた」

JASRACは、判決のあと記者会見を開き、世古和博常務理事が「これまでの著作権管理業務を通じて培った判断が全面的に認められた。営利を目的で音楽を利用しているところから対価が還元されていないのはおかしいということが、判決で示されたのだと思います」と判決の受け止めについて述べたうえで「今後は教室事業者の理解が得られるよう取り組みを進め、創作者への対価還元を通じて音楽文化の発展に努めていきたい」と話しました。

また音楽教室側が控訴を検討していることについては「非常に残念だ。すでに使用料を支払っていただいている教室事業者もいるので、改めて協議の要請があれば応じていきたい」と話していました。

専門家「著作権範囲広げた判断 音楽文化に大きな影響

著作権をめぐる法的な問題に詳しい福井健策弁護士は「今回の判決では、たとえ1対1のレッスンであっても、あくまで音楽教室を経営している事業者が演奏の主体だと述べている。さらに、生徒についても、音楽教室と契約する時点を基準にして『公衆』にあたると指摘していて、著作権が及ぶ演奏の範囲について、これまでよりもかなり広く解釈した判断が示されたといえる」と分析しています。

そのうえで「音楽に触れる入り口といえる音楽教室でも著作者の許可が必要になるということがはっきりと示されただけに、今後の音楽文化に大きな影響を与える判決となった」と話しています。

判決のポイントは2つの争点

音楽教室のレッスンで使う楽曲でも著作権の使用料が必要かどうかが問われた今回の裁判。大きく2つの争点がありました。

1つ目の争点は、音楽教室での演奏が公衆に向けたものといえるかどうかです。楽曲を公衆の前で演奏したり再生したりした場合、著作権法に基づいて作曲者などへの使用料が発生します。
このためコンサートでの演奏や結婚式場のBGMは公衆に向けたものとして著作権を管理するJASRACなどに使用料を支払う必要があります。
今回の判決では、音楽教室での演奏について「楽曲を選んで利用する主体は生徒や教師ではなく事業者である音楽教室だ」と指摘しました。
そのうえで「音楽教室の生徒は申し込んで契約を結べば誰でもレッスンを受けられるので、音楽教室からみて不特定多数の『公衆』に当たる」と判断しました。

2つ目は、音楽教室での演奏が「聞かせることを目的としているか」どうかです。
著作権法では「聞かせることを目的とした演奏」が保護の対象となりますが、これが何を意味するのか、条文の解釈が争点になりました。
これについて音楽教室側は「聞かせることを目的とした演奏とは聞く人に感動を与えるための演奏だ」として、生徒が練習するための演奏は保護の対象ではないと主張しました。
しかし判決は「演奏が『感動を与える目的』かどうかは演奏する人の主観に踏み込まなければ判断できず、抽象的かつあいまいだ」と指摘しました。
そのうえで「音楽教室の教師や生徒自身が演奏技術を向上させるため、聞かせることを目的に演奏していることは明らかだ」として音楽教室側の主張を退けました。
音楽に触れる入り口といえる音楽教室でも楽曲の使用料が必要になるという今回の判決は著作権に基づく保護が及ぶ範囲をこれまでより広げるもので、今後の音楽文化に与える影響が注目されます。