テレワーク活用や時差通勤などで感染防止へ 厚生労働省

テレワーク活用や時差通勤などで感染防止へ 厚生労働省
職場での新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、厚生労働省は、全国の企業に対して発熱などの症状がみられる従業員が安心して休めるよう環境を整えることや、テレワークを活用して感染のリスクを減らすよう呼びかけています。
厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染が相次いでいることから、職場での感染拡大を防ぐための対応策をまとめました。

それによりますと、37度5分以上の発熱が4日以上続く場合や、強いだるさや息苦しさがある場合には保健所などに設置されている「帰国者・接触者相談センター」に相談するよう呼びかけています。

そのうえで、従業員の感染を防ぐため在宅で仕事をするテレワークを活用することや人混みを避けるため時差通勤を導入するよう促しています。

テレワークを活用した場合も、労働基準法などの法令が適用され労働時間の管理などに注意することや、時差通勤を行う場合も従業員と合意が必要で協議してほしいとしています。

さらに、従業員を休ませる場合、欠勤中の賃金の取り扱いについて労使で十分に話し合い、従業員が安心して休めるよう環境整備を求めています。

こうした対応策について、厚生労働省は経団連などの経済団体を通じて、全国の企業に取り組みを進めるよう呼びかけています。

テレワーク 中小企業への普及が課題

テレワークは、職場に出勤せずに自宅や共用のオフィスで仕事をしたり外勤中にスマートフォンなどを活用したりして時間や場所にとらわれない働き方のことです。

テレワークに関心を持ち、取り組みを始める企業が広がっています。
総務省では、東京オリンピック・パラリンピック期間中に通勤の混雑緩和もかねて全国の企業や自治体にテレワークを行うよう呼びかけています。

総務省は3年前から企業や自治体などが参加しテレワークを実践する「テレワーク・デイズ」というキャンペーンを実施していますが、当初、950だった参加団体は年々、増えています。

ことしは全国で3000団体、都内にある企業の従業員の1割の参加を目標としています。また、テレワークをめぐっては中小企業でどのように普及していくかが課題の1つです。

国土交通省が3年前、会社員や公務員など3万6450人を対象にインターネットで行った調査では14.8%にあたる5393人が「テレワークをしたことがある」と回答しています。

調査対象となった人の勤務先を規模別にみると、テレワークを認めているのは従業員数が100人未満が11%、100人以上300人未満が12.9%、300人以上1000人未満が15.8%、1000人以上は25.1%となっています。

テレワークを行うには、業務用のスマートフォンやノートパソコンなどの通信機器や外部オフィスの確保が必要であるため、従業員数が多い大企業ほどテレワークに取り組む割合が高くなっているものと見られます。

完全テレワーク目指す企業も

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、すべての従業員のテレワークを目指して取り組みを始めた会社もあります。

東京 千代田区の出版社では、従業員およそ100人の業務のほとんどを今月17日からテレワークで行っています。

もともと東京オリンピック・パラリンピックの期間を目指して、ノートパソコンの支給やオンラインで勤怠管理ができるシステムの導入など進めていたため、さらに10台余りのノートパソコンを購入するなどして急きょ環境を整えました。

さらに、受付や来客対応、事務の補助などのオフィスでしかできない業務を担っていたアルバイトのために、すべての従業員に呼びかけて在宅でもできる業務で人手が足りていないものを洗い出し、データ整理や名刺のデータ化などを担当してもらうことにしました。

こうして今の時点でおよそ9割の従業員がテレワークで仕事をしているということです。
編集部門のマネジメントを担当する飯田智樹さんは、グループのメンバーに一斉に呼びかけられるシステムを使って毎日、始業と終業のタイミングで業務内容を報告してもらい、進捗(しんちょく)を管理したり、テレビ電話を使って打ち合わせをしたりしています。

夫婦と5歳の子どもの3人暮らしの飯田さんは、ふだんは都心のオフィスまで満員電車で通勤していますが、テレワークによって感染リスクが減ったと感じているといいます。

飯田さんは「自分たちのことよりも子どものことが気になります。家で仕事ができるのは非常に安心できるし、今自分たちができることが選択してできているんだなと感じています」と話していました。

一方で、課題も見えてきました。
飯田さんはテレワークについて「いろんな人にちょっと声をかけて意見を聞くということができないので、新しい仕事を始めるのが難しい。また、本の著者に会って打ち合わせをしたり、ゲラを印刷して確認したりするのもできないため課題を感じている」と話していました。

技術的な課題も残っています。
経理や倉庫の在庫管理のシステムは外部からの接続が難しいほか、オフィスに届く郵便物への対応も必要で、今でも10人ほどが出社しています。

今後はローテーションを組むなどして出社する人数を減らしていきたいと考えています。

人事や経理を担当する松原史与志さんは「社員が営業で全国の書店を飛び回っていたので、感染したり、逆に感染を広めてしまったりする危険性もあると感じて早急にテレワークを実施しました。不安はありましたがやってみたら意外とできたという感想が多かったです。ただ、業績に影響を与えずに事業を継続することがいちばん大事なので、すべての部署で、いかにふだんどおりのパフォーマンスが出せるかが今後の課題です」と話していました。