クルーズ船米人乗客 当初は米側が「船内に」とどめるよう要請

クルーズ船米人乗客 当初は米側が「船内に」とどめるよう要請
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新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応で、日米両政府の詳細なやり取りが分かりました。日本側が当初、アメリカ人乗客の早期帰国を提案したのに対し、アメリカ側は「乗客の移動は感染リスクが高まる」として船内にとどめるよう要請していたということです。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客のうち、アメリカ人は日本人に次いで2番目に多く、帰国を希望したおよそ330人が2週間の健康観察期間が過ぎるのを待たずに、17日、チャーター機2機で日本を出国しました。

こうした一連の対応で日米両政府が交わしたやり取りの詳細がわかりました。

それによりますと、日本政府が、当初、アメリカ人乗客の早期下船と帰国を提案したのに対し、アメリカ政府は日本側の対応に謝意を示したうえで、CDC=疾病対策センターなどと議論した結果、「乗客を下船させ、横田基地などに移動させれば、感染リスクが高まることが予想される。船は衛生管理がきちんと行われており、船内にとどめてほしい」と要請していたということです。

また、15日に行われた事務レベルのやり取りで、日本側が2週間の健康観察期間が過ぎる19日から下船が順次可能となると説明したのに対し、アメリカ側は日本政府の負担を軽減すべきと判断したとして、19日を待たずにチャーター機を派遣し、アメリカ人の乗客らを帰国させる方針を伝えたということです。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」では、香港で下船した男性が新型コロナウイルスに感染していたことが今月1日に明らかになりました。

そのため、今月3日に横浜港の沖に停泊して3711人の乗客・乗員のうち、発熱などの症状がある人を対象に急きょウイルス検査が行われました。

このとき厚生労働省は、検査の結果が判明するまでは全員、船内に待機するよう求めたうえで、症状のない人については検査を行わず、自宅に戻ってもらうことにしていました。

今月5日、検査の結果が出て10人の感染が明らかになり、厚生労働省は専門家の意見をもとに、5日から14日間の健康観察期間を設けて、客室などに待機してもらうことにしました。

そして、船内に残ったすべての乗客・乗員にウイルス検査をしうえで、結果が陰性と確認され、健康状態にも問題がなければ健康観察期間が終了した今月19日から順次、船を下りてもらうことにしました。
これは、今月5日から客室ごとの隔離が徹底され、それ以降は乗客が、同室の人以外から感染する可能性は低いという考えからです。

そして、今月19日から21日までの3日間で、合わせて969人が船を下りてそれぞれ自宅などに戻りました。
ところが、22日になって、このうち23人が今月5日以降にウイルス検査を行っていなかったことがわかりました。

また、19日に下船した栃木県の60代の女性が検査では陰性となっていたものの、21日になって発熱し、検査の結果、22日、感染が確認されました。

一方、厚生労働省によりますと、これまでに船内で新型コロナウイルスに感染した乗客・乗員は合わせて634人に上っていて、順次医療機関に搬送されました。

また、感染が確認された人と同じ客室にいてウイルス検査が陰性だった89人について、厚生労働省は22日、国が用意した埼玉県和光市の宿泊施設に移ってもらいました。そして、感染した人が客室を離れた日から14日間を健康観察期間として宿泊施設で待機してもらい、期間が経過したあとに検査を行い、陰性であることを確認することにしています。

このほか、アメリカやオーストラリアなどがチャーター機を出して自国などの乗客を帰国させています。

厚生労働省によりますとクルーズ船には、現在、帰国のためのチャーター機を待つ人などおよそ200人の乗客と、乗員がおよそ1000人いるということです。

乗員についてもウイルス検査を行ったうえでクルーズ船の運航会社と協議し、希望者を下船させるなどの対応を検討するということです。