クルーズ船4日は接岸せず 乗客「先が見えずつらい」

クルーズ船4日は接岸せず 乗客「先が見えずつらい」
新型コロナウイルスへの感染が確認された香港の男性が乗船していたクルーズ船は3日夜から横浜港沖に停泊し、船内で乗客や乗員の健康状態の確認などが行われています。検査結果は4日夜から5日にかけて判明する見通しですが、横浜市などによりますと4日中に船が着岸することはないということです。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」は3日夜から横浜港の大黒ふ頭の沖合に停泊しています。

1月20日に横浜を出発して、鹿児島や香港、それに沖縄などをまわったあと3日夜、横浜港の沖合に戻ってきましたが、香港に住む80歳の乗客の男性が、先月、香港で船を下りたあと、新型コロナウイルスへの感染が確認されたため、3日夜から船内では乗客と乗組員全員を対象に検疫が行われています。

また発熱やせきなどの症状があり感染が疑われる場合に加えて、症状がある人と濃厚接触した人についてウイルス検査が実施されています。

厚生労働省によりますと、乗客と乗員合わせておよそ3700人のうち健康状態の確認がまだ終わっていない人がいるということです。

今後、ウイルス検査が必要と判断された場合、検査結果は早ければ4日夜から5日にかけて判明する見通しだということで、それまでは症状の無い人も含めて全員、船内で待機してもらうことにしています。

また横浜市などによりますと4日中に船が着岸することはないということです。

厚生労働省は、症状がない人は船を下りたあと自宅に戻ってもらったうえで、万が一症状が出た場合には保健所への連絡や医療機関の受診を呼びかけるとしています。

クルーズ船乗客「先が見えずつらい」

新型コロナウイルスへの感染が確認された香港の男性が乗船していたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の70代の乗客の男性がNHKの電話インタビューに応じました。

まず船内の状況について「マスクをしている人がだいぶ多くなってきた。船内の自分の部屋で過ごしている人もいるが、停泊が長時間となり気が紛れるのか部屋の外に出ている人も多くいる。いま甲板デッキを歩いてきたがウォーキングをしている人もいる」と話しています。

そして「船内放送で1時間半から2時間おきに定期的にアナウンスが流れ検疫の進捗(しんちょく)などの情報が伝えられている。きょう午後5時ごろには検疫を終えていない人がおよそ100人残っていて、きょうは下船できないという情報だった」と話しています。

また検疫の様子については「けさ早く2人の検疫官が部屋に来て体温を測られた。今後の連絡先や住所、メールアドレスなどを用紙に書いて提出した」と話しました。

そして男性は、船から下りられない状況が続いていることについては「比較的、船内は落ち着いているが検疫の結果しだいであす以降、どうなるか私たちには分からない。この先どうなるのか、何も先が見えないのがつらい」と話していました。

ツイッターに船内の検疫の様子

ツイッターには、新型コロナウイルスへの感染が確認された香港の男性が乗船していたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の船内を撮影したとみられる画像や動画が複数、投稿されています。

このうち、乗客とみられる30代の男性が3日午後11時半ごろに投稿した動画には、検疫などにあたる職員とみられる紺色の制服姿の十数人がマスクや手袋を着用し、書類などを持って船内の廊下で話し合っている様子が写っています。

そして男性は「検疫始まりましたそれぞれの部屋で体温はかるっぽい」などと投稿しています。また、男性が4日午前10時40分ごろに投稿した画像には、船内の8階にある階段の踊り場で青い防護服を着た人たちが検疫や検査のために作業をしているとみられる様子が写っています。

男性はツイッターに「検疫はあと1時間くらいで終わるはず」、「船内は通常です。いつもと変わらず。食事は出てました」などと投稿しています。

撮影した男性は4日午後1時前に船内の自分の部屋で検疫を受けたということで「検疫は1分ノックされてドア開けて問診表渡して耳の体温計で(測られた)」と投稿しています。

鹿児島・那覇に寄港 接触など調べ

厚生労働省によりますと、感染が確認された男性が香港で船を下りる前に船は鹿児島に寄港し、その際、男性が船を下りたかどうかについてはわかっておらず、調査中だということです。

また香港で男性が下りたあと、船が那覇に寄港した際に検疫が行われましたが、発熱やせきなどの症状がある人は確認されず、10人程度の乗客が那覇で船を下りたということです。

厚生労働省は、那覇で船を下りた人の中に感染が確認された男性などと濃厚接触した人がいないか調べることにしています。

加藤厚労相「スピード感持ちつつ丁寧に作業」

加藤厚生労働大臣は午前8時半すぎ、記者団に対し「昨晩から乗員・乗客含めて3700人に検疫法に基づく臨船検疫を実施していて、現在も続いている。年配の方も多いので夜は睡眠をとっていて時間を要している。現段階で新型コロナウイルスの感染につながるような発熱や呼吸器症状の人がどれだけいるか、把握できる状況ではない。できるかぎりスピード感を持ちつつ丁寧に作業を行う」と述べました。

菅官房長官「着岸や上陸は潜伏期間を参考に判断」

菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、「クルーズ船については、検疫の結果を踏まえ、着岸や上陸を認めるかどうか、検疫所で適切に判断することなると思うが、その際には、感染が確認された方が下船された1月25日から、WHOの知見で潜伏期間と言われる10日間を経過しつつあることを参考としながら判断する」と述べました。また、体調不良を訴えている人数については、「乗員・乗客の健康状況の把握を最優先に行っていて、現在も進行中であり、控えたい」と述べるにとどめました。

運航会社「検査に協力」

クルーズ船の運航会社は、4日午前、「ご乗船中のお客様および乗務員の安全と健康を最優先とし、私たちは日本の保健当局と緊密に連携し検査に協力しています」とするコメントをホームページに掲載しました。

また「入港に際してお客様ならびに乗務員の検査実施は新型コロナウイルス感染者発見にともなう通常の手順の一環で、この検査を適切かつ迅速に行っていただけるよう情報提供をしてまいります」としています。

一方、新型コロナウイルスへの感染が確認された香港の男性については「入院中の病院によると男性の容体は安定しており、クルーズをともにしていた家族にウイルス感染は認められておりません」としています。

運航会社によりますと、同じ船で4日夕方に横浜港を出発する予定だった別のクルーズについては、検疫に時間を要しているため中止したということです。

133人を検査

厚生労働省によりますと、新型コロナウイルスに感染した香港の男性が乗船していたクルーズ船で、乗客や乗組員のうち何らかの症状が見られたり、香港の男性と濃厚接触した133人の検体を採取し、ウイルスに感染しているかどうか調べているということです。