新型肺炎の感染拡大 日本の企業の生産活動などへの影響広がる

新型肺炎の感染拡大 日本の企業の生産活動などへの影響広がる
新型のコロナウイルスの感染拡大は、日本企業の生産活動にも影響を与えています。中国の地方政府が感染拡大を防ぐため、春節にあわせた連休を延長するよう求めていることから、日本企業の間では、中国の工場の操業再開を延期する動きが広がっています。
トヨタ自動車は、中国国内の4つの都市にある工場について、操業再開の時期を当初の今月上旬から10日以降に延期すると発表しています。

ホンダは湖北省武漢にある自動車の工場で、今月2日までだった連休を13日まで延長するほか、広東省広州にある自動車の工場と、江蘇省などにあるバイクの工場も今月9日まで休止します。

このほか、マツダと三菱自動車工業も現地の自動車の工場について、連休の期間を9日まで延長することを決めているほか、パナソニックや日立製作所の現地工場も操業再開の時期を延期しました。

新型のコロナウイルスの感染拡大による生産への影響がどこまで広がるのか先が見通せない状況で、さらに長期化することになれば、現地に拠点を持つ日本企業の生産や販売に大きな影響を及ぼすことも懸念されています。

サプライチェーン

また、現地の工場の操業停止や物流の停滞によって部品の調達や供給網にも影響が出ることが懸念されています。
三菱自動車工業の池谷光司副社長は、先月31日の記者会見で「中国の部品メーカーが製造した部品を、日本の工場で使っている車種もある。ひとつひとつ丁寧に調査しながら代替生産も含めて検討したい」と述べ、部品の調達先の変更などを通じて、日本で行っている自動車の生産への影響を最小限に抑えたいという考えを示しました。

大手住宅設備メーカー「LIXILグループ」の瀬戸欣哉CEOは、先月31日、「BCP=事業継続計画として東南アジア、例えばベトナムやタイそれに日本の工場で対応することもあり得る」と述べ、中国で部品を確保できない事態などに備え、中国以外での代替生産の検討を始めたことを明らかにしています。
新型のコロナウイルスの感染拡大を受けて、旅行や航空サービスへの影響も広がっています。

旅行会社 中国へのツアー中止相次ぐ

大手旅行会社では、日本から中国へのツアーを中止する動きが相次いでいます。

JTBは香港やマカオを含む中国向けのすべてのツアーを今月末の出発分まで中止することを決めています。

日本旅行は、中国本土へのツアーについて今月17日の出発分まで、エイチ・アイ・エスも中国向けのすべてのツアーを今月10日の出発分まで、中止することにしています。

航空会社 中国路線の予約減少

こうした中、航空会社では中国路線の予約が減少しています。

全日空は、今月の中国路線の予約状況が去年の同じ月と比べて中国から日本に向かう便で5割、日本から中国に向かう便も4割減少しているということです。

また、日本航空でも中国路線の予約にキャンセルが相次いでいて、先月20日以降の10日間で、今月の予約のうち、およそ25%がキャンセルになりました。

海外の航空会社の間で中国路線の運航を見合わせる動きが相次いでいますが、日本航空の菊山英樹専務は、先月31日の記者会見で「状況は刻々と変わっているが、需要の動向に応じて運休や減便などの対応を考える必要がある」と述べました。

観光庁 宿泊施設対象の相談窓口設置

国内の宿泊施設では、中国人旅行者などの宿泊予約のキャンセルが相次ぎ影響が広がっています。

観光庁は、全国の運輸局などにホテルや旅館などの事業者向けに支援策を紹介する相談窓口を設置し、平日、電話や面談で相談を受け付けています。

窓口では、キャンセルの規模など経営への影響を聞いたうえで、売り上げなどが一定程度減少した場合に利用できる、政府系金融機関が実施している低金利の融資制度や、従業員の雇用を維持した場合に支給される「雇用調整助成金」などの支援策を紹介しています。