新型肺炎「国内でも人から人への感染起きている」厚労省が見解

新型肺炎「国内でも人から人への感染起きている」厚労省が見解
厚生労働省は、28日と29日に武漢への渡航歴の無い人の感染が確認されたことから、国内でも人から人への感染が起きているという見解を示しました。

一方で、国内では広く流行が認められている状況ではなく、過剰に心配することなくインフルエンザなどと同様に手洗いやせきエチケットなど基本的な感染症対策に努めてほしいと呼びかけています。

「症状ない人から感染拡大のおそれを念頭に対策を」

WHO=世界保健機関の元西太平洋地域事務局長で、感染症対策にあたってきた、地域医療機能推進機構の尾身茂理事長は厚生労働省の会見に同席し「症状がなくても、体の中にウイルスがいるということなので、ほかの人に感染する可能性は否定できないし、可能性はあり得る」と指摘しました。

その理由について、中国全体で急激に感染者が増えており症状がある人からだけの感染であればここまでは増えないこと、中国政府が無症状の人からの感染があり得ると公式に発表していること、奈良県のツアーバスの運転手の男性が感染したケースでは、ツアーの参加者に重症の人がいなかったことなどを挙げています。

そのうえで、尾身理事長は「日本では武漢以外からの感染はないため今の段階で慌てる必要はないが、症状の無い人から感染が拡大するおそれがあることを念頭に、対策を取るべきだ」としています。

一方、厚生労働省結核感染症課の日下英司課長は「現段階で無症状の人から感染が拡大することを決定づけるのは時期尚早で、確証は無いが、そうしたことも想定して対策を考えていきたい」としています。

女性ガイドが感染した経緯

厚生労働省や大阪府によりますと感染が確認された女性は、今月中旬、すでに感染が確認されている奈良県の男性が運転する観光バスに乗車し中国・武漢から来たツアー客のガイドを務めていました。

ツアーでは、今月12日から17日にかけて成田空港から関西空港まで移動していました。この際バスの運転手は14日に悪寒とせきの症状を訴え、さらに16日に奈良公園に立ち寄った後、体調不良を理由にツアーから離脱し、別の運転手に交代したということですが、ガイドの女性は体調に異常ありませんでした。

その後、女性は17日の夕方から中国・河南省からの別のツアーに乗務ました。この最中の19日に鼻水、20日に発熱がみられ、20日と21日、都内の医療機関を受診しながら乗務を続けましたが体調がすぐれず、22日にツアーの途中でガイドを交代したということです。

女性はその日のうちに新幹線で新大阪まで戻り、地下鉄を使って大阪市内の医療機関を受診したあと、大阪市内の自宅に帰ったということです。

症状が改善しなかったため、23日、大阪市保健所に連絡。受診した市内の別の医療機関で肺炎の兆候が見られたことから入院して検査を受けたところ、29日夜、新型のコロナウイルスに感染していたことが確認されました。

女性はこの1か月間、海外に渡航しておらず、大阪府などは中国・武漢からの客を乗せたバスツアー中に、感染した可能性が高いとみています。