障害者施設殺傷事件 被告「責任能力を争うのは間違い」

障害者施設殺傷事件 被告「責任能力を争うのは間違い」
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相模原市の知的障害者施設で入所者19人が殺害されるなどした事件の裁判は24日から被告人質問が始まり、弁護士が被告には責任能力が無いとして無罪を主張していることについて被告は「責任能力を争うのは間違いだと思っている」などと述べました。
相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」の元職員、植松聖被告(30)は平成28年7月、入所者19人を殺害したなどとして殺人などの罪に問われています。

被告は初公判で殺害などについて認めていて、24日から被告人質問が始まりました。

裁判は被告の責任能力の有無が争点で、検察が責任能力があったと主張しているのに対し、弁護士は大麻を使用したことによる精神障害の影響で責任能力はなかったとして無罪を主張していて、これについて弁護士から理解しているか尋ねられたのに対し、被告は「責任能力を争うのは間違いだと思っています。責任能力はあると考えています」と述べました。

そのうえで、「犯罪だと分かっていることを示すために自首しました」などと当時の行動の理由などについて説明しました。

一方、「重度障害者については本人や家族の同意がなくても殺害していいと思いました」などとこれまでと変わらない障害者への差別的な主張を繰り返しました。

このほか殺害計画を事前に50人ぐらいの知人に打ち明けたとしたうえで、「半数以上から笑いが起きて、同意されたと感じた」と述べたほか、「障害者を殺せば金を持つ権利が得られると思いました」などと述べました。

被告は24日も黒のスーツ姿で、証言台の前に座り時折、ハンカチで汗を拭いながらはっきりした声で質問に答えていました。

次回は今月27日に引き続き被告人質問が行われます。

被告が法廷で述べたこと

植松被告は24日の法廷で自身の考えをはっきりと述べました。

被告の弁護士は大麻を使用したことによる精神障害の影響で責任能力はなかったとして無罪を主張しています。

被告は事件前から吸っていたとされる大麻について「大麻は本当にすばらしく、深く感謝しています。しこう品として、使用や栽培を認めるべきだと思います」と大きくはっきりとした声で述べました。

また、弁護士から使用していた期間や頻度を聞かれたのに対し、「23歳か24歳の頃から大麻の使用を始め、週2回から4回くらい使用していました」と答えました。

弁護士が大麻についての質問を終わらせようとした際には自ら発言の機会を求め、「安楽死を認めている国には大麻を合法化している国が多くあります。大麻を吸うことで考えが深まっているのだと思います」などと、ひときわ大きな声で持論を展開しました。

さらに、事件のいきさつや当時の認識について、弁護士の質問に答えるかたちで被告自身が初めて説明しました。

当初は平成28年の10月頃までに事件を起こそうと考えていたものの多くの人に計画を話したことで自分自身に危険がおよぶ可能性があると考え、「時期を早めた」と説明しました。

また、事件の準備を始めた時期については、「事件の年の2月、10日間ほどの措置入院が終わってから体を鍛えはじめました。事件の前日にホームセンターでハンマーや結束バンドを購入しました」などと説明しました。

弁護士が「事件を起こせばどんなことが起きると思っていたか」と尋ねると、「捕まると思いました。犯罪だということはわかっていました」などと述べ当時、自分の行為の意味を正確に認識していたと強調しました。

重傷負った男性の父親「怒り通り越しあきれた」

事件で重傷を負った尾野一矢さん(46)の父親の剛志さんが閉廷後、取材に応じました。

この中で、植松被告が「障害者を殺すことは役に立つことだ」などと発言したことについて、「怒りを通り越してあきれました。謝罪の気持ちはあるのか、彼が殺害を『いいこと』だと捉えているのは何なのか、理解に苦しんでいます。なぜそう思い立ったのかを知りたいです」と話していました。

また、いちばん記憶に残った発言として、被告が自身に「責任能力がある」と発言したことをあげ、「被告がはじめにきちんと自分は責任能力があると明言したので弁護団はちゅうちょしたのではないか。弁護士が言わせたいことと違うことを被告が言っているようで違和感を持った」としたうえで、自身も今後の審理で直接問いたいと話しました。

専門家「法廷でのことば 許すことできない」

知的障害のある息子を育て、福祉の仕事を目指す学生を指導している静岡県立大学短期大学部の佐々木隆志教授は、「被告の差別的な主張に対し、接見や手紙のやり取りで『それは違う』ということを言い続けてきた。初公判で謝罪のことばを述べたので、もしかしたら本心を話すかもしれないと裁判所に足を運んできたが、きょうの被告人質問でもいままでの主張を繰り返したということで非常にショックで残念だ」と話しました。

そのうえで、「障害のある息子をはじめ被告のことばにおびえている当事者がいることを考えると、法廷でのことばは許すことはできない。障害があってもなくても生きること自体にすばらしさがある。必要がないという命の境目は何なんだと被告に問いかけたい」と話していました。

弁護士と被告 主張食い違うことも

裁判では、被告本人が事実関係について認めていても、被告の弁護士が無罪を主張するケースがあります。

法律では犯罪行為があっても被告に精神障害などがあって善悪の判断ができない場合や、自分の行動をおさえられない場合は、本人に責任を負わせることはできないと定められているからです。

このため弁護士と被告の主張が食い違うこともありますが、法律では弁護士は被告の保護者的な立場だと解釈されていて、被告の意向が本人の利益にならないと判断できる場合には、その意向にかかわらず弁護することが求められるとされています。

倍率およそ38倍 高い関心

24日の被告人質問には、傍聴を希望する多くの人が訪れ、傍聴できるかを決める抽せんに参加しました。

裁判所によりますと、25の傍聴席に対し941人が訪れ倍率はおよそ38倍で、倍率がおよそ75倍だった初公判に次いで高い関心を集めました。