千葉 野田 小4女児虐待死 対応記録した資料開示 経緯明らかに

千葉 野田 小4女児虐待死 対応記録した資料開示 経緯明らかに
千葉県野田市で小学4年生の女の子が虐待を受けた末に死亡した事件から24日で1年です。NHKの情報公開請求で児童相談所の対応を記録した資料の一部が新たに開示され、誤った状況判断のもとで不適切な対応がとられた経緯が明らかになりました。
去年の1月24日、千葉県野田市の小学4年生栗原心愛さん(10)が浴室で死亡しているのが見つかった事件では父親の勇一郎被告(42)が傷害致死などの罪で起訴され、来月21日に初公判が開かれるほか、32歳の母親が虐待を止めなかったとして執行猶予の付いた有罪判決が確定しています。

この事件では心愛さんが被害を訴えたアンケートのコピーを教育委員会が親に渡すなど、不適切な行政の対応も明らかになりました。

このうち児童相談所の対応についてNHKが県に情報公開請求したところ、対応をまとめた「児童記録」の一部が新たに開示されました。

資料には事件の1年余り前に児童相談所が一時保護したものの、1か月半で解除した理由について「安全に生活できる環境が整えられた」などと記されています。
しかしそのわずか2か月後には、勇一郎被告が担当者に対し「これ以上、家庭をひっかきまわさないでほしい」とか「訴えることも検討している」などと敵対的な発言を繰り返していたことが記録されているほか、「一時保護解除時の約束が守られていない」という記述も確認できます。

こうした記録からは児童相談所が誤った判断のもとで不適切な対応をとり、心愛さんを取り巻く状況が悪化していったことがうかがえます。

県の検証委員会は一連の関係機関の対応について「不十分、不適切だった」と指摘していて、今後、再発防止に向けた実効性のある取り組みをどう進めていくかが問われています。

検証の専門家「父親の言いなりになってしまった」

今回の事件で行政の対応を検証した千葉県の第三者委員会の副委員長を務めた東京経営短期大学の小木曽宏教授がNHKの取材に応じました。

このなかで小木曽教授は敵対的な姿勢を取る父親を前に、関係機関が不適切な対応を繰り返したことについて「教育委員会によるアンケートの開示など、子どもの権利を守る側が決して、してはならないことが行われた。こうした対応を疑問に思わなかったことを含め、父親のペースに完全に巻き込まれ、要求に従ってしまったと感じる。また父親から組織ではなく職員個人の責任を追及することを示唆され、言いなりになってしまった。そうした中で、女の子が発したSOSは見逃されてしまった」と指摘しました。

また「現場職員の専門性の確保や養成が十分ではなく、事案の重大性の見立てやリスクアセスメントが正しくできていないことは根本的な問題だ」と述べ、現場で対応にあたる職員の知識や対応能力が十分なレベルに達していないことが不適切な対応の背景にあると指摘しました。

そのうえで今後取るべき対策について「児童相談所などの人員を増やすだけではなく、職員の専門性を高めるための研修が必要だ。単に研修を受ければいいということではなく、効果を検証し、その結果を次の研修に生かしていくことが重要だ」と述べました。

有識者委「頼れる大人が1人でもいたら救える命だった」

千葉県とは別に、教育委員会などの対応を検証してきた野田市の有識者委員会は23日、報告書を公表し「頼れる大人が1人でもいたら救える命だった」と当時の対応を批判しました。

報告書の中では、心愛さんが被害を訴えたアンケートのコピーを父親に渡した教育委員会の対応について「子どもへの裏切り」で、「子どもの権利に対する意識の低さは非常に大きな問題だ」と指摘しました。

また父親に迎合した教育委員会や学校の関係者がいたとして「子どもより自分や組織を優先させていると言われても仕方がない」と厳しく批判しています。

さらに市については関係機関の要として積極的に動くべきだったのに協議の場を設けないなど、対応に問題があったとしています。

そのうえで「女の子は公的機関の大人を信頼することができなかった。頼れる大人が1人でもいたら救える命だった」と指摘しています。

事件の経緯

小学4年生だった栗原心愛さん(10)が自宅で亡くなったのは去年1月24日の夜でした。

父親から「浴室でもみ合いになった娘が呼吸をしていない」と110番通報があり、警察と消防が駆けつけたところ自宅の浴室で倒れて死亡していました。

警察は冷水のシャワーをかけるなどの暴行を加えたとして父親の勇一郎被告(42)を傷害の疑いで逮捕しました。10日後には暴行を止めなかったとして母親も逮捕し、心愛さんが日常的に虐待を受けていた疑いがあるとみて捜査を進めました。

その結果、勇一郎被告が心愛さんに胸の骨を折るなどの大けがをさせるなど、たびたび虐待を加えていた疑いがあることがわかりました。

さらに虐待と心愛さんの死因との関連について捜査が進められ、検察は食事や十分な睡眠を取らせず、シャワーを浴びせ続けるなどの暴行を加えたことによって死亡したとして、去年3月、勇一郎被告を傷害致死などの罪で起訴しました。

一方、母親は夫の暴行を止めなかったなどとして傷害ほう助の罪で起訴され、すでに執行猶予の付いた有罪判決が確定しています。

父親の勇一郎被告については来月21日に初公判が行われる予定です。