新型ウイルス肺炎 WHO「緊急事態」判断延期の理由は

新型ウイルス肺炎 WHO「緊急事態」判断延期の理由は
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中国で感染が拡大する新型のコロナウイルスによるとみられる肺炎について、WHO=世界保健機関は22日、専門家による緊急の委員会を開き「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」にあたるかどうか協議しましたが、さらなる情報が必要だとして判断は先送りしました。なぜ判断を先送りしたのでしょうか。

WHO「緊急事態」判断先送りの理由は

WHO=世界保健機関の「緊急事態」は、病気が国際的に拡大し、ほかの国に公衆衛生上の危険をもたらすとみられ、緊急に国際的な対策の調整が求められるときに、WHOのトップ、事務局長が、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として宣言することになっています。このときに主に考慮されるのは、病気がどれだけ広がりやすいのか、その「感染力」と、どれくらいの人が亡くなるのか、致死率などから見ることができる「病原性」の状況です。

たとえば、2009年の当時、新型と呼ばれたインフルエンザのように、致死率は高くはないものの、感染力が強く、世界中に広がる可能性が高い場合や、エボラ出血熱のように、感染力は高くはないものの、致死率が高い感染症については「緊急事態」が宣言されました。

WHOが22日の緊急会合のあとで開いた記者会見によりますと、中国から提供された感染者のデータは、人数は示されているものの、いつ発症したかも分からず、感染の広がりを正確には確認できなかったということです。また、ヒトからヒトへの感染は確認されたということですが、次から次に感染が拡大しているかや、感染した人にどのような症状が出ているかといったデータも、十分ではなかったとしています。

会合では、警戒を呼びかけるために、緊急事態宣言を出すべきだという意見も出され、2つに割れたということですが、さらにデータが必要だとして判断を延期することにしたということです。

「十分見極める必要ある」東北大学 押谷仁教授

これについて、WHOで感染症対策を指揮してきた、東北大学の押谷仁教授は「新型コロナウイルスの感染がほかの国に広がるリスクがどれぐらいあるかということが最も重要なポイントだが、ヒトからヒトへの感染がどのような状況でどの程度起きるのか、まだわかっていないのだと思う」と指摘しました。

そのうえで、2003年に重い肺炎を引き起こす「SARS」が中国やアジア各地で広がったときには、急激に患者が増えて中国各地から国外に感染が広がったとして、「ヒトからヒトへの感染が起きて感染者が急増することが最も懸念される。こうしたことが本当に起きかけているか、十分に見極める必要がある」としています。

「判断は理解できる」川崎市健康安全研究所 岡部信彦所長

また、WHOで感染症対策の委員会のメンバーを務めたことがある、川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「緊急事態宣言は、感染の広がりと病原性の強さ、他国に拡大する影響などを、一定のデータをもとに総合的に判断して出される。今回の新型コロナウイルスは早い段階で見つかっていて、十分なデータが集まっていないため、WHOの判断は理解できる」と述べました。

そして、感染の現状について「感染した人に対する重症者の数は今のところ、それほど多くないといえる」という認識を示したうえで日本での対応については、「感染の広がりや病原性の強さなどの状況を冷静にみて、判断する必要がある」としています。