ヒトなどの動物含む「真核生物」の祖先か 微生物の培養成功

ヒトなどの動物含む「真核生物」の祖先か 微生物の培養成功
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私たちヒトなどの動物を含む真核(しんかく)生物と呼ばれるグループの祖先にあたる可能性が高い微生物を培養することに成功したと、海洋研究開発機構などの研究グループが発表し、生物の進化における謎の一つを解き明かす大きな成果として注目を集めています。
「真核生物」は、細胞の中に核やミトコンドリアなどの器官を持つことが特徴で、ヒトなどの動物や植物もこれに含まれていて、およそ20億年前に微生物が別の微生物を取り込んだことで誕生したと考えられていますが、どのような微生物が元になったのかなど詳しくはわかっていませんでした。

こうした中、海洋研究開発機構の井町寛之主任研究員などの研究グループは紀伊半島沖の深海で採取した泥の中から、真核生物の祖先の可能性が高い微生物を特殊な装置を使って培養することに成功しました。

この微生物は、細胞の核がないなど原始的な微生物の特徴を示す一方で、真核生物だけが持つとされる代謝や運動に関する遺伝子を80以上持っていました。

この微生物は、球の形をしていますが、培養を続けると触手のような長い突起を作ることも分かり、研究グループはこの突起を利用して別の微生物を細胞内に取り込むのではないかと考えられるとしています。

また、この微生物は2つに分裂するのに2週間から3週間程度かかるなど増殖するスピードが極めて遅かったということです。この研究成果はアメリカの有名科学雑誌「サイエンス」が先月発表した去年の十大ニュースにも選ばれ、生物の進化における謎の一つを解き明かす大きな成果として高く評価されました。

井町寛之主任研究員は「12年かけてようやく培養でき、大きな成果を挙げることができた。今後はこの微生物の詳しい生態を調べてさらに生物の進化の謎に迫っていきたい」と話していました。

「真核生物」とは

真核生物は、細胞の中にDNAを膜で包んだ核やミトコンドリア、それに葉緑体などの小さな器官を持つことが特徴です。

およそ20億年前に微生物がほかの微生物を取り込んだことで進化し、代謝を活発にして早く増殖できるようになったと考えられています。

そして多細胞生物を生み出し、臓器や神経系など複雑な構造を持つ生物へと進化できるようになり、私たちヒトなどの動物や植物など大型で多様な生物を生み出していきました。

これまで、取り込まれたことでミトコンドリアや葉緑体になったのが、どのような種類の微生物であったかは推定されてきましたが、取り込んだ側の微生物がどのようなものだったのか詳しく分からず、長く進化の謎とされてきました。

今回の成果は、私たちの体を作る一つ一つの細胞の祖先とみられる微生物を突き止めたということができます。これまで、この進化の謎を解くために、研究者は、微生物の一種がほかの微生物を取り込む現象を研究してきました。

特定の微生物が、別の藻類を取り込んで生かした状態を保ち、栄養分を作らせて利用する現象が知られていたからです。

これは、葉緑体ができる過程に似ていると考えられていますが、生かし続けることはできず、微生物は数日で藻類を溶かして吸収してしまい、再び藻類を取り込もうとします。

微生物が進化して生かし続けることができるようになったものが、真核生物へと進化したと考えられるということです。

培養に成功した微生物とは

培養に成功した微生物は、紀伊半島沖のおよそ水深2500メートルの海底の泥の中から採取されたアーキアと呼ばれる微生物でした。

この種類の微生物は、海底や地中などに分布していることが分かってきましたが、ほとんどが培養することができないため、詳しい性質などを研究することができていませんでした。

今回、研究グループは、下水を処理する方法を応用して、空気に触れずにスポンジの中で微生物を時間をかけて増やす特殊な方法を開発し、培養することに成功したため、今回の成果を挙げることができたということです。

培養できるようになるまで12年間かかったということで、この微生物の遺伝子を調べると、細胞の核の形成に関わる遺伝子や、細胞内の構造を維持するための遺伝子など、真核生物に固有であると考えられてきた遺伝子がおよそ80もあることが分かりました。

また、形も特徴があり、培養の初期では球の形をしていますが、そのまま培養を続けると、形を大きく変えて、触手ような長い突起を複数出す珍しい形状も示しました。

グループでは、この微生物を、泥の中からヒトを作ったギリシャ神話の神、プロメテウスにちなんで、「プロメテオアーカエウム」と名付けました。

この微生物は、特徴的な突起を利用して効率的に別の微生物を取り込む可能性が考えられるということです。

この研究成果はアメリカの有名科学雑誌、「サイエンス」が先月発表した去年の十大ニュースにも選ばれ、生物の進化における謎の一つを解き明かす大きな成果として高く評価されました。

そして、専門家からは、生命の謎を解明するさらなる発見が続くことが予想されるとして、現在は培養できない海底や地下の微生物を培養する研究が活発になるだろうと指摘されています。