横浜DeNAベイスターズはタクシーで何を目指す!?

横浜DeNAベイスターズはタクシーで何を目指す!?
横浜スタジアム、通称「ハマスタ」を本拠地に持つ、プロ野球・横浜DeNAベイスターズ。今シーズンの観客数は過去最高の228万人を超え、球団の急成長ぶりはビジネス界でも注目されています。そんな中、ディー・エヌ・エーは、ことし6月からITを使ったあるビジネスを始めました。それは、「タクシーの運行支援」。人気のプロ球団が、なぜ今、横浜でタクシー事業に乗り出したのか。その理由を球団社長に直撃しました。
(おはよう日本・おはBiz 担当ディレクター 佐藤一樹)

コミュニティボールパーク構想

横浜DeNAベイスターズの球団社長でありながら親会社ディー・エヌ・エーでCOO(最高執行責任者)でもある岡村信悟さん。総務省の官僚から球団社長に転身という異色の経歴で、球団経営を3年連続黒字化する経営手腕を発揮しました。
タクシーの運行支援のビジネスに乗り出した理由を説明する前に、岡村さんは、みずからが目指す「コミュニティボールパーク構想」を知ってもらいたいと切り出しました。
「これからの時代は、『コト消費』と言われるように、ソフトコンテンツが人と人をつなぐインフラになっていくと思うんです。横浜の人たちに多くの声援をいただくベイスターズは、まさに共有するソフトコンテンツになれると感じています。それをスタジアムという閉じた空間に終わらせず、これからは街に広げていくことで街全体がエンターテインメント空間になる『コミュニティボールパーク』をディー・エヌ・エーは作りたいと思っているんです。」

2025年 球場隣を新名所に

ディー・エヌ・エーが目指すスタジアムを中心としたスポーツで街の活性化を図る「コミュニティボールパーク構想」。これを実現する舞台が今、整いつつあります。
横浜スタジアムに隣接する横浜市役所が、2020年に移転します。この地区の再開発に三井不動産など複数の企業と協力しながら、ディー・エヌ・エーも野球というソフトを生かし、パブリック・ビューイングを楽しみながら飲食が出来る空間を提供し、横浜の新名所にしたいと考えています。

新名所のネックは立地

しかし、新名所となるには課題があります。それは、スタジアムの立地です。
横浜には観光地としてすでに集客力のあるエリアが多数あります。
童謡「赤い靴はいてた女の子」で有名な山下公園。海外から大型船が入港する大さん橋。商業施設が入った赤レンガ倉庫。遊園地やインスタント麺のミュージアムがあるみなとみらい地区。

これらは地区が隣接していて、観光客は徒歩での回遊が可能です。

ベイスターズが参加する再開発地域「横浜市庁舎街区」は、JR関内駅と横浜スタジアムの間にあり、ほかの観光エリアから離れてしまっています。

横浜全体を回遊できる仕組み作り

そこで岡村さんが目を付けたのがタクシーです。

市内のおよそ50社のタクシー会社の過去1年半分の乗降記録を収集。この膨大なデータを、インターネットゲームなどで培ったアルゴリズムを使い、乗客がいそうな場所をAIが推定。
タクシーに備え付けのナビにリアルタイムで情報を送信し、空車の時にどの道をどちらの方向から進むべきかドライバーに教えてくれるのです。
取材をした日は平日の昼どきでタクシー利用者が少ない時間帯でしたが、ディー・エヌ・エーが開発したナビの指示どおり、ドライバーがタクシーを走らせると、2人の客を乗せることができました。
みなとみらいで遊んでいた人が、横浜スタジアムにも足を伸ばそうかなと思った時に、タクシーを呼ばなくても、すーっとタクシーのほうから現れる。これが人の回遊を促し、再開発地域への誘導につなげる移動手段になれば、横浜の共存共栄につながる。

その第一歩として、タクシー運行支援ナビを、今年中に事業化するところから始めようとしています。

IT企業だから出来るまちづくり

インターネットというフィールドで事業を展開してきたディー・エヌ・エー。インターネットと現実社会を掛け合わせることで、その価値を高めるものはまだたくさんあるといいます。

例えば、先ほどのタクシーのような輸送の効率化もそうですし、そのタクシーが今後、EV車になって横浜を走り回るようになれば、EV車を街の蓄電池としてインターネットで電力のやりとりをすれば、スマートシティを目指すことも出来ます。
野球の試合も高速通信によるライブストリーミングをパブリック・ビューイングで流せば、球場に入りきらない人にリアルタイムで試合の感動を共有することができる。岡村さんはこのようなボールパーク(スポーツ)を起点とした“まちづくり”のビジネスモデルを2025年には横浜で完成させ、世界に発信したいと話していました。
「横浜って近代の日本をけん引してきた開港の都市なんです。だからスポーツと街とインターネットを融合したまちづくりで先進的な事例をこの横浜で見いだせたらと思っているんです。昔、日本が高度経済成長期に「世界の工場」として世界に貢献しましたが、今度はスポーツと街とインターネットによって「豊かな人間らしい生き方とか、そこに生まれる新たな文化の育て方」などを生み出せるビジネスモデルを世界に輸出し、それが世界中のスポーツのある地域の見本となって広がっていければいいと思います。」

これからの横浜の変化に期待

これまでディー・エヌ・エーはモバゲーで注目されて以降、Eコマース、野球、ヘルスケア、エネルギー、自動運転など一見、投資先が広範囲に散らばっているように感じていました。
しかし、今回の岡村球団社長の話で、それぞれをインターネットとAIでつなげる理想的なスマートシティをめざす考えを聞き、やっと合点がいきました。

唯一心配なのは岡村さんの計画を引き継ぐ後継者が出てくるかです。ネットゲームから得る収益速度と、まちづくりという数十年かけて完成を目指す事業の収益速度は全く異なります。これを我慢できるか、長い目で注目していきたいと思います。
おはよう日本・おはBiz 担当ディレクター
佐藤一樹