国連大使を今月退任 別所氏「ぜひ日本の若者に国連で活躍を」

国連大使を今月退任 別所氏「ぜひ日本の若者に国連で活躍を」
アメリカのニューヨークにある国連=国際連合を舞台に、日本はどのような活動をしているのか。その司令塔を3年4か月余り務めた別所浩郎(べっしょ・こうろう)国連大使が今月退任した。インタビューを通して、日本と世界はどう関わり、今後関わっていくのか聞いた。(アメリカ総局 記者 佐藤文隆)

北朝鮮ミサイル発射に別所氏は

私がニューヨークに赴任して国連の取材を始めたのは、別所氏が着任直後の2016年7月。その頃のニュースといえば、弾道ミサイルを毎週のように発射する北朝鮮一色だった。

国連には、世界の平和と安全を維持するための手だてを話し合う安全保障理事会=安保理という主要機関がある。当時の安保理では、北朝鮮がミサイルをうつたびに、緊急の会合が開かれていた。

別所氏はニューヨークのJFK空港に着いたその足で国連本部に駆けつけ、事務総長に、国連大使として活動するための信任状を手渡した。着任早々、日本の安全保障にとって「そこにある脅威」への対応を迫られていたからだ。
別所氏は当時をこう振り返る。
「当時日本は安保理の非常任理事国で中にいたので、日本の考え方、雰囲気を直接伝えることができ、その結果、安保理で制裁決議が多くできた」
北朝鮮への立場は各国によって異なる。国境を接する中国、ロシアは伝統的な友好国で制裁は北朝鮮を孤立させると消極的。対するアメリカやヨーロッパ、それに日本は制裁によって資金源を断つことで、ミサイルの発射や開発を断念させようと主張し、意見が分かれていた。

「日本の国民はこれを見ている」

別所氏は水面下で動いた。2017年7月、北朝鮮が発射した弾道ミサイルが日本の北海道近海に落下する映像をNHKが伝えた。

別所氏は、ウェブサイトに掲載された動画を、中国やロシアの大使に見せて、日本の立場をこんこんと訴えたという。

「日本の国民はこれを見ている。双方抑えて、抑えてなんてことではないでしょ。これをやめてもらいんだ、と」

米ヘイリー国連大使との連携に力

北朝鮮問題で別所氏がもっとも力を入れたのはアメリカとの連携だ。それがアメリカのニッキー・ヘイリー国連大使。

州知事から抜てきされたヘイリー大使は、アジア外交のエキスパートである別所氏にことあるごとにアドバイスを求めたという。

2017年9月北朝鮮は6度目の核実験を強行。

通常、安保理で制裁決議が採択されるには、1か月から数か月かかるが、ヘイリー大使はより厳しい制裁を盛り込んだ草案をメディアに公表する奇策に出る。

外堀を埋めてから、中国と交渉に臨み、互いに歩み寄って10日もたたずに決議採択に持ち込んだ。

ヘイリー大使は別所氏に「コーロー(浩郎)に夏休みをとらせるために急いだのよ」と声をかけた。

ちなみにヘイリー大使は去年暮れ、自らトランプ大統領に申し出て退任。草の根の政治活動に乗り出し、2024年の大統領選挙に共和党から立候補するとの呼び声もある、期待の政治家だ。「コーロー、ニッキー」と呼び合った仲は日本外交の財産かもしれない。
別所氏もヘイリー大使を高く評価する。
「常に日米で連絡をとりあった。その中で、日本の考え方、次の一手はこうだという意見をひんぱんにアメリカ側に伝え、アメリカもよく動いてくれた」

自国第1主義と多国間主義 日本の生きる道は

しかし、北朝鮮で日本の頼みだったアメリカは、日本の国連外交にとって心配のタネでもある。

「国連はお茶を飲んでおしゃべりばかりしているところだ」と批判したトランプ大統領の存在だ。

国連がかかげるマルチラテラリズム=多国間主義に距離を置き、地球温暖化対策のパリ協定からの離脱の手続きを進めて、自国第1主義を突っ走る。
別所氏は日本の生きる道は、日米同盟を基軸にしつつ、国連をいかに活用するかだと話す。
「日本は特に安全保障面では、力で一方的に現状変更することを認めない、法の支配が重要だという立場だから、国連の多国間主義は、かけがえがない。大きな影響力を及ぼす国、小さな国のすべてを取り込む努力が必要だ。世界が平和にならなければ自国の平和もないという考え方で努力していくことが日本の生きる道ではないか」

「日本は国連でもっと大きな役割果たせる」

最後に別所氏に聞いたのが、次の世代へのメッセージ。

別所氏は任期後半、日本の国連代表部をあげて、日本人が国連に就職したり、より高い地位につけるよう、国連への働きかけをしたり、希望者への情報交換会を開いたりした。

日本は、経済規模に応じて、国連に加盟国が支払う分担金の額で、アメリカ、中国に次いで3位だが、それに見合う日本人の職員数には遠く及ばない。
少年期をニュージーランドで過ごした別所氏は、若い世代にこうエールを送る。
「日本は国連の中でもっと大きな役割を果たせるし、日本人の一般の人たちが国連で活躍することはもっともっとできるのではないかと思う。最近日本の若者は留学しなくなっている。しかし、国際社会に目を向けて、外に飛び出していけば、日本人は期待されているし、国連の中でも高く評価されている。国連の軍縮担当の事務次長は日本の女性だし、(中満泉氏)、それ以外にも大変熱心に活動している人が多い。ぜひ日本の若者が、国連、そして国際社会で活躍することを、自分の将来の1つとして検討してほしい」
日本は来年東京オリンピック・パラリンピックを迎え、2022年には12度目の非常任理事国の選出を決める選挙に挑む。

ますます世界とつながる中で、日本人がより輝きを放つことができるか。

別所氏がここニューヨークで大切にしたという「伝える力と受け止める力」をいかに磨くか、わたしたち1人1人に問われているように感じた。