女性はメガネ禁止?

女性はメガネ禁止?
「男はいいのに女はダメっておかしくない?」
今、ネットである話題が議論を呼んでいます。特定の仕事で女性だけメガネを禁止しているというのです。そんなこと本当にあるの?

(ネットワーク報道部 記者 鮎合真介 目見田健 /青森局 記者 辻脇匡郎)

ネット上で大きな議論に

今、議論になっている“女性のメガネ禁止”。
ネット上では、
「女性がメガネ禁止の職場があるのは驚き」
「職場でのメガネ禁止は差別」
「そんなこと言われたらそこの職場辞めるしかない」
「コンタクトレンズは合わない人もいるし、経済的な負担も大きいけど、会社が経費を負担してくれるの?」
といった批判的な声が多く見られました。

一方で、「この職業だったらそうだよね、と納得して、引き下がってしまう」などといった声も見られました。
ネットへの書き込みを見ると、メガネの着用が仕事で認められなかったという経験談は、企業の受付やエステティシャン、飲食店の接客、保育士など、さまざまな職種に及んでいるようです。

理由としては「客にメガネが落ちたら危ない(エステティシャン)」のようなものもありますが、「冷たい印象を与える(受付)」「暗い印象になる(リラクゼーション)」などといった首をかしげたくなるようなものがあります。

メガネかけないのは当たり前?

こうした中、“女性のメガネ禁止”を理由にアルバイトを辞めざるを得なかった女性に話を聞くことができました。
小学生からメガネを着用しているという20歳の女性は去年、高校卒業を機に和食の飲食店でアルバイトを始めようとしました。
面接の際もメガネをかけて行きましたが、面接を担当した店長がメガネをかけていたこともあるのか、指摘されることはなかったと言います。

ところが後日。
この店の制服である着物の着付けの練習に行った際のことでした。
店の女性の担当者から「メガネは禁止」と伝えられました。
理由を聞くと、「料理を提供する際にメガネが曇ること」「着物にメガネがふさわしくないこと」の2つを挙げられたということです。
1つめの理由はなんとか受け入れたものの、2つ目の理由には納得がいかなかった女性は、「店長がメガネをかけているのになぜ自分はダメなのか」尋ねました。

すると、「男性はスーツだから問題ない」という返答。
「それではメガネが曇ることを解決できないのではないですか」と言うと、怒ったような口調で「女性が和服を着る際はメガネをかけないのが当たり前だ」と言われたということです。

女性はコンタクトをするとアレルギーが出やすい体質のため、結局、バイトを辞めることにしました。
(20歳の女性)
「正直、とてもショックでした。和服にメガネが合わないという理屈も全く理解できませんでした。“女性のメガネ禁止”ということにこだわるのが女性だったことも悲しくなりました」

客室乗務員は…

日本では女性の仕事という印象がある客室乗務員も、メガネの着用は禁止になっているという書き込みも目立ちます。
本当にそうなのか?
国内の大手航空会社の日本航空と全日空に聞いてみました。

すると両社とも社内規定で、女性だけでなく男性の客室乗務員も、業務中にメガネをすることを禁止していました。
理由を聞くと「安全上の理由から」。

どういうことなのか、さらに詳しく尋ねると、例えば機外への脱出といった緊急時に、客室乗務員が何らかの理由で自分のメガネを落とすなどして破損させてしまうと、乗客の避難誘導などの業務に支障が出るおそれがあるからだそうです。

全日空の広報担当者によると、緊急時には乗客にもメガネを外してもらうそうです。
「それだと逆に前が見えなくなって危ないのでは…」と思いましたが、同じ安全上の理由からということでした。

NHKの女性アナウンサーは?

「NHKも男性アナウンサーはメガネをしているけど、女性アナウンサーはメガネをしていないじゃないの。ルールがあるの?」

そういう声もあると思って、調べてみました。
すると、ホームページに載っている女性アナウンサーで、メガネをかけている人は…確かにゼロ。
もしかして“女性はメガネ禁止”の決まりがあるのか、アナウンス室に聞きました。
答えてくれたのは、ふだんメガネを着用するという井上あさひアナウンサー。
メガネ禁止のルールは?
(井上あさひアナウンサー)
「確認もしてみたんですが、ルールはないです。私も放送の時はコンタクトレンズですが、それはメガネに度が入っていて顔の輪郭がゆがむので、顔の印象が変わってしまうとなんとなくよくないのかな、素顔に近い印象で映ったほうがいいのかなと思うからですかね。男女の差はあまり意識しないですね。素顔をまずは認識してもらう意味もあるのかなと思っています」
率直に答えてくれました。
さらに、「女性はメガネ禁止?」の議論について。
(井上あさひアナウンサー)
「『何でメガネかけちゃいけないんだっけ?』という疑問がわいているならすてきなことですね。そういう発想の人がいるんだなって私はうれしく思います。#KuTooもそうですけど、さまざまな仕事で『ダメな理由は本当ですか?』というところから、議論が起こるのはいいと思います。無難なほうを選ぼうと避けている人もいると思うのでファッションを楽しむ中で少しでも前向きに働けるようになったらいいなと思います」

メガネは個性の表れ

メガネといえば福井県鯖江市。
メガネのフレームの国内シェア90%以上を占めるこの町の受け止めは、やはり前向きでした。
(鯖江市 秘書広報課)
「禁止する会社にも事情はあるんでしょうが、男女で差があるのはおかしいと思います。メガネは、その人の個性を表すものでもあるので」
「メガネ=暗い・冷たい」というイメージ?
そんなイメージは鯖江ではありません。
ここでは、メガネをつけた状態でのメイク方法などを実演するイベントも開いています。
さらに「和服にはメガネは合わないという考えもあるようですが」と質問してみたところ、「そんなことはないですよ」と即答。
その動かぬ証拠としてあげてくれたのが写真の鯖江市の成人式。
鯖江市では、成人式のときに「個性を大切に」という思いも込めて新成人一人一人にメガネを贈るそうです。
成人式に出席する女性に着物でも似合うメガネを贈っているということです。
(鯖江市 秘書広報課)
「個人の偏見や昔から続く思い込みもあるのかもしれません。しかし、今はファッション性も高いですし、時と場合によってメガネを使い分ける人も増えてきていると思います」

「無意識の偏見」の一つの形

女性のメガネ禁止をめぐってさまざまな議論があることについて、ジェンダーなどに詳しいダイバーシティ・コンサルタントのパク・スックチャさんは根底に性別にまつわる「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」の存在があると指摘します。

「無意識の偏見」とは、男性はこうだろう、女性はこうだろうと、自分の育った環境や経験に基づき気付かないうちに持つようになった物事への見方や考え方のことです。
(パク・スックチャさん)
「同じ事柄に対して、男性はよくて女性はダメというのは明らかに差別に当たります。女性は『きれいでなければならない』とか『見栄えがよくないとダメ』といった容姿でどうしても判断されがちです。そうした価値観は日本の社会にかなり深く根づいていて、女性自身でさえバイアスに気付かず、当たり前のことだと思っている人が少なくありません。海外のある航空会社では、女性の客室乗務員に『女性らしさ』を義務づけることを廃止し、職務中はノーメイクでもよいとした例もあります。賛否両論があることはいいことで、誰かが言い始めることでムーブメントが起き、無意識だった偏見が意識化されるきっかけになります。そうやって変わっていくことが大事だと思います」