WBSS優勝の井上尚弥 一夜明け会見「最強を証明していく」

WBSS優勝の井上尚弥 一夜明け会見「最強を証明していく」
ボクシングでその階級の最も強い選手を決める「ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ」で優勝した井上尚弥選手が、決勝から一夜明けて会見し、「楽しかった。ここまで来たら最強を証明していくだけだ」と今後に向けて決意を示しました。
「ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ」は、異なる団体の世界王者などがトーナメントで争って、その階級の最も強い選手を決める大会です。

バンタム級2団体統一チャンピオンの井上選手は、7日夜の決勝で、5階級制覇を果たしたフィリピンのノニト・ドネア選手を相手に、苦戦しながらも判定勝ちしこの階級の初代王者となりました。

井上選手は、試合から一夜明けた8日横浜市で会見し、右目の上に5針を縫ったという傷痕が残る顔について「心地いいですね。やっとボクサーになれたというか、この傷がうれしい。すごくハラハラしたと思うが、自分は殴りあってこそボクシングだという気持ちがあるので楽しかった」と激闘を振り返りました。

序盤、相手のパンチで目の上が切れて出血し、視界がぼやけるというアクシデントにも見舞われましたが、「うまく目の状態を隠しながら戦えた。自分の冷静さとゲームプランがかみ合った」と、ピンチの中での試合運びをみずから評価しました。

第11ラウンドにボディーブローでダウンを奪った場面については、「前半は相手の左フックを警戒してボディーを打てなかった。終盤にさしかかり、タイミングを見て打った。完全にねらっていた」と振り返りました。

注目される今後については、「ここまで来たら最強を証明していくだけなので、今のバンタム級で残り何試合やるか分からないが、充実した戦いをしていきたい」と話し、より強い相手との試合を希望していました。

アクシデント乗り越え「世界最強」を証明

「ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ」でバンタム級の初代王者となった井上尚弥選手。決勝は、右目の上を切る初めてのアクシデントを乗り越え、「世界最強」とともにみずからの成長を証明する戦いぶりでした。

「打たれ強さは証明できたかな」、井上選手は決勝を終えたあと不敵な笑みを見せながらそう語りました。

26歳の井上選手の最大の魅力は、軽量級としては飛び抜けたパンチ力。今大会、1回戦は1ラウンドでノックアウト、準決勝では2ラウンドでテクニカルノックアウト勝ちし、世界王者や元世界王者を早々に退けて圧倒的な強さを見せつけてきました。

多くのメディアが井上選手の優位を伝える中での決勝は、5階級制覇を成し遂げた36歳のノニト・ドネア選手と対戦。「フィリピンのせん光」と呼ばれる強烈な左フックの使い手でした。

プロ46戦目でテクニックと経験値の高さを兼ね備えた難敵に、19戦目の井上選手は、これまでにないほどの苦戦を強いられました。

第2ラウンド、相手得意の鋭い左フックに顔面を捉えられ、右目の上を切って出血しました。プロ入り後初めて相手のパンチで切り「ドネア選手が二重に見える」という状態になったのです。

このアクシデントで距離感がつかめず、特に右ストレートを的確に当てることができなくなりました。相手のパンチに合わせてカウンターを打つことも難しくなり、逆にパンチを受けてぐらつく場面が何度もありました。それでも井上選手は、全く焦りを見せませんでした。

「倒すのは難しい。ポイント重視でいこう」とみずからが置かれた状況を冷静に判断し、ガードを高く上げて攻撃をしのぎつつ、細かいパンチで相手の足を止めていきました。

そして終盤には再びペースを上げ、第11ラウンドに、これまでの戦いで何度も相手にひざをつかせてきた強烈な左のボディーブローを決めてダウンを奪い、判定勝ちにつなげたのです。

アクシデントの中で勝利をもぎ取った井上選手には、相手のパンチに屈しない打たれ強さや、逆境に立ち向かう気迫といった短いラウンドの試合では見ることのできないすごみが感じられました。

ボクシングの団体が複数あり「最も強い選手は誰か」という素朴な疑問に答えるため始まった「ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ」。

井上選手は、5針縫うほどのアクシデントを乗り越えて得た勝利で、「世界最強」の実力とともにみずからの大きな成長も証明しました。

試合後、アメリカの大手プロモーション会社と複数年の契約をしたことが発表され、海外への進出を視野に入れています。今や世界が最も注目するボクサーの1人となった“モンスター”の今後の活躍に大きな期待がかかります。