マラソン・競歩の会場 札幌移転検討 各地で驚きや歓迎の声

マラソン・競歩の会場 札幌移転検討 各地で驚きや歓迎の声
東京オリンピックの開幕まで10か月を切る中、マラソンと競歩の会場を札幌に移す検討が始まりました。関係者からは「唐突だ」といった驚きの声や、「涼しいので走りやすい」といった歓迎の声が上がっています。

東京都小池知事「かなり唐突な話」

東京都の小池知事は17日午前、都庁で記者団に対し、「かなり唐突な話で、マラソンコースとなる各自治体は盛り上がって準備していたという事実もある。これから調整委員会が開かれるので、この場でどのような形がベストなのかをハードとソフトの両面で話し合っていきたい」と述べました。

また小池知事は「変更を考えているところから説明をきちんと聞かなければならない。東京都としてもちろんアスリートファーストは重要だと思っているが、そういう中でどのようにして東京大会を成功させていくかを大きく捉えて進めていきたい」と述べました。

銀座では賛否

マラソンのコースとなっている東京・銀座で聞きました。

20代の男性は「突然のことでびっくりしました。沿道に見に行きたいと思っていたので、変わってしまうのであれば残念です」と話していました。

30代の男性は「マラソンの観戦チケットを持っている人がかわいそうだと感じます。会場を変更するにしても、もっと早く協議をするべきだったのではないか」と話していました。

一方、70代の女性は「涼しい札幌で開催することに賛成です。東京は暑すぎるのでアスリートファーストで考えるのであれば変更するべきだと思います」と話していました。

浅草の商店街では戸惑い

マラソンのコースとなっている東京・浅草の商店街では戸惑いの声が聞かれました。

このうち、お茶の販売店の店主は「世界に向けてさらに浅草を知ってもらえるチャンスだと思っていたのでショックです。しかたないところもありますが東京でやってほしいというのが本音です」と話していました。

またお菓子を販売する店の店主は「マラソンの開催も見据えてミストを噴射する装置をアーケードに取り付けるなど、商店会でも準備をしていました。楽しみにしていたので変わってしまうとすれば残念です」と話していました。

浅草で人力車を引く仕事をしている20代の男性は「マラソンが行われる横で仕事をするのも楽しみだったので、さみしい気持ちはありますが、選手のことを考えたら札幌でもいいと思います」と話していました。

北海道では

北海道の鈴木知事は東京の永田町で記者団に対し「組織委員会、IOC、東京都、競技団体がしっかり議論してほしい。議論を見守りつつどのような結論が出ても東京大会を成功させないといけない。札幌市とも情報共有をし、きょう連絡会議を開くことにした。東京大会の成功に向け万全の体制で臨みたい」と述べました。

札幌市長 歓迎の意向

札幌市の秋元市長は17日午前、報道関係者の取材に応じました。

この中で秋元市長は「開幕まで1年を切った中、IOCから札幌という具体的な名前が出たことは驚きと同時に光栄なことだ。札幌はサッカーの会場も担っているので東京2020年大会の成功に向けて、最大限協力をしていきたい」と歓迎する意向を示しました。

そのうえで「北海道や札幌市、警察などの関係機関との実務者レベルの協議の場を設けて準備を進めていきたい」と述べIOCが今月30日に組織委員会や東京都などと具体的な議論を行うのを前に、準備に着手する考えを明らかにしました。

また、札幌市が2030年に招致を目指す冬季オリンピック、パラリンピックとの関連にも触れ「大会運営能力などオリンピックを開催するのにふさわしいと評価されれば2030年への道につながると思う」と述べました。

札幌市民は…

札幌市中心部の大通公園を歩いていた40代の女性は「涼しいので選手も走りやすいと思います。札幌で行われたらうれしいしありがたいとは思いますが、これまでの計画が変わってしまうので心配です」と話していました。

また豊平川沿いを走っていた市民ランナーの50代の男性は「東京に見に行こうと考えていたので札幌でやってくれたらうれしいです。東京よりは確実にコンディションはいいと思います」と話していました。

また、別の60代の男性は「選手たちは東京の暑さに合わせて練習をしてきたはずで、戸惑っていると思います。東京の暑さは初めから分かっていたことなので東京都などがもっと早くから対応を考えておくべきだった」と話していました。

札幌陸協「北海道マラソンのコース軸に検討を」

札幌陸上競技協会は「開催が決まれば、北海道マラソンのコースを軸に検討することが望ましい」との見解を示しました。

北海道マラソンを主管している札幌陸上競技協会の志田幸雄会長は17日、NHKの取材に応じ「通常、マラソン大会の開催には1年間の準備期間を要するがオリンピックまで1年を切っているし、これからは雪も降る。開催が決まれば実績がある北海道マラソンのコースを軸に検討を進めていくのが望ましい」という見解を示しました。

また「記録を重視するのであれば、より直線的な走りやすいコースへの変更が必要になる可能性もある。アスファルトについても寒冷地仕様の固い素材なので選手に負担の少ない素材への変更も必要になるかもしれない」と開催に向けた課題も示しました。

競歩については「これまでに札幌では大きな大会を開催したことがないので、現段階ではどこでどのように開催するのかイメージが持てない」と懸念を示しました。

一方で志田会長は「開催が決まれば北海道の陸上競技にとって競技力向上のチャンスであり大変喜ばしいことだ。協会として、要請があれば、ランナーにとっても観客にとっても記憶に残る大会になるよう全面的に協力したい」と話していました。

北海道マラソンとは

北海道マラソンは国内では珍しく8月下旬に開催されている日本陸上競技連盟公認の大会で、昭和62年に始まり、ことしまでに33回行われています。

札幌市中心部の大通公園がスタートとフィニッシュの地点になっていて、繁華街の「すすきの」や時計台、北海道大学の構内などを走る特色あるコースが人気を呼び1万人以上が参加しています。

おととしからは東京オリンピックの代表選考レースとなっていた「MGC=マラソングランドチャンピオンシップ」に出場するランナーの1次選考レースにもなっていました。

陸連「運営面に多くの課題」

日本陸上競技連盟の尾縣専務理事はNHKの取材に対し、厳しい暑さと湿度の中で先月から今月にかけてカタールのドーハで行われた陸上の世界選手権を踏まえ「冷静に受け止めている。ドーハでの問題があったので何らかの対応が必要だと思っていた。ただ札幌に移すというのは想定を超えていた」と話しました。

また、札幌に移ることが決まった場合のコースの選定などについては今後、大会組織委員会と国際陸上競技連盟、そして日本陸連の3者で協議していく
見通しを示しました。

そのうえで「選手がしっかり走ることができるコースを選べばいいのでコースの選定に大きな問題は無いと考えるが解決しないといけない課題はたくさんある。これまでボランティアや審判は東京でやることを前提にトレーニングしてきたので札幌でも同じようにできるのか、また1番の課題は警備だと思っている」と述べ、運営を支えるスタッフの準備や警備などの運営面に乗り越えるべき多くの課題があるという見解を示しました。

瀬古利彦氏「大変驚いた」

日本陸上競技連盟の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、「東京オリンピックのマラソン、競歩の開催地変更の検討に関しまして、突然の発表であったため大変驚きました。詳細や方向性については、今月30日からIOCと大会組織委員会による協議が予定されているようなので、その後の動向を注視していきたいと考えております」とコメントしました。

橋本五輪相「しっかり注視」

橋本オリンピック・パラリンピック担当大臣は、横浜市で記者団に対し、札幌に会場を移す場合でも大会の成功に向けて東京都や組織委員会と協力していく考えを示しました。

この中で橋本オリンピック・パラリンピック担当大臣は「この問題はIOC、国際陸上競技連盟、東京都、組織委員会などで議論を重ねて決定していくことになるのでしっかり注視していきたい」と述べました。

そのうえで「どのような決定になっても政府としてはサポートし、成功に向けてしっかりと取り組んでいく」と述べ、札幌に会場を移す場合でも、大会の成功に向けて東京都や組織委員会などと協力していく考えを示しました。

また橋本大臣は「与えられた環境の中でやっていくことは、アスリートに求められる力量でもあるので、どの場所で競技が行われても、自分自身の力を全力で発揮できるよう切り替えてもらえればいいと思う」と述べました。

スポーツ庁長官 一定の理解

スポーツ庁の鈴木長官は「選手や観客など関係者の健康と安全を第一に考えて運営されることが望ましい。選手がベストを尽くして競技する姿を見たい」と話しました。

また、大会の開幕まで1年を切って会場の変更が検討されることに一部で困惑の声が上がっていることについては、「本番で事故が起きるよりは、今議論するほうがいいということだろう。カタールのドーハで開かれた陸上の世界選手権の様子を見て検討することになったのではないか」と一定の理解を示しました。

増田明美氏「早く決定を」

中東カタールのドーハで行われた陸上の世界選手権を現地で取材したスポーツジャーナリストの増田明美さんがインタビューに応じ、マラソンや競歩で棄権が相次いだドーハの環境について「現地は暑かったです。海沿いだから湿度もあって、沿道で応援していてもサウナの中に入っているような感覚がするぐらい暑かったです。あの暑さや湿度を感じて、来年のオリンピックは大丈夫かなと、東京をイメージせざるをえなくなりました」と振り返りました。

気温や湿度が東京よりも低くなる札幌でのレースについては「涼しければアフリカの選手やスピードのある選手が、けっこう楽に行ってしまうんです。暑いと前半自重しますので、日本選手がメダルを取れるかどうかとなると、東京のほうが有利だと思います」と、日本選手にとっては厳しくなるという見方を示しました。

そのうえで、選手のことを第1に考えるアスリートファーストの視点について「健康面だけを考えると札幌は賢明かなと思いますが、MGCで本番とほぼ同じコースを全力で走ることができて有利だなと思っている選手が、またゼロからのスタートになることは喜べない部分もあるかもしれないですね。札幌に変わる場合でも早く決定してあげないと、どんどん準備期間が短くなってしまうので、選手にとっては早くどっちなのかというのを決めるのがいちばんだと思います」と話し、競技に集中できる環境を早期に整える必要性を指摘していました。