諫早湾干拓 相反する2つの義務負う国 裁判で打開ねらったが…

諫早湾干拓 相反する2つの義務負う国 裁判で打開ねらったが…
長崎県諫早湾の干拓事業をめぐる裁判で、最高裁判所は13日、高等裁判所で審理をやり直すよう命じました。この事業をめぐっては、国に開門を命じる判決と、開門を禁止する決定などが出されていて、国は、相反する2つの義務を負うこの状況を打開しようと、今回の裁判で、開門を命じた確定判決を、事実上、無効にするよう求めていました。

開門する?しない?ねじれた司法判断

諫早湾は、九州の有明海の西側にあります。現在、干拓地にはおよそ670ヘクタールの農地があり、長崎県によりますと、35の農業法人などが、たまねぎやレタスなど、30を超える品目を生産しています。

干拓事業の構想は、戦後すぐの昭和27年に持ち上がりましたが、目的は、米作りや畑作、工業用地など変遷を重ねます。現在の事業は、防災や農業が目的で、昭和60年に動き出しました。平成9年、全長7キロの潮受け堤防によって、湾の3分の1にあたる3550ヘクタールが閉め切られました。
その後、開門の是非をめぐって、開門を求める漁業者と、開門に反対する農業者が、それぞれ国相手に裁判を起こし、いずれも勝訴。司法の判断がねじれた状況になっていました。

漁業者らは、「漁業被害があった」と主張。開門を求めて裁判を起こしました。特産の二枚貝「タイラギ」が不漁となったほか、養殖のりが色落ちし、不作となった年がありました。

平成22年に福岡高裁は、1審に続いて、堤防を閉めきったことと、漁業被害との因果関係を認め、3年以内に開門するよう国に命じました。この判決は、当時の民主党政権が上告せずに確定し、国に開門の義務が生じました。

これに対し、農業者らは、「開門すれば干拓地の農業に被害が出る」と、国を相手に開門を禁止するよう仮処分を申し立てました。平成25年、長崎地裁は訴えを認め、国に開門を禁止する決定を出しました。

これにより、国は「開門しなければならない」「開門してはならない」という相反する2つの義務を負うことになりました。

国は、3年以内に義務づけられていた開門を先送りにします。開門してもしなくても、どちらかの義務に違反して制裁金が課せられる状況になり、国は、開門の義務に従わず、制裁金を支払いました。

こうした状況を打開するため、国が開門を命じられた平成22年の確定判決を、事実上無効にするよう求めたのが今回の裁判です。

国は、おととし、開門しない方針を明確にしました。開門しないことを前提に、漁場の回復を目指す100億円規模の基金案を示しましたが、和解協議は決裂しました。

去年7月、福岡高裁は、「漁業者が開門を求める前提となる漁業権はすでに消滅している」として、確定判決を事実上、無効にする判決を出し、漁業者側が上告していました。