ローマ法王が11月に訪日 被爆地の広島と長崎へ

ローマ法王が11月に訪日 被爆地の広島と長崎へ
ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王がことし11月23日から26日にかけて日本に滞在し、被爆地の広島と長崎を訪れることになりました。ローマ法王の訪日は38年ぶりで、核兵器の廃絶を訴えるフランシスコ法王が被爆地でどのようなメッセージを打ち出すか注目されます。
バチカンにあるローマ法王庁は13日、フランシスコ法王がことし11月23日から26日にかけて日本を訪問すると発表しました。

フランシスコ法王は11月23日にタイから東京に到着し、24日に被爆地の長崎と広島の両市の平和公園をそれぞれ訪れて犠牲者を悼むほか、長崎ではミサも行う予定です。

また、25日には東京で天皇陛下との会見や安倍総理大臣との会談が予定されているほか、東京ドームで大規模なミサを開き、翌26日にバチカンへ帰国するということです。

ローマ法王が日本を訪れるのは1981年のヨハネ・パウロ2世以来38年ぶりとなります。

6年前に就任したフランシスコ法王は、核兵器の脅威を繰り返し訴え、バチカンもおととし、いち早く核兵器禁止条約を批准するなど核廃絶に向けて積極的な取り組みを続けています。

被爆地への訪問でどのようなメッセージを打ち出すか注目されます。

「焼き場に立つ少年」世界に発信

フランシスコ法王は若い頃、日本へ宣教師として派遣されることを希望するなど日本に強い関心を持っているとされています。

去年1月には、ローマ・カトリック教会が定める「世界平和の日」に合わせて、原爆が投下された直後の長崎で死んだ弟を背負った少年の姿を撮影した写真に「戦争がもたらすもの」というメッセージを添えたカードを配るよう指示しました。

バチカンを長年取材してきたジャーナリストのルイス・バディジャ氏は「フランシスコ法王が原爆の写真を配ったのは表面的な行動ではない。今回は公の場だったが過去には個人的にも配っていた。日本の人々が原爆で受けた苦しみを常に真剣に考えてきた」と述べて、核兵器の廃絶を真摯(しんし)に思っていると指摘します。

そのうえで「これまでの法王と同じメッセージを繰り返すために広島と長崎に行くわけではない。フランシスコ法王は自分ができる新たな取り組みや姿勢を示すと思う」と述べて、日本では核廃絶に向けて具体的なメッセージを打ち出す機会になるという見方を示しています。

質素な暮らしと気さくな人柄 外交でも存在感

フランシスコ法王は82歳。イタリア北部からアルゼンチンに移住した家族に生まれ、6年前に中南米出身の初めての法王となりました。

また、16世紀に日本に初めてキリスト教を伝えた宣教師、フランシスコ・ザビエルらが創設した修道会、イエズス会から選ばれた初めての法王です。

就任してからは移民や難民の問題や地球温暖化などに対して積極的に発言し、地球規模の課題に取り組む姿勢を見せてきました。

さらにバチカンの改革を進め、カトリック教会を揺るがしてきた聖職者による性的虐待の問題では各国の司教を集めて対策を話し合う会議を開き、虐待の事実を知った場合は司教に通報することを義務づけるなど新たな対策を導入しました。

また長年、司教の任命権をめぐって対立し、いまだにバチカンと外交関係のない中国とは去年、司教の任命方法で暫定合意し大きな波紋を呼びました。

このほか長年、対立を続けてきたアメリカとキューバの国交正常化にむけて仲介をはたすなど外交の舞台でも存在感を示しています。

フランシスコ法王は質素な暮らしを選ぶ姿に加えて、気さくな人柄とユーモアでも知られています。

ローマ法王庁の公式メディアバチカンニュースのアンドレア・トレニアッリ編集長は、根底には弱い立場の人たちに向けられるまなざしがあると指摘します。

トレニアッリ編集長は「フランシスコ法王は慈しみを強く掲げてきた。人々の苦しみに寄り添い、とりわけ貧しい人たちに目を向けている」と述べ、経済的に恵まれない人や政治的な圧力のもとで声を上げられない人たちなどに光を当てるのがフランシスコ法王の特徴だとしています。

法王訪日「すべての命を守る」

ローマ法王庁は、フランシスコ法王の訪日にあたってそのテーマを発表し、一人一人の尊厳だけでなく環境も保護していく「すべての命を守ること」だとしています。

この中で、すべての生命の住みかである地球は人類によって傷つけられ痛みに苦しんでいて貧しい人々を始め世界で取り残された人々の苦しみを増しているとしています。

現代の日本も例外ではなく経済や環境、そして近隣諸国との関係に加えて平和と暮らしにかかわる多くの課題があるとし、自然災害や原発事故からの復旧はいまも続く問題だと指摘しています。

そのうえで日本のカトリック教会がこうした課題に取り組んでいるとして、フランシスコ法王の訪日はキリスト教が平和のために取り組み、祈る決意を改めて示す機会だとしています。

広島県被団協「胸が躍るような気持ち」

ローマ法王が被爆地の広島や長崎を訪問することについて、広島県被団協の箕牧智之理事長代行は「ローマ法王が来られると聞いて被爆者は胸が躍るような気持ちです。私たち被爆者に寄り添ったことばを世界に発信してほしい」と話しています。

また、箕牧さんは「核兵器禁止条約が採択されてから世界がよい方向に進むように見えたが、最近は核開発がエスカレートしている。ローマ法王が広島で話すおことばを世界の政治家は重く受け止めてほしい」と述べ、ローマ法王の来日をきっかけに核兵器廃絶の取り組みが進むことへの期待感を示しました。

長崎の信者「大変ありがたい」

キリスト教が禁じられていた江戸時代に、ひそかに信仰を守った人たちが住んでいて、原爆による被害も大きかった長崎市の浦上地区のカトリック信者のひとりは、「はるばる足を運んでいただいて、大変ありがたい。この機会に、浦上の歴史を知ってほしい」と話していました。

また、別の信者は、「いつかは法王が来るという希望を抱いて遠い祖先が信仰を続けてきたと聞いている。その法王が来て下さることはすばらしいことだ」と話していました。

また、被爆者でもある信者は、「戦争のない世の中がいちばんです。長崎から平和のメッセージを出してほしい」と期待していました。

長崎県知事「心から歓迎したい」

ローマ法王が長崎を訪れることが発表されたことについて、長崎県の中村知事は「県民とともに心から歓迎したい。被爆地・長崎から世界に向けて核兵器廃絶・世界平和の実現を訴えていただきたい」と話していました。

菅官房長官「被爆の実相の発信行う上でも重要」

菅官房長官は、午後の記者会見で、「今回の訪日は、2014年に安倍総理大臣がバチカンを訪問し、法王に謁見したことを踏まえたものだ。今回の法王の訪日が、日本とバチカンの間の二国間関係を一層強化する契機となることを期待する」と述べました。

そのうえで「国際平和を希求するローマ法王が、被爆地の長崎と広島を訪問されることは国際社会に対して、被爆の実相に関する正確な発信を行う上でも重要だ」と述べました。

長崎市長「発信は大きな力」

長崎市の田上市長は「『長崎を最後の被爆地にする』というメッセージを発信してほしい。被爆体験を話せる被爆者が少なくなる中、いろんな国の人や立場の人が被爆者と同じ平和へのメッセージを発信していくことが重要で、ローマ法王が市民社会に対して発信することは大きな力になる」と述べました。

また、去年、世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に関連して「潜伏キリシタンという世界でも非常にまれな歴史の意味や価値を話していただき世界に発信する機会にしてほしい」と述べました。

被爆者団体「平和に向け発信を」

長崎市で4歳の時に被爆した被災協=長崎原爆被災者協議会の田中重光会長は「ローマ法王は核兵器の開発や地域紛争の問題に言及していて被爆者とも多くの共通点がある。ぜひ、平和にむけたアピールを被爆地から発信してほしい」と話していました。

ローマ法王庁 訪日のロゴ発表

ローマ法王庁はフランシスコ法王の訪日のロゴも発表しました。

ロゴには「PROTECTALLLIFE」と英語で書かれ、赤色の円の中に描かれた3つの色とりどりの炎のイラストと、右手をあげたローマ法王の姿をかたどったイラストが組み合わされています。

3つの炎のうち、赤色の炎は日本でキリスト教の礎を築いた殉教者を、緑色の炎は豊かな日本の自然を意味していると説明しています。

ロゴは、日本の土産物店などが関連グッズを販売する際の商標としても利用され、その売り上げは今回の訪日の経費に充てられるということです。

大司教「核兵器廃絶のメッセージを」

被爆者でもあるカトリック長崎大司教区の高見三明大司教は、「法王が来られることが確定してほっとしている。戦争と平和、環境などさまざなま問題について、大きな示唆になるようなメッセージを期待している。核兵器廃絶の強いメッセージを長崎から発したいと話していたことが実現することを期待している」と話していました。