失意からつかんだ初のメダル パラ競泳 辻内彩野

失意からつかんだ初のメダル パラ競泳 辻内彩野
東京パラリンピックの代表選考を兼ねてロンドンで開かれているパラ競泳の世界選手権。日本の女子で最初のメダルは、100メートル平泳ぎの視覚障害のクラス、辻内彩野選手の銅メダルでした。辻内選手は、2年前にパラ競泳に転向したばかり。前日の失意レースから立ち上がり、つかみとったメダルでした。

日本女子、期待の若手

22歳の辻内選手は小学3年生で水泳を始め、高校では全国大会にも出場した実力者でした。しかし、大学1年のときに視力低下や視野の異常を生じる進行性の難病「黄斑ジストロフィー」と診断され、パラ競泳はまだ本格的に取り組みだして2年目です。

それでも去年のアジアパラ大会では4つの銅メダルを獲得するなど実力をつけ、初出場となった今回の世界選手権でもメダルを目指していました。

まさかの失速

そんな辻内選手が自信を持って臨んだ種目が100メートル自由形でした。
ところが、大会3日目に行われた決勝は、残り20メートルの勝負どころでスタミナが切れて大きく失速、後半の粘りを発揮できないまま4位でメダルを逃しました。

レース後に涙を見せてくやしがった辻内選手は、この負けを翌日まで引きずります。
100メートル平泳ぎの予選は、スタミナを温存しすぎて余力が残った状態でフィニッシュ。目標とするタイムに届きませんでした。

金メダリストからの助言

決勝が迫ったその日の夕方。
ひとりでひざを抱えて泣くほど悩んだという辻内選手がアドバイスを求めたのは、前日に男子100メートル平泳ぎで日本チーム最初の金メダルを獲得した山口尚秀選手でした。
「どうやったら早く泳げるのか」とたずねた辻内選手に、山口選手は「フラットな姿勢が大事だ」とアドバイスをくれたと言います。

辻内選手はこのひと言に思い当たる節がありました。
大会直前の強化合宿で腹や腰を持ち上げてできるだけ“フラットな姿勢”にして水の抵抗を減らす練習に取り組んできました。しかし、予選では腰が沈む姿勢になり、水の抵抗を感じる泳ぎになっていたことに気づかされたのです。

メダルで得た手応え

迎えた決勝。辻内選手は腰をしっかりと上げて姿勢を修正。水の抵抗を受けることなくスタミナも温存でき、後半の苦しい時間帯にも持ち味の粘りの泳ぎをみせました。

結果は自己ベストを更新する1分19秒85の好タイムで3位。
今大会、日本女子初めてのメダルでした。
レース後に結果を知ると飛び跳ねて喜びをあらわにした辻内選手は「きのうの悔しさをこの種目で晴らせたのが心からうれしいです。本来とれるべき種目でとれなかったのが悔しくて、その悔しさをぶつけたメダル獲得なので100点満点かな」と笑顔で話しました。
「この種目でメダルがとれたのはすごい自信につながる」と苦手な平泳ぎにも手応えをつかんだ様子の辻内選手。来年の東京パラリンピックの出場を目指し、大会の後半戦、自由形や混合リレーに出場する辻内選手のさらなる躍進に期待したいと思います。