官僚が自転車で疾走~真夜中に届けるものは…

官僚が自転車で疾走~真夜中に届けるものは…
霞が関を歩いていると、時折、疾走する自転車を目にします。乗っているのは官僚です。少し似つかわしくない感じもしますが。これ公用だそうですが、いったい何のため?(霞が関のリアル取材班記者 荒川真帆)

届けよ!答弁書

この自転車、各省庁が国会図書館や議員会館などを行き来するため使っているといいます。

「深夜3時に、自転車が活躍することがあります。だいたい1、2年生が乗りますね」と教えてくれた官僚がいました。

人気のない深夜の霞が関を自転車が走る…ちょっとシュールです。その理由を尋ねると、こんな答えが返ってきました。
(男性官僚・40代)「深夜に自転車を使うのは、出来上がった答弁書を国会の担当部署(内閣総務官室)に届けるためです。30部前後を紙で印刷、セットしたものを封筒に入れて手で持っていくんです」
答弁書の「持ち運び」って自転車ですることもあるんですね。これは主に、総理が出席する予算委員会が開催されるとき。

国会議員からは前日までに質問内容を伝える、いわゆる質問の事前通告があり、それに基づき答弁を作るのが官僚の皆さんの仕事です。

総理への質問内容によって各省庁に問いが振り分けられます。そして、答弁が夜通しかけて作成され、完成した答弁書を直接運ぶのだといいます。

それにしても、メールや電子媒体が普及するこの時代、手で“配達”とは、アナログだなと思いますが…この官僚はこんな風に話します。
(男性官僚・40代)「予算委員会が午前9時からだとすると、総理への答弁説明が朝6時開始、ということもあります。時間との闘いのなか、すぐに手渡しして作業にとりかかれるように、直接紙で持ち運んでいるんだと思います。出来上がったものが、質問のことばが間違っていたとか紙の様式が違った、なんてことがあると、また役所に戻って作り直します」
ちなみにこの「紙の様式」ですが例えば文字の行数・文字数やフォントのサイズ、縦書き・横書き等々、細かいルールもあるそうです。

なぜ遅い?【理由1】 通告時間

話を聞いて、「なぜそんな深夜なの?」と気になりました。確かに『霞が関のリアル』に寄せられる声で、特に多いのが、「国会質問」や「答弁作成」にまつわる話でした。答弁が出来上がるのが午前3時や4時、ひどい時は朝方になる、という話も耳にします。

一体何が原因なんでしょう?ある女性官僚はその理由として、質問通告の時間を挙げました。
(女性官僚・30代)「国会の2日前に質問を出す議員もいますが、なかには前日の夜9時や10時、ひどいときには日付が変わりそうな時間帯に通告する議員もいます。多いときには1つの課で質問が10以上に及ぶことがあり、時には朝までかかります…」
そもそもこの「質問通告」、法律に明記されているわけではありませんが、現在は、与野党間のルールとして「審議の2日前の昼までに出す」ことが決められています。

これは、国会審議を円滑化するための慣習として、さらに、「国家公務員の過剰な残業を是正する」という目的もあるそうですが、実際はほとんど守られていないというのが官僚の実感のようです。

なぜ遅い?【理由2】 壮絶な“フリモメ”

さらに、時間が遅くなる要因が霞が関にもありました。役所内外でのいわゆる『振り分けバトル』です。
(女性官僚・30代)「通告された質問をどの省庁の、どの課が担当するかでもめるんです。『フリモメ』とか『ワリモメ』とか言います。とにかく質問が当たらないよう、かなりバトルします。いわば『なすりつけあい』ですが、とにかく断固拒否!理屈をこねくり回して避けられるよう、全力を注ぐんです」
同様の話を複数の省庁で聞きました。多くの場合、もめている課の仲裁として総務課や局の筆頭課が入り、互いの言い分を「審判」、最終的な判断をするそうですが、その間、「なぜ自分たちの課が質問を受けるにふさわしくないか」を理論武装。過去の答弁などを調べ上げて、「類似事案はオタクの課が書いている」とか、「あなたが書くべきだ!」などと、激しくやりあうのだそうです。

この協議だけで1、2時間を費やすことも珍しくなく、決着には深夜1時を回ることも。端から見るとかなり非効率な気がします。

先の女性官僚は声を落としてこう話しました。
(女性官僚・30代)「そこまでして『戦う』理由は、前例を作らないようにするためなんです。一度引き受けてしまったら、それ以降、また受けないといけない。また仕事が増えてしまう。でも本当は不毛だと思うし、時間がもったいないと思うんですよね…」

いったい誰のせいなのか?

霞が関の過酷な長時間勤務の背景には、この国会質問のやり取りもかなり影響しているように感じます。

さきほどの“フリモメ”は霞が関自身の問題でしょうが、官僚からは、「質問通告が遅いのは野党議員、そして、その答弁書を丸投げするのは与党議員」という声も聞かれます。実際はどうなのでしょうか?

私たちは引き続き取材を続けます。皆さんの考え、官僚の皆さんの体験をぜひ下記のサイトにお寄せください。