努力でつかんだ金メダル パラ競泳 18歳 山口尚秀

努力でつかんだ金メダル パラ競泳 18歳 山口尚秀
パラ競泳の世界選手権の男子100メートル平泳ぎの知的障害のクラスで、18歳の山口尚秀選手が初出場で金メダルを獲得。東京パラリンピックの競泳の代表内定第1号になりました。競技歴わずか2年の期待の新星は、障害と向き合いながら重ねた地道な努力を実らせて栄光をつかみました。

わずか2年で世界の舞台へ

山口選手は、保育園に通っているころに知的障害を伴う自閉症と診断されました。小学4年生から水泳を始めましたが、パラ競泳に本格的に取り組み始めたのはわずか2年前です。

身長1メートル87センチ、そして足の大きさは「ダイビングで使うフィンのようだ」と関係者から絶賛される30センチ。この恵まれた体格を生かした伸びのあるストロークが特長で、得意の平泳ぎで一気に世界レベルの選手に成長しました。

重ねてきた地道な努力

山口選手は、自閉症のために突然、つらいことを思い出して何も手につかなくなることがあるといいます。
競技に集中するために役立ったのが、家族が作ってくれた気持ちを整理するための特製のノートでした。ノートは毎日を朝、昼、夕方、夜と分けて、つらかったときには赤いシールを、問題なく過ごせたときには青いシールを貼って感情を記録してきました。

さらに練習や日常生活で努力したことなどを書き込み「気持ちを整理できるようになった」と山口選手は言います。

また肉体強化のためのトレーニングメニューは、自分で考案しました。ダンベルを使った筋力トレーニングを繰り返し、恵まれた体格をさらに強化してきました。

ことし7月には世界記録まであと0秒47に迫る1分5秒75の日本新記録をマークし、世界ランク2位相当のタイムを持って初めての世界選手権に臨んだのです。

国際大会の難しさも克服

世界選手権は、午前中に予選が行われ夕方に決勝が始まり、国内大会のスケジュールとは大きく異なります。

経験が浅く、大きな国際大会に初めて出場した山口選手が、予選、決勝と1日に2回のレースに臨む難しさとどう向き合うのか注目されました。

ところが、その心配は全くの取り越し苦労に終わりました。
山口選手は、11日午前の予選でみずからの日本記録を更新し、さらに決勝では世界新記録をマークし、金メダルを獲得したのです。

地道な努力で栄光つかむ

会心のレースを予感させる強さの片りんは、実はレース前から現れていました。レース前、映画「ロッキー」のテーマ曲に合わせて「なおひで、頑張れ」と口ずさみながらみずからを鼓舞するなど、家族に支えられながら障害と向き合ってきたことで得た精神的な安定感を感じさせました。
レース本番ではこれまでの肉体強化の成果を示しました。
前半の50メートルでは世界記録よりも速いハイペースで泳ぎ、2位以下を1秒以上引き離しました。

後半は隣のレーンを泳ぐ、これまでの世界記録保持者でライバルという、イギリスのスコット・クイン選手に追い上げられましたが、逃げきりました。
「地道な努力があったからこそつかめたものだと思う」ということばには、この2年間、障害と向き合いながら愚直に強化に取り組んできたという山口選手の誇りが込められているようにも感じました。

今度は東京パラリンピックで頂点に

今後は世界の強豪から追われる立場になりますが、それでも山口選手は「東京パラリンピックでも金メダルを取りたい」と、笑顔できっぱりと宣言しました。

競泳としては東京パラリンピックの代表内定第1号となった18歳は、再び地道な努力の日々を重ね、最高の舞台で輝く姿を見せたいと意気込んでいます。