いじめは握手で終わらない

いじめは握手で終わらない
先月、NHKのウェブニュースでいじめを受けていた小学生が、教員に加害者の児童とともに呼ばれて、仲直りの握手をさせられ、つらい思いをしたという事例を、紹介しました。すると、全国の幅広い年代層から「私も同じ体験をした」「娘のいじめでも同じく握手させられた」「教師は勉強は教えられても、交渉力が無いのだとがく然としました」などという声が数多く、寄せられました。

仲直りの会 いじめ激しく

「仲直りの会」は学校でどのように行われていたのか。

千葉県に住む28歳の男性が自身の経験を話してくれました。

男性は、小学5年生の頃、同級生から殴られたり、蹴られたりするいじめに遭ったということです。

そこで、先生に勇気を出していじめられていることを訴えました。

男性は、「これしか方法がない、唯一の方法だと思った」と打ち明けました。すると、先生はこの同級生を呼んで、男性の前で叱り、直後に、「これからは仲よくしようね」と言って、握手するよう求めたといいます。

男性はこの時、「安心したというか、やっと終わるんだという気持ちだった」といいますが、いじめは、数日後に再び始まり、加担する同級生も増えるなど、以前よりエスカレートしたということです。

男性は、「何をやっても、握手するだけで、これ以上、怒られることはないんだということで、いじめは激しくなりました。
先生は、いじめをアシストしたような感じだった。今もいじめた同級生だけでなく先生に対しても許せないという思いはあります」と話していました。

残された心の傷

「仲直りの会」が、心に大きな傷をもたらしたという人もいます。関東地方に住む20歳の女性は、小学1年生の頃、同級生からたたかれたり、蹴られたりするいじめを受けたといいます。

女性が先生に相談すると、加害者側の同級生と一緒に呼ばれて、「仲直りの会」が開かれました。先生は、いじめた子に「そういうことをしたらダメだよ」と叱ったあと、すぐに「仲直りね」と言い、2人に握手を求めたといいます。

女性は、相手が反省していないと感じたといいますが、握手を拒めませんでした。当時の心境を、「いじめた子も、先生も納得という感じでした。

私の気持ちだけ、置いてきぼりにされました」と振り返りました。

結局、いじめはその後も続きましたが、女性は、もはや先生を頼ることができず学校に通えなくなりました。

PTSDと診断され、二十歳になった今も、母親や信頼できる人としか外出さえできないといいます。

女性は、「学校という場所で、そこで受けた言葉や暴力、先生からの言葉が全部ずっと頭の中にあって、これから先も一生消えることのないものだと思っています」と訴えました。

母親は、「少なくとも傷ついて、いまだに傷ついたままの状態の人がいるのに、なぜ教育現場は変わろうとしないんだろうと、思います問題だと思っている先生はいると思うので、変わろうと思ってほしい」と話していました。

国の対応は

国は、平成23年に起きた大津市の中学生のいじめ自殺以降「いじめ防止対策推進法」を整備し、いじめの早期発見や解決策などに力を入れてきました。

2年前に改定された「いじめ防止等のための基本的な方針」にも、「被害児童生徒を徹底して守り通す」「加害児童には、教育的配慮の下、きぜんとした態度で指導する」「いじめは単に謝罪を持って、安易に解消とすることはできない」などと記されています。

一方で、今回の仲直り会について、文部科学省に確認すると、「国として『仲直りの会』という対応を推奨はしていない。いじめはケースによって必要な対応が異なるため、学校にお任せしている」と回答しました。

個別に時間かけて指導を

いじめの対応として、学校でこうした指導が行われているという指摘について小学校の元校長で、早稲田大学教職大学院の遠藤真司客員教授は、「いじめた側といじめられた側が初めから同じ場所に居合わせたら、本音は出てこないので、個別で指導することが大事だ。握手すること自体をいじめの指導と、してはいけない」といいます。

そして、「時間が限られていて、一つ一つの物事を早く終わりにしたいという思いがあって、十分な指導がないまま、笑顔で握手をして解決という思いが先行してしまう」と述べました。

一方で、教員の年齢構成がいびつだったり業務が多忙化したりしている状況も見過ごせないと指摘し、遠藤客員教授は、「いじめの問題は、簡単に解決できるものではなく聴き取りの時間には、膨大な時間が必要になる。先生にとり負担になるのは確かだ。事務作業を減らすとか、先生が子どもに十分向き合える環境を作ることも大事だと思います」と話しています。

私たちは取材を続けます。同じような経験をしたという皆さん、ぜひ意見をお待ちしています。「#握手でいじめなくなる」とお書きください。https://www3.nhk.or.jp/news/contents/newspost/form.html