「アジアのノーベル賞」マグサイサイ賞にタイの人権活動家など

「アジアのノーベル賞」マグサイサイ賞にタイの人権活動家など
「アジアのノーベル賞」とも呼ばれるマグサイサイ賞の授賞式がフィリピンで行われ、国家による不当な拉致、いわゆる「強制失踪」の根絶に向けて活動するタイの女性人権活動家など、5人に賞が贈られました。
フィリピンの財団が主催するマグサイサイ賞は毎年、アジアの平和や発展に貢献した個人や団体に贈られ「アジアのノーベル賞」とも呼ばれています。

ことしはタイやミャンマーの人権活動家やジャーナリストなど、合わせて5人が選ばれ、9日、首都マニラで授賞式が行われました。

このうち、タイのアンカナ・ニーラパイジットさん(63)は、タイ南部に暮らすイスラム教徒の人権問題に取り組んでいた弁護士の夫が、2004年に当局に拘束されたあと、行方不明になったのをきっかけに、国家による不当な拉致や拘束の根絶に向けた活動を続けてきました。

国家が個人を不当に拉致して所在を隠すことは「強制失踪」と呼ばれ、国連の条約で禁止されていますが、ニーラパイジットさんの粘り強い活動が実を結び、タイ政府が2012年に条約に署名したことなどが評価されました。

このほか、ミャンマーでネットメディアを立ち上げ、国内の人権問題などで調査報道を続けるジャーナリストのスウェ・ウィンさん(41)らが選ばれました。

ニーラパイジットさん「受賞励みに被害者が少なるよう取り組む」

アンカナ・ニーラパイジットさんは授賞式のあと、「大変光栄でうれしいが、強制失踪の現状は大変厳しく、世界中で被害者が増えている。この受賞を励みに少しでも強制失踪の被害者が少なくなるようにさらに取り組んでいきたい」と話していました。

強制失踪 過去に5万件以上

「強制失踪」とは、国家のほかその支援や許可を受けた人物や団体が個人を拉致または拘束して、所在を隠すことです。

国連では2010年に発効した「強制失踪条約」に基づいて、国際法上の「人道に対する罪」として禁止していて、批准した国には防止のための対策や実行を命じた人物の処罰などを求めています。

これまでに62の国が批准し、日本も北朝鮮による拉致問題を念頭に批准しています。

国連の作業部会がことし7月に発表した報告書によりますと、1980年からこれまでに起きた強制失踪と見られる事案は、5万7800件余りに上るということです。

報告書では去年、トルコにあるサウジアラビア総領事館で、ジャーナリストのジャマル・カショギ氏が殺害された事件についても取り上げられていて、「本国だけでなく、その国の外でも当局による拉致や拘束が増えている」と指摘しています。

今回、マグサイサイ賞を受賞したニーラパイジットさんの母国タイでも今月3日、5年前に当局に拘束されたあと、行方が分からなくなっていた少数民族カレン人の人権活動家が遺体で見つかったことが明らかになるなど、強制失踪のケースは後を絶ちません。