ロシアで統一地方選挙の投票 政権側の候補の苦戦も

ロシアで統一地方選挙の投票 政権側の候補の苦戦も
ロシアで8日、州知事や地方議会議員などを選ぶ統一地方選挙が行われています。経済状況が改善しないことなどを背景にプーチン大統領の支持率が落ち込むなか、一部では、政権が後押しする候補の苦戦も伝えられています。
ロシアで、8日、統一地方選挙の日を迎え、極東のサハリン州など16の地域の首長と知事の選挙をはじめ、各地で市長選挙や地方議会議員選挙の投票などが行われています。

このうち首都モスクワでは、市議会議員選挙の投票が行われています。

この選挙をめぐっては、野党勢力の立候補予定者の届け出が認められなかったとして大勢の市民が毎週末、大規模な集会を開いてプーチン政権に抗議する事態となりました。

モスクワ市内の投票所を訪れた有権者からは選択肢が少ないなどという批判の声が相次ぎ、33歳の男性は「野党側の立候補が認められなかったことは問題です。政権側の顔ぶれはいつも同じです」と話していました。

ロシアでは、経済状況が改善しないことや、年金制度改革などで国民の不満が高まり、一時80%を超えたプーチン大統領の支持率は現在60%台後半に落ち込んでいます。

与党「統一ロシア」への支持はさらに落ち込んでいるため、モスクワ市議会議員選挙をはじめ各地の選挙で、政権側の候補が無所属で立候補していますが、一部の選挙では苦戦も伝えられていて、結果が注目されます。

モスクワでの抗議活動

モスクワ市議会の議員選挙を巡っては、野党勢力側はそれぞれの政党などから立候補予定者を擁立し、市の選挙管理委員会から正式な候補者と認定されるのに必要な有権者数の署名を集めて届け出ました。

ところが7月中旬、選挙管理委員会は野党勢力などのおよそ60人について、実在しない有権者の署名が含まれるなど問題があったとして届け出を受理しませんでした。

これに野党勢力は強く反発し、毎週末、抗議集会を開き、立候補を認めるよう訴えるとともにプーチン政権の関与は明らかだと非難してきました。

7月下旬の抗議集会で、警察は許可のない集会に参加しようとしたとして1000人以上の人たちを拘束するなど抑え込みをはかりましたが、先月10日の集会ではプーチン政権に抗議しようと参加者は5万人以上に膨れあがりました。

市民団体によりますとこのうちのおよそ60%が35歳までの若い世代だったということです。

モスクワでこれだけの規模の集会が開かれたのは、下院議会選挙をめぐる不正をきっかけに2011年に広がった抗議活動以来とみられます。

8日の投票日を前に、プーチン政権への批判の急先ぽうとして知られるナワリヌイ氏は、ネットを通じて政権側の候補者を落選させようと呼びかけてきました。

一方、政権側は、野党勢力の指導者を次々に拘束するなど反政権の動きが広がるのを阻止する構えです。

プーチン大統領も今月5日、抗議活動に参加している若者たちについて「狭い利害や集団の利益で行動してはならない。若者は何か創造につながるようなことにエネルギーを費やすべきだ」と批判し、許可をえない集会については取締りを徹底する姿勢を示しました。

苦境のプーチン大統領

ロシアでは、経済状況が改善せず、生活水準がいっこうに向上しないなどとする国民の不満を背景にプーチン大統領の支持率はかつてに比べると低迷した状態が続いています。

プーチン大統領の支持率は5年前、ウクライナ南部のクリミア半島を併合したことをきっかけに、80%台に跳ね上がり、高い水準が続いてきました。

しかし、当時の熱狂的な愛国ムードは冷め、欧米の制裁などを受けて経済状況が改善せず生活水準がいっこうに向上しないなどとして国民の不満が募っていきました。

さらに、去年、大統領選挙でプーチン氏が通算4期目の就任を決めた直後に、年金受給開始の年齢が引き上げられると発表されると国民の反発が一層強まりました。

現在の支持率は60%台後半でかつてに比べると低迷した状態が続いています。

またプーチン大統領の支持基盤ともなってきた与党「統一ロシア」の支持率も32%ほどにすぎず、クリミア併合直後に比べると半分ほどに落ち込んでいます。

このため今回の統一地方選挙では、「統一ロシア」の党員でありながら、独立系の候補者として選挙に臨む人も多く、モスクワ市議会議員選挙では「統一ロシア」の候補者が1人もいないという異例の事態となりました。

専門家「弾圧はさらに強まるだろう」

ロシアの国内政治に詳しい「カーネギー国際平和財団モスクワセンター」のアンドレイ・コレスニコフ上級研究員は、モスクワで続いた大規模な抗議集会について「きっかけは選挙というよりも市民が政府から侮辱されていると感じていることが大きい」と述べ、社会にまん延する汚職や、インターネットの規制強化など、プーチン政権に対する不満が一気に表れた結果だという見方を示しました。

一方、政権側が弾圧を強めた背景については「すべてのことがプーチン大統領の任期が2024年に切れることに関係している。体制側は、プーチン氏をトップとした現状のまま穏やかにそのときを迎えようと防戦している。やはり誰もがプーチン氏の影響下にいたいのだ」と述べ、大統領の任期終了後もプーチン氏が最高実力者であることを望む治安機関などの動きと関係していると分析しました。

また、抗議活動の見通しについては「ヨーロッパなど西側にも行ったことがある若者たちにとってなぜこんな不自由な中で生きなければならないのか理解できないでいる」と述べ若い世代を中心に反政権の動きは続くと指摘しました。

その一方で、「政権側の弾圧はさらに強まるだろう。自由主義的で民主主義的な状況になると想像することなどできない」と述べ、政権側も締めつけを強めるとしています。

投票は北方領土でも 「島の問題に真剣に向き合う人に投票」

ロシアの統一地方選挙では、ロシア側で北方領土を事実上管轄するサハリン州の知事選挙も行われています。

サハリン州の知事選挙には、プーチン政権が送り込んだ国営の原子力企業の元幹部、リマレンコ氏のほか、日本への領土引き渡しに強く反対している共産党や極右の自民党の候補など、合わせて5人が立候補しています。

投票は北方領土でも行われ、このうち人口およそ3000人の色丹島では、学校と文化会館の2か所に投票所が設けられました。

色丹島は1956年の日ソ共同宣言で「平和条約を締結したあと日本に引き渡す」とされており、日ロ両首脳はこの共同宣言に基づいて交渉を進めることで一致しています。

このため、島民たちは平和条約交渉をめぐる各候補の立場も考慮して投票していました。

共産党の候補に投票したという女性は「島の問題に真剣に向き合う人に投票した」と話し、リマレンコ氏に投票したという女性も「日本との交渉を警戒している。島を発展させることだけを期待している」と話していました。

ロシアのメディアは、低迷する経済状況への不満に加えて、モスクワからの「落下傘」候補のリマレンコ氏に対する反発もあり、共産党の候補が支持を伸ばしていると伝えています。

こうした中で、メドべージェフ首相が先月択捉島を訪問し、さらにプーチン大統領が色丹島に建設された水産加工場の完成式典に中継映像で参加した背景には、島々の開発を強調することで、政権側のリマレンコ氏を後押しするねらいもあったとの見方も出ています。