ワシントン条約の締約国会議始まる スイス

ワシントン条約の締約国会議始まる スイス
絶滅のおそれがある野生生物の国際的な取り引きを規制する、ワシントン条約の締約国会議がスイスで始まり、日本でペットとして人気のカワウソについて、商業目的での国際取り引きを禁止する提案などが議論されることになっています。
絶滅のおそれがある野生生物の国際的な取り引きを規制する、ワシントン条約の締約国会議は17日、スイスのジュネーブでおよそ180か国の代表などが出席して開幕しました。

開幕式でスイスのベルゼ内相は、絶滅の危機にひんしている野生生物が多く存在する中、締約国は強い決意を持って早急に対策に当たる必要があると訴えました。

今回の会議では、日本でペットとして人気が高まっているカワウソについて、インドやネパールなどが商業目的での国際取り引きを禁止する提案を提出しています。

また、ワシントン条約で国際取り引きがすでに禁止されている象牙について、国内取り引きが禁止されていないことが、違法取り引きにつながっているとして、アフリカのケニアやエチオピアなどが、国内取り引きも禁止するべきだという提案を出しています。

提案では国内での売買が続けられている日本について、「象牙の違法取り引きの一助になっている」と名指しで批判していて、日本の象牙市場に厳しい視線が向けられています。

一方で、アフリカゾウの個体が安定しているボツワナやナミビアなどは、国際取り引きの再開を求める提案を提出し、真っ向から対立していて、議論の行方が注目されます。

会議は今月28日まで開かれます。

密輸のカワウソ 半数以上の目的地が日本

カワウソは最近、日本でペットとして人気を集めていますが、密輸が大きな問題となっています。

野生生物の国際取り引きを監視しているNGO「TRAFFIC」によりますと、2015年から2017年にかけて、東南アジアで密輸されようとして保護された59匹のカワウソのうち、半数以上にあたる32匹の目的地が日本だったということです。

今回の締約国会議では、コツメカワウソについてはインド、ネパール、フィリピンが、ビロードカワウソについてはバングラデシュ、インド、ネパールが「ワシントン条約」で、商業目的での国際取り引きを禁止するよう、条約の事務局に提案書を出していて、審議されることになっています。

提案ではカワウソの生息数はこの30年間で30%以上減っていると指摘していて、ペットとしての需要が大きな日本の市場に厳しい視線が向けられています。

象牙取り引き 日本国内の現状は

今回、一部の国から提案されているのは、象牙の国内取り引きをすべて禁止することです。

国際取り引き、輸出入はすでに1990年以降、ワシントン条約で原則として禁止されていますが、日本やEU=ヨーロッパ連合などでは、国内にかぎって取り引きが続けられています。

国内にかぎられるため、海外からの旅行者がお土産などに買って日本の外に持ち出すことも規制されています。

象牙の輸入が禁止されているのにどうやって国内で売買が続いているのか。

日本の場合、
▽国際取り引きが禁止される1990年より前の象牙と
▽ワシントン条約の委員会の承認を受けて、1999年と2009年に合法的に輸入されたものと、
合わせておよそ2090トンがこれまでに輸入されています。

これらの象牙が和楽器用品や印鑑などに加工され売買されていて、環境省によりますと、ことし6月末までに、およそ35%にあたる730トン余りがすでに加工されているとみられるということです。

しかし、こうした国内市場が残っていることで、密猟を助長するおそれがあるとして、3年前のワシントン条約締約国会議では、“密猟や違法取り引きにつながる”国内市場の閉鎖を各国に勧告する決議が採択されました。

日本政府は「日本の市場は密猟による象牙で成り立っているわけではなく、閉鎖の対象外」という認識を示しました。

日本の象牙市場に厳しい目が向けられる中、環境省では象牙の管理を強化し、違法取り引きをなくす取り組みに力を入れてきました。

▽象牙を国内で売買する事業者は国に登録を義務づけているほか、
▽全形を保っている象牙は国に登録しなければ売買したり譲り渡したりすることができません。
また、▽加工する場合は国に登録された象牙から製造したことを示す管理票を作成し、保存することが義務づけられています。

さらに、去年4月から「象牙Gメン」を発足させて、専門の職員を全国に配置。象牙を扱っている店舗に立ち入り検査を行ったり、インターネットのオークションサイトを調べたりして、違法な取り引きや不正に国外に持ち出されていないかなどを監視しています。

ことし7月からは、象牙をとった時期を科学的に示す年代測定の結果など、客観的に証明できる書類を提出するよう所有者に求めています。

今回、象牙の国内取り引きをすべて禁止するよう提案されていることについて、原田環境大臣は今月15日の閣議後の会見で「日本としては厳格な国内取り引きと、輸出入管理を徹底させることこそが、ゾウの保全のために重要だと考えている。日本の取り組みについて理解を求め、各国と意見交換していきたい」と話しました。

加工業者「技術の継承必要」

東京象牙美術工芸協同組合によりますと、日本では江戸時代から象牙産業が広まり、箸や印鑑などといった日用品や彫刻などに使われてきました。

現在は東京都内などの27の業者が組合に登録しているということです。このうち、東京・台東区の石橋象牙店では100年近く、箸や印鑑、彫刻や和楽器用品など、象牙の加工品を製造・販売してきました。

ワシントン条約で象牙の輸出入が禁止されて以降は長年、象牙を保管していた国内の所有者から購入するなどして製造を続けているといいます。
店舗などで販売していて、贈答用として購入する人が多いということです。

象牙を加工する技術を身につけるには10年ほどかかるということですが、象牙が手に入りにくくなるなか、先祖から引き継いできた伝統技術を次の世代に伝えることが難しくなっていると感じています。

石橋保浩社長は、「技術が1度途切れてしまうと取り戻すことはできない。象牙製品を買ってはいけないとか、持っていること自体がいけないと思われるのは悲しい。材料があるかぎり、いいものを作っていきたい」と話していました。

三味線など和楽器で利用

象牙が今も必要とされているのが和楽器です。三味線のばちや、箏の糸を支える「箏じ」、箏爪などに使われています。

邦楽が専門で50年間、三味線の演奏を続けている東京芸術大学の小島直文教授は、象牙のばちを愛用してきました。

小島教授が使っているばちは40万円ほどと、プラスチックのものと比べて10倍以上も割高だということですが、手の汗を吸収して長時間の演奏でも滑りにくいため、奏者にとって弾きやすく、音の深みも違うということです。

小島教授は「プラスチックのばちでは、キンキンという金属音が気になってしまう。象牙にまさるものはないので、絶対に象牙は必要だ」と話していました。

海外の対応は

象牙の国内の取り引きについては、対応に隔たりがあります。

中国はおととし末に象牙の国内取り引きをやめ、イギリスでも去年、国内での取り引きを禁止する法律が成立し、ことし施行される予定です。

また、シンガポールも今月12日、再来年から国内での取り引きを全面的に禁止すると発表するなど、世界各国で厳格化の機運が高まっています。

今回、アフリカのケニアやエチオピアなどが提出した象牙の国内取り引きの禁止を求める提案では、日本について「世界で最も大きな象牙市場の1つ」としたうえで、「象牙の違法取り引きの一助になっている」とNGOの報告を引用して批判しています。