トルコ ロシアの最新ミサイル搬入始まる 米の対応に注目

トルコ ロシアの最新ミサイル搬入始まる 米の対応に注目
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欧米の軍事同盟、NATO=北大西洋条約機構に加盟するトルコが、NATOと対立するロシアから最新鋭の地対空ミサイルシステムの搬入を始めました。搬入に強く反対してきたアメリカがどのような対抗措置に出るのか注目されます。
トルコ国防省は12日、首都アンカラ郊外にある空軍基地でロシアの地対空ミサイルシステム、S400の搬入が始まったと発表しました。

NATO加盟国のトルコは当初、アメリカから迎撃ミサイルを購入しようとオバマ前政権と交渉しましたが、技術移転に難色を示されて実現せず、代わりに、技術移転に前向きなロシアから、S400を購入することを決めました。

これに対してアメリカは、S400が導入され、トルコにすでに売却した最新鋭のステルス戦闘機F35と一緒に運用されるようになれば、F35の機密情報がロシアに漏れるのではないかと懸念しています。このため、トルコにS400の導入中止を強く求め、応じなければ制裁を科すと警告しました。

一方、ロシアはS400をめぐるアメリカとトルコの対立によってNATOの結束にくさびを打ち込みたいねらいがあるとみられます。

アメリカの反対を振り切る形でトルコがミサイルの搬入に踏み切ったことでアメリカがどのような対抗措置に出るのか注目されます。

地対空ミサイルシステム「S400」とは

S400は、ロシアが開発した最新鋭の地対空ミサイルシステムで、ミサイルの発射機やレーダーなどを搭載した複数の車両で構成され、ロシアの主要都市や軍事施設の対空防衛を担っています。

その性能は世界最高水準とも言われ、ロシア国営の武器輸出会社「ロスオボロンエクスポルト」によりますと、半径600キロ以内に入った敵の戦闘機や巡航ミサイルを攻撃目標をとして探知し、同時に300の目標をレーダーで追跡することが可能です。

さらに半径250キロ以内に接近した攻撃目標を、最大で36、同時に攻撃できるほか、高速で飛来する弾道ミサイルであっても、半径60キロ以内、高度2万7000メートル以内で撃ち落とす、高い迎撃能力を備えています。

ロシアはS400をアメリカの防空ミサイルシステム「PAC3」に匹敵する兵器として世界に広めたい考えで、去年初めて中国に供与したほか、トルコとはおととし、インドとも去年、供与に向けた契約を結ぶなど、安全保障分野で関係が深いアジアや中東の国々に輸出する戦略を進めています。

経済連携も強める両国

ロシアとトルコは、軍事面のみならず、経済的な結び付きも強めています。

ロシア当局によりますと、去年、両国の貿易額は前の年に比べておよそ18%増加し、このうちトルコからロシアに対しては産業用の機械などの輸出が大幅に増えました。

一方ロシアは、ロシア南部から黒海の海底を通ってトルコに至る天然ガスのパイプラインの建設を進めるなど、エネルギー分野での協力を強化しています。

折しもロシア政府は今月8日から中部のエカテリンブルクで「イノプロム」と呼ばれる国内最大規模の国際産業見本市を開き、ことしはトルコを初めてパートナー国として招きました。

会場では、40社を超えるトルコの企業が自動車の変速装置やモーターなど自社の機械製品や技術をアピールしていました。

会場を訪れたロシア人のビジネスマンは「両国の関係を前向きにとらえています。このイベントをきっかけに、お互いの潜在力がさらに引き出されるでしょう」と話していました。

また、トルコのイスタンブールに本社がある機械メーカーの担当者はS400の導入を念頭に「トルコは、ロシアから武器も購入するなど、ここ2年ほど政治的な関係がよく、ビジネスにもいい影響を与えています」と話し、さらなる関係の強化に期待を示していました。

専門家「NATOかロシアか 選択迫られるトルコ」

軍事の専門家で笹川平和財団の小原凡司上席研究員は「トルコがS400とアメリカの最新鋭のステルス戦闘機F35の両方を運用することになれば、F35を味方と識別させるための信号やそのステルス性能、さらには作戦に関する情報をS400に与えることになる。そうした機密情報が、ロシアに漏れるのではないかとアメリカは懸念している」と指摘しています。

そして「トルコはNATO=北大西洋条約機構の一員として、ほかの加盟国と機密情報を共有している。S400をめぐってトルコは、NATOを選ぶか、それともロシアを選ぶのかという二者択一を迫られる形となっている」と分析しています。

NATO高官「NATO内の結束 揺らぎかねない」

トルコがロシアのミサイルの搬入を始めたことを受けて、NATO=北大西洋条約機構の高官はNHKの取材に対し「どの装備を購入するかを決めるのは同盟国に委ねられてはいるが、トルコの決定が引き起こしうる結果を憂慮している」として、NATO内の結束が揺らぎかねないと懸念を示しました。

さらに「同盟国の軍の間で装備などを相互運用できるのはNATOが任務を行う上で基本的な要素だ」として、NATOと対立するロシアのミサイルがトルコに配備されることによって、NATOがこれまで各国と連携して作り上げてきた即応態勢など運用面でも支障が出かねないと指摘しました。