“ウラン濃縮度引き上げ” イランの本当のねらいとは

“ウラン濃縮度引き上げ” イランの本当のねらいとは
国際社会が高く評価したイランの核合意をめぐり、イランは7日、合意で約束された経済的利益が得られていないとして、決められた制限を超えてウランの濃縮度を引き上げると発表しました。“ウラン濃縮度引き上げ” 、イランの本当のねらいとは何か。濃縮度引き上げについてまとめるとともに、専門家に聞きました。

核兵器 90%以上の濃縮度が必要

ウランを核燃料や核兵器として使用するには、天然ウランにごくわずかに含まれる、核分裂を起こしやすい「ウラン235」の濃縮度を高める必要があります。この作業を「ウラン濃縮」といい、用途によって濃縮度は異なります。

原子力発電所の燃料として使うには3%から5%程度で十分ですが、核兵器に使用するには90%以上の濃縮度が必要とされています。

20%まで長時間 90%までは短時間

天然ウランを、20%の濃縮度まで高めるには長時間を要する一方、20%のウランを90%まで高めるには比較的短時間で済むとされています。

核爆弾1つをつくるには濃縮度20%のウランが250キロ必要とされていますが、核合意が結ばれる以前イランは、医療目的として200キロ近く保有しており、欧米などは核兵器の開発に転用されることを警戒していました。

この核合意による制限で、イランが核兵器1個分の濃縮ウランを獲得するまでにかかる時間は、それまでの2、3か月から1年以上になったとされています。

イラン 濃縮度5%程度に

会見でイラン原子力庁の報道官は濃縮の目的について「国が必要としている原子力発電所の燃料を調達する」と述べ、濃縮度は当面原発の燃料に必要な5%程度にとどめることを示唆しました。

核合意では、イランが核兵器の開発をしないよう、濃縮度を3.67%に制限しています。濃縮度の引き上げは核兵器の開発にもつながりかねない措置で、核合意の中でも特に重要な義務が履行されないことになります。

専門家「イラン 核合意を破棄する理由はない」

イランがウランの濃縮度を核合意の制限を超えて引き上げると発表したことについて、イラン情勢に詳しい慶應義塾大学の田中浩一郎教授に聞きました。

Qイランが5%程度にまでウランの濃縮度を上げると示唆したことをどう見る

(田中教授)濃縮度をむやみに上げると、国際社会から核兵器開発を目指しているのではないかと邪推されてしまうが、5%であればNPT=核拡散防止条約の枠内に収まることになる。

Q今後の焦点となるのは。

(田中教授)イラン側は(60日の期限を定めて)方策を示したので、イギリス、フランス、ドイツの出方が問題になる。しかし今月4日、イギリス領ジブラルタルでイランのタンカーが拿捕(だほ)されたことを見ても、核合意の枠組みを守ろうとするヨーロッパの中で、イギリスはアメリカとともに行動していて、フランス、そしてドイツとの結束は乱れている。

Qフランスのマクロン大統領は関係各国に対話の再開を目指して働きかけるとしているが。

(田中教授)イランは各国がアメリカの顔色をうかがわずに石油を輸入するなどの行動を起こしてもらいたいと思っている。もともとマクロン大統領はこの問題で積極的に動いてきたが、それが功を奏していれば今回のような事態にはなっていない。フランスが先導する形でイランの要求に近づけるのは難しいと思う。

Q今後、ヨーロッパ側との交渉が不調に終わった場合は。

(田中教授)イランが焦って核合意を破棄する理由はなく、今後も条件を小出しにして、どこかでヨーロッパ側が翻意してくれることを求めるだろう。

Q緊張が高まる中、今後、日本はこの問題をどう見ていけばいいか。

(田中教授)ことし5月(アメリカが原子力空母を派遣したころ)から、軍事衝突が起きてもしかたがないという国際的な世論に誘導するような事件があまりにも多く発生している。一つ一つの背景を見極める前に安易な結論を出してはいけない。