“現役女子高生 ピル飲んでます”

“現役女子高生 ピル飲んでます”
このことばから始まるツイートが話題になっています。どんなツイートを想像したでしょうか。ツイートは途中で“悲しくなりました”とつづられ、“女の子の肩身狭めないで”で終わっていました。(ネットワーク報道部記者 牧本真由美 野田綾)

少しずつ変わっていったらいいな…

投稿はこう続きます。学校の保健の授業でのできごとです。
「先生が『皆さんの中で飲んでる人はいないと思うけど』と言っていて悲しくなりました」
「ピルは『避妊』目的だけじゃありません。教師が進んで生理がつらい女の子の肩身を狭めないで」
ツイートを見てみると、投稿したのは確かに高校生のようで、病院でピルを処方されて服用していることや、ピルを生理の痛みを抑えるために飲んでいることが伺えました。
それなのに「ピル=性行動が盛ん」という偏見を授業でのことばに少なからず感じたようでした。

ピルは経口避妊薬とも呼ばれていて、授業では避妊のための薬として取り上げられることが多いようです。

しかし実際は女性の生理に伴う苦痛をやわらげる大切な効果があるのです。
投稿はそのあと
「学校の保健医に働きかけてみたところ、新しく改善してくれそうです。これからはひと言添えて説明してくれると思います。少しずつ変わっていったらいいな…」と書かれていました。

将来の妊娠のための薬

「低用量ピルはいま、女性の生活改善薬とも呼ばれています」

取材に答えてくれたのは東京 杉並区のアトラスレディースクリニック医師塚田訓子さんです。
「低用量ピルは毎日1粒飲むことで女性ホルモンをコントロールして排卵を抑えます。子宮内膜の増殖を防ぐので生理の量が減って生理痛を和らげたり貧血を改善したり、また子宮内膜症の予防、PMS(月経前症候群)、にきびにも有効です」
処方は生理が始まった女性であれば中学生でも高校生でも可能となります。
「将来の子宮体がん、卵巣がんなどのリスクを下げるとも言われています。避妊薬として使われることもありますが、若い女性たちがいつか将来に妊娠できるよう思春期の体を守るためのとても大切な薬なんです」
“未来の妊娠にも備えて女性の体を守る薬”。そうした大切な低用量ピルの役割が、まだ十分に知られていないのが現実のようです。

学校では相談しない

生理の痛みについては「おなかに鉛が入っているような痛み」という例えを聞いたこともあります。

しかし女子生徒が抱えるそうした悩みがまだ学校関係者に十分伝わっていないというデータもあります。

NPO法人日本子宮内膜症啓発会議が平成28年に千葉県内の中学生と高校生およそ600人に行ったアンケート調査です。
「月経(生理)に関して勉強や運動に影響するほどの体の不調がある」。そう答えた生徒は全体の80%にのぼりました。

しかし月経(生理)の悩みを誰かに相談したり調べたりしているかを尋ねたところ、
「保護者」が65%でもっとも多く、
「保健室」が3%
「担任(女性)」が2%で、
学校内では相談していない状況がわかりました。
またこのアンケート結果を基におととし、全国の中学校や高校の校長、保健体育科の教諭などを対象にアンケート調査も行っています。

月経(生理)トラブルについて学校で何か対応しているか尋ねたところ、
「している」…32%
「していない」…68%という結果でした。

つまりおおまかですが、《80%の女子生徒が生理で、学校生活に影響があるものの学校内では相談せず、学校が対応しているケースも30%ほどにとどまっている》といった状況のようです。
「多くの生徒が生理のトラブルを抱えている。学校側はもっと生徒の実情を知ってほしいし、低用量ピルなど、生理のつらさをやわらげる対策について正確な知識を持ってほしい」(日本子宮内膜症啓発会議)

“妊娠できなくなる” そんな誤解も

生理痛などは誰にも言えないまま放っておくと子宮内膜症などの病気に進行するおそれもあり、将来の妊娠に影響してしまうかも知れません。

それを防ぐ低用量ピルは、避妊の役割もありますが、逆に未来の妊娠を助けるための大切な薬でもあるのです。
今、各地の産婦人科医会や医師などで作るNPOでは学校現場を回って、生徒をはじめ教員やPTAなども対象に講演を行い低用量ピルなどについての知識の普及や、生理に関する相談体制を作るよう呼びかけています。

参加した学校関係者からは、低用量ピルについて「体に悪い」、「飲んでいると将来、妊娠できなくなる」などと誤解されていたこともあったそうです。

偏見に負けないで

“現役女子高生、ピル飲んでます”の投稿に対しては共感の声が集まっています。
「私も学生で服用しており、大変肩身の狭い思いをしています。本当にいろんな理由で服用するということが広まればいいのになぁ」「偏見に負けないで堂々としてください!私は自分のホルモンを管理する最高なアイテムだと思ってます」
ツイートへの書き込みの多さからは避妊目的のイメージが先行し体だけでなく心の面でもつらさを感じている女性がたくさんいることがうかがえました。

また低用量ピルは飲み始めた時期に胸が張ったりムカムカしたりする副作用が出る人もいて医師の診察を受けて処方を受けることが必要です。

しかし“避妊薬”というイメージが先行し、思春期の大切な時期に恥ずかしさから治療をためらう人たちも後を絶ちません。

記者の私も生理不順に悩んでいた時、低用量ピルを処方されたことがあり、その時、薬剤師に言われたことばが今も忘れられません。「これを飲んでいるのは避妊が必要な仕事の人よ」。さまざま偏見を感じ、嫌な気持ちになったことを覚えています。

“女性の生活改善薬”
低用量ピルについてのそうした正確な情報が広まり、使っている人が傷つくような日がもう来ないことを願いたいです。